仕事に出かける途中、
毎朝、駅の近くの通路で寝ているおじさんを見かける。

シートを広げ、雑誌や少しの食べ物が散乱している中で寝ているのだ。
でも、その日、そのおじさんはいなかった。

・・・どうしたのだろう・・・



エスカレーターを降り、橋を渡ろうとして、ふと横を見ると、
近くのベンチに腰かけ、鳩に餌をあげている
白髪頭の男性の姿が目に入った。

よく見ると、それはいつも通路で寝ているおじさんだった。

寄ってくる鳩に、少しずつパンをちぎりながら、放っている。
鳩になんてあげないで、そのパン、食べればいいのに・・・。
一瞬そう思った。

でも、おじさんの鳩を見つめるそのまなざしはとても優しくて、
その口元は、とても嬉しそうだったから、
その少し寂しそうな背中をギューっと抱きしめたくなった。






おじさんが本当に欲しかったのは、
お金でも食べ物でもなくて、
誰かと繋がることだったのかも知れない。