何年か前のお話です。
Tさんは、70代後半の女性で少し認知症がありましたが、生活保護を受けて一人暮らしをしていました。
私は、ヘルパーの資格も持っていて、Tさんのところには、毎日ヘルパーが入っていましたが、週に1~2回ヘルパーとして行くことになりました。
1回の訪問時間は、1時間。やることは、買い物と簡単な掃除と調理とのことでした。
初めて他のヘルパーさんにTさんの家に連れていってもらった時、「ちょっと、このお家入ると靴下が汚れるかな。」と思ってしまいました。台所は、認知症なので、ガスは危ないから、IHだから・・・と聞いたので、すごいですねと言っていたら、コンセントのついた電熱器が1個あるだけだった・・・。
お金は、Tさんに教えるとすぐに使ってしまうからということで、1万円ずつ封筒に入れてTさんにわからないように隠してあり、ヘルパーはそこから、必要な物を買ってくるとのことでした。
でも、Tさんは、明るくて、いつも近くのおばあさんがTさんの家に来て、ずっと一緒に過ごしています。Tさんに食事を作ると、Tさんは、いつもそのおばあさん(ちょっと髪型が山んば風)にも分けて、一緒に食べていました。山んばおばあさんがいる時は、いつもなので、「Tさん、いつもいつもごはんをあげて、いいんですか?」と山んばおばあさんがいない時に尋ねると、「あの人もいろいろ持ってきてくれるからいいんだよ。」とのことでした。私にも「おねーちゃんも食べてけば。」と言うのでさすがにそれは、断りましたが・・。なんか気前がいいんです(笑)
Tさんの寝室は、いつも布団が敷きっぱなしでした。畳もザラザラしていて、Tさんに「布団干してます?」と尋ねると干したことないとのこと。布団がない方が掃除もきれいにできるので、ある日、思い切って布団カバーとシーツも洗い、寝室をきれいに掃除して、約1時間干して、布団を取り込み、シーツ類は、乾かなかったので、乾いたら自分でかけてねと言うと、Tさんが、「おねーちゃんだけだよ、こんなことやってくれたのは」と言ってくれました。ので、干しちゃた方が、部屋もきれいになるし・・・。
Tさんの寝室には、亡くなった旦那さんの写真が飾ってあって、その前に、1本ろうそくが立っていました。「Tさんの旦那さん、かっこよかったですね。(お世辞ではなく本当にイケメンでした。)」
と言うと、「目が全然見えなくて、朝3時に起きると散歩に行くっていうから、真っ暗い中を引っ張って歩いて、大変だったよ。」とのことでした。毎日なんて・・・。
ガーンって感じ。Tさん大変でしたね。
私「Tさんは、兄弟とかいるんですか?」
T「私は、もらいっ子だったから1人だったよ。結婚も親がいうところへ行ったけど、子供ができなくて、戻されちゃって。それで、今の旦那のところにきたんだよ。目は見えなかったけど、いい人だったよ。
というTさん、なんか全部、Tさんの希望ではなかったんだなと少し感じてしまいましたが、Tさんは1つも不満を言ったりしたことはありませんでした。
ある日、私はTさん宅の台所をネズミが走っていくのを見てしまいました。驚きました!
Tさんは、畳に布団を敷いて寝ているので、寝ている時にネズミにかじられたりしたら大変です。
ヘルパー会社の責任者さんにtelすると、「みんなネズミのフンが落ちてるって言ってたけど、やっぱり出てきたんだね。電話ありがとう。なんとかしてもらうね。とのことでした。
後日、連絡があり、業者さんに入ってもらって駆除してもらったら、7匹も取れたんだって・・・。」だそうです。
また、ある雨の日曜日の朝8時、訪問すると、すぐに山んばおばあさんも来ていて、こたつでTV見ていますが、Tさんは、布団の中。珍しく体調が悪そうです。「どうしたの?」と尋ねると、「私は頭痛持ちで、雨の日は、頭がすごく痛いの。おひつにお米が全然なくて、お金もない・・・。どうしよう・・・。」と訴えます。おひつを見るとお米がほとんどありません。お金の場所もTさんは知りません。
でも、車で15分ぐらいの大きなスーパーはやっているので、「大丈夫だよー。お米売っているお店あるから買ってくるからねー。」と話して買ってきました。お米を買っていくとTさんは落ち着きましたが、山んばおばあさんは、ずーとのん気にTVを見てました。
また、別のある日、ゴミを捨てに行くので、Tさんに「一緒に行く?」と誘いました。Tさんも一つ返事で「行く。」とのことだったので、一緒に出掛けました。すると、Tさんは、下ばかり見て歩き、何か光ったりするものがあると拾いました。「なんだ1円じゃなかった。」私はいつも何かいい物が落ちてないか下を向いて歩くんだよ。」と笑っていました。
そんなある日、ヘルパー会社の責任者さんからtelがありました。
Tさん宅が火事で全焼したとのこと。
驚きました。「Tさんは、大丈夫ですか?」
「Tさん、ろうそくつけっぱなしで外にいっちゃって、その間にろうそくが、倒れたんだって。だから、Tさんは、無事だよー。Tさん、施設に入ったんだって・・・。」とのことでした。
火事にならないように、ガスじゃなくて、電熱器使っていたのに・・・。旦那さんの写真の前に置いてあったろうそくが倒れたなんて・・・。
でも、Tさんは、無事で回りのお宅も無事でした。Tさんは、施設に入ったそうです。施設の方が、常時、回りに誰かいるし、清潔だし、衣食住安心なのでいいかもしれないと思いました。
少しして、聞いたことには、友達の山んばおばあさんの方が寂しくなってしまい、「私もTさんがいる施設に入る。」と言っていたそうです。
それから、数年後、私が他の方をマッサージしに行っていた施設になんとTさんがいるではないですか。
「Tさん。」と声をかけると、Tさんが、「すいません。私は、すぐに忘れてしまって、誰だか思い出せない。」とのことでした。
そんなこと、全然いいんですよ。Tさん、元気に楽しくお過ごし下さいね。
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引用元:Tさんの物語