4/28鑑賞

 

ジャケットがめちゃめちゃ可愛くて気にはなっていたんだけど、あらすじを読むととってもしんどそうでなかなか観られずにいた本作。

 

ブロ友さんの感想を拝読して「オズの魔法使」を思い起こされるシーンがたくさんあるとのことで興味を持って、早速観てみた。

 

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驚き

 

ジャケットもあらすじもちゃんと見てなかったようでwサイコキラーだということを知らなかったもんで、想像と全然違ってびっくりした。

 

とってもしんどくてクレイジーなバージョンの「オズの魔法使」というかなんというか。

 

衝撃の一作だった…。

 

字体とか、音声とか、お家やお家周辺の雰囲気とか、家畜小屋とか、背の高い草(?)が生い茂っているずーっと続くまっすぐな道とか、そこにいるカカシとか、自転車とか、パールのぱっと見の雰囲気とか、ここではないどこか遠い素敵なところに焦がれているところとか。

 

「オズの魔法使」にとってもシンクロしている。

 

が、優しい人達に囲まれているドロシーとは違い、パールの置かれている環境はものすごく悪い。

 

戦時中&スペイン風邪流行中ということも大きいだろうけど、閉塞感がいっぱいで、序盤から不穏な雰囲気がずっと続く。

 

それだけでなく、パールが ”夢見がち” とか ”親の重圧のせいで苦しい思いをしている” とか、そんなんでは済まされないほど一線を越えてぶっ壊れていることがひしひしと伝わってくる。

 

パールがとても辛い環境にいるのは分かるし、逃げ出したい、夢を追いかけたい、自分の枷になるものは排除したい、自分を傷つける人は許せない、っていう気持ちも察せられるんだけど、きっとあの時代、似たような状況に置かれている女性は少なくなかったと思うんだよね。


なんせ、女性の立場や権利がものすごく弱く、女性ひとりで生きていくにはとても大変な時代だったはずだから。

 

だからと言ってパールみたいに抑圧されてる人達がみんなパールみたいになっちゃうかって言ったら、絶対にそうではないと思うから、やはりパールの生まれ持った資質っていうのが大きいのかなと…。

 

とは言え。

 

親が子に依存し過ぎ。生活や人生やパートナーへの不満を子供にぶつけ過ぎ。厳格過ぎ。

 

パールに対して優しさも愛情も受け止める姿勢も示さないくせに、さも当然のように、人生の先輩である大人として、子を導く親として、パールにあるべき姿を押し付け、厳しく接し、躾ける。

 

そんなんだから、パールは雁字搦めで苦しくて仕方ない。パールが元々そういう資質を持っていたのが前提としても、それが悪化して突き抜けてしまった原因は両親にあるんじゃないだろうか…。

 

パールを閉じ込めないでもっと人と関わらせて、家族以外の誰かと共に、傷付いたり傷付けたり、楽しさや嬉しさを共有しあったり、愛し愛されたり、そういう経験をしていれば、少しは違ったのかな?

 

でも、順序が逆で、既にそういう経験をした結果がパール閉じ込め&雁字搦めだったのかな?


過去に何度も、少しでも意にそぐわないことがあると異常な癇癪と凶暴性が出てきて、矯正しようと躾けても矯正しきれなかったとか?

 

パールの凶悪性や異性への欲望などを見抜いていたからこそのあの態度や躾や押さえつけだったのなら、なんかちょっと分かるような分からないような…。


アヒルへの行為、カカシへの行為、映写技師との出来事、その他諸々、異常過ぎて怖かったもん…。

 

とにかくパールのぶっ壊れっぷりが半端ない。凶悪な行動が悪化していった段階から察するに、彼女はきっと今で言うサイコパスなんだろうな。

 

だから、キャッチコピーが ”無垢なシリアルキラー” なんだなと、観終わってから納得した。

 

パールは、自分をどこかへ連れ出してほしくてたまらない。

 

でも、自分では出て行かない。行けない。全てを捨てたいけど、捨てられない。

 

パールはきっといつも自分に対して "なぜ私はこうなの?" って思っていたんだと思う。

 

自意識(エゴ)はものすごくても、自分が自分を愛せないから、自分が持っているものに感謝できないから、苦しくてたまらない。

 

だから、自分では出来ない分、他人から愛され、他人から与えられることを求めるしかなかったのかもしれない。


それが、強すぎる承認欲求や、自分から離れていく人への激しい怒りとして表れていた気がする。それが無いと生きていられないから。

 

後半、オーディションに行くために母と揉めたあたりからラストまでは、目が離せなかった。

 

特に、ミッツィーへの独白~笑顔のロングカットのラストまでは、すさまじい狂気を感じつつも、なんか辛くて辛くて、共感とは違うと思うんだけど、かなり心に来た。

 

パールは夢破れ、外に求めることをやめ、ずっと傍にあったものに目を向ける。

 

過去、私が「オズの魔法使」の感想でこんなことを書いてたんだけど、まさにパールも一緒。

 

 

ただし、ドロシーとは全然違う幸せだけど…ドクロ

 

パールはハワードが帰ってきて、何を思ったのか。どうしてあのような表情をしたのか。分かるようで分からない…。

 

本作を鑑賞後、「X エックス」という作品の前日譚であることを知った。

 

「X エックス」のあらすじを読んでみると、

 

とあるので、その後ハワードはしっかりパールに寄り添って、ふたりで長く暮らし続けたということなんだね…。

 

他人にとってはどんなにイカれていて凶悪な存在だとしても、苦しみまくったパールが自分なりの幸せを見つけられたんだろうなと思うと、何とも言えない気持ちになる。

 

というわけで、続けて「X エックス」を観よう!