3/12読了

 

唐沢慎介の三人の息子たちの嫁と、慎介の後妻の車椅子の美しい連れ子。

四人の女性は雪に閉ざされた慎介の別荘で彼の到着を待っていた。そこに不吉な速達が届く。

これまで他人同士だが仲良く幸せに暮らしていた彼女たちが、突然、恐怖のどん底に突き落とされる。

美しい文章と卓越した心理描写で綴る極上の長篇心理サスペンス!

 

小池真理子さんの文章って本当にスイスイ進んでいくなぁ。面白いし読みやすいし、妙に馴染むというか。

 

起~承までは、なんとなく危うさを漂わせながら優雅に淡々と、転~結までは、情愛、愛憎、同情、贖罪など様々な情が錯綜しながら、これまた淡々と進んでいった。

 

妃佐子の考え方や行動には、息苦しさともどかしさを感じた。

 

偽善という言葉はあまり好きではないんだけど、妃佐子の場合はまさに偽善であって、その仮面の下にある自分の気持ちに見て見ぬふりをせずきちんと見つめて受け止めていれば…と思った。

 

4本の百合を見て「きれいだけど、寂しい花よ。四本まとめて生けると華やかなのに、一本だけポツンと生けると、なんだか孤独で哀れな感じがする」と言った妃佐子の気持ちを思うと、とても切ない。

 

ものすごく魅力的な人って、ある意味毒だよね。眩しい程の光は、同じだけの影を生むというか。

 

そんなことを思った作品だった。