2/12鑑賞

 

面白かったー!

 

終始漂ってる不可解さが超~私好みだった。

 

また、色々な比喩や直接的な描写による警鐘が盛り沢山で、もしかしたらこれから起こるかもしれない混乱の世界についても考えさせられて、とても興味深い作品だった。

 

①大型船「WHITE LION」

 

「WHITE LION」という大型のオイルタンカー船がコントロール不能に陥り、ビーチに乗り上げてきたのが一番最初に起きた事件。

 

「WHITE LION」といえば、まさに最初にアフリカ人をアメリカ(バージニア州)に運んだイギリス製の船の名前である。

 

その直後に、主人公家族がバカンスで滞在している貸し別荘に訪ねてきたのが、黒人の父(G.H.スコット)と娘(ルース)というところも非常に面白い。

 

②異なる言語で助けを求める女性

 

別荘及びその付近で大規模な通信障害が起きて何の情報も入らないため、車に乗って町へ様子を見に行く父(クレイ)。人も車も見当たらず不安に駆られながら走っていると、道の先で大きく手を振って助けを求めている女性がいる。

 

ほっと安心し、車を止めて窓を開け話を聞いてみると、異国語でまくし立てるように必死に訴えてくる女性。対話し助けたいのは山々だけど何を言っているかさっぱり分からず、遂にはすがりつこうとする女性を見放して強引に発車し逃げてしまう。

 

移民大国であるアメリカ。しかし、仕事や住居や待遇など様々な面から移民差別があった歴史はまだ新しい。

 

今現在がどうであるかは私はこの目で見ていないから知らないけど、自由の国と言いながら、それは誰にとっての自由?というはっきりとした優劣はきっと今も尚続いているんじゃないかなぁと想像出来る。

 

③貸別荘の家主は地下室で過ごす

 

別荘を訪ねて来たスコットとルースは、実は別荘の家主であり、町にいたら大規模な通信トラブルが起きたため、急遽近場の別荘に避難しに来たとのこと。

 

しかし一家は2人に対して肌の色による潜在的な差別を匂わせて身分を疑い、特に母のアマンダはあからさまに敵意と差別の目を向ける。

 

「とりあえず一晩いさせてほしい」と丁寧に頼むスコットに食って掛かり、「規約を確認してよ!!!」と自分の権利ばかり主張し、家主の事情や思いや心身を一切慮らない。

 

結局スコットがアマンダに大金を払い別荘にいられることになったが、当初想像していたよりも非常事態であることが徐々に分かり、数日間同じ屋根の下で過ごす。

 

しかし家主の2人はずっと狭くて窓もない地下室で、借りてる一家は1階と2階をなんの悪びれもなく自由に広々と使い続ける。

 

まさにアメリカ大陸の歴史そのもの。

 

④じーっと見つめてくる鹿

 

娘のローズは、別荘付近に鹿が現れてじーっと見つめてくるところを何度も目撃し、何かを伝えたいのかもと鹿と見つめ合ったり、鹿の行方を探したりと、恐怖や敵意を持たずに非常に意識している。

 

一方、ローズ以外の人達は鹿を意に介さない。ローズが「ねぇ見て!いるよ!」と声を掛けても見ようともしない。

 

物語の後半で、アマンダとルースが大量の鹿に見つめられると、恐怖と敵意から大声で威嚇しながら手を振り続け、攻防の果てに鹿を追い払ってしまう。

 

鹿は、仏教的には神聖な生き物で、キリスト教的には良くない生き物だと思ってたんだけど、西洋においても土着的には良い生き物として捉えられていることもあるそうな。

 

たとえば、ヨーロッパでは家を守る魔除けとして、牡鹿は角が周期的に生えかわるため、生命の若返りや新生、時の経過のシンボルとして、ケルト神話の中に登場するケルヌンノスという牡鹿は「神聖な森の主、狩猟の神」として捉えられている等々。へぇ~目

 

本作では鹿=神の啓示として揶揄されている。

 

ラスト、一握りの権力者しか得られないオシロスコープのメッセージを読むと、鹿の示すことを汲み取って従ったローズと、ローズ以外の人達の行動の違いがどのような結果になるかがはっきりと分かって、とても面白かった。

 

⑤その他にも、自動運転の車インターネット頼りの情報収集や娯楽など、色んな警鐘を鳴らしていて、かなり興味深い内容だった。

 

これはフィクションだけど、この先の未来でこうならないとは限らないと思ってめちゃめちゃ怖くなった。

 

何かの有事が起きた際、正常化バイアスが働いて出遅れる人と、そうでない人とは大きく運命が分かれ、本当の初動という場面では、きっと前者の方が大多数なんだろうなぁ。

 

事態が深刻であること、自分が傲慢であったことをやっと受け入れた時のアマンダのセリフが印象的だった。

 

「私の仕事は毎日朝から夜まで人をある程度理解して嘘をつくこと。余計なものを売りつけるためにね。

そういうふうに人を観察し人間関係をずっと見てると、人が無意識にどう振る舞うか分かるでしょ。

私はあなたたちにも同じ態度を取ってた。人は傷つけ合うの。

いつの時でも気付かぬままに、地球の全ての生物をぞんざいに扱い、紙ストローと無農薬チキンで誤魔化そうとする。

そんなの何の役にも立たないのを知ってるくせに、わざと偽りの生活をする。合意の上で妄想を押し通す。私たちがいかに酷いかを認めたくないから。」

 

それと、映画で触れられている民主主義の崩壊についてもとても興味深かった。

第一段階:隔離

サイバー攻撃や電磁パルス攻撃などにより、個人の生活が外の社会から隔絶されるような、大停電や通信障害が起こる。生物兵器、化学兵器のバラマキも同時期に発生。突然のことに、個人はどう行動すべきかわからないまま、隔絶された生活を余儀なくされる。

 

第二段階:多発するカオス

情報を求めて外に出ると、想像できないような混乱状態にあることを目の当たりにする。通貨が使用できない、物や食糧が不足、対人関係の悪化、武装組織による攪乱など、社会情勢が激変する。

 

第三段階:内戦

次に、クーデターや内戦が発生して、民主主義社会は簡単に崩壊することが説明されている。民主的に選ばれていない軍事政権が誕生し、思想弾圧や取り締まりが厳しくなる。監視や密告が強化される。多くの人がFEMAのような更生施設に収容され、ますます国内は混乱に包まれる。

 

このような事態を想定して前もってしかるべき準備をしておき、社会情勢や状況に常に触れ、何か異変が起きた際に瞬時に最良の判断をし、皆が混乱に陥る前に行動するということが、命運を分けるのだなと認識させられた。

 

核シェルターなんぞはとても無理だし、戦争を想定した備えも今の日本ではあまり現実的ではないけれど、少なくとも自然災害や重大な感染症に対しては、出来る範囲の備えをしておくに越したことはないね。

 

原題「LEAVE THE WORLD BEHIND」THERE'S NO GOING BACK TO NORMAL

すなわち

「世界を置き去りにする」もはや平常には戻れない

 

ローズ!!ダニー(演:ケビンベーコン)!!

グッジョブグッド!アップ