1/14鑑賞

 

 

今、国内外で命の重みや尊さを真剣に考えるような辛い出来事がたくさん起きている。

 

そんな中でこのようなタイトルの映画はちょっと…とも思ったんだけど、作品自体にも、「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」等で有名なパトリス・ルコント監督が初めてアニメ映画を手掛けた作品という点にも惹かれ、鑑賞した。

 

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希望を見出すことが難しい世知辛い世の中。

 

色を失っている暗い街、暗い路地に、どこか優しく暖かい灯をともしながらぽわっと佇むお1軒のお店。

 

そのお店を営んでいるのは、先祖代々、死にたいという気持ちに寄り添いながら自殺用品を仕入・発明・販売してきたトゥヴァシュ一家。

 

一家は明るさやポジティブさを苦手とし、暗い言葉や行いや物事を好むというダークさを持っていて、ちょっとアダムスファミリーみたいな雰囲気。

 

そんな一家が末っ子アランの誕生によって変わっていくというストーリーで、フランスらしさがふんだんに盛り込まれているミュージカル調のアニメ映画。

 

絵も色合いもとっても素敵で、まるで絵本を見ているような感じだった!

 

ちょっとよく分からない、いかにもフランスらしい謎のシーンもあったけど、それも味かなと思える範囲で不思議な魅力があった。

 

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一点、日本人として気になるところがあった。

 

お客さんに色んな用具を勧める中で、日本刀&日本国旗のハチマキが出てきて「ハラキリ」「セップク」とか言ってるシーン。

 

「え、これはユーモアなのか皮肉なのか??」とちょっと戸惑っていると、中国っぽい挿入音が流れて吹いた(´゚ω゚):;.’:;ブッ

 

ほんっと欧米映画って日本と中国をごっちゃにするよね。日本も欧米や欧州の国々をごっちゃにしている部分も多いだろうから、お互い様なんだけどさ。

 

しかも、とびきり暗く厳格な主人の名前が「ミシマ」w

 

「ハラキリ」「ミシマ」ってさ、あのお方しか出て来ないんですけど目

 

私は気付けなかったんだけど「登場人物の名前が世界の自殺者から拝借されているっていうのは興味深い」という感想を見かけたので、やはり(;・`д・́)ゴクリ となったw

 

ちなみに一家の名前は下記の通り。

夫:ミシマ / 妻:ルクレス / 長女:マリリン / 長男:ヴァンサン / 次男:アラン

 

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なんて色んな感想がありつつも、一番は、末っ子のアランがニコニコしていて真っすぐで元気で健気でとにかく可愛い!愛おしい!!

 

トゥヴァシュ一家だけでなく社会全体もドンヨリしていて、大人も子供も暗い顔をして、色を失っている。

 

そんな中、アランは家族に笑顔になってほしい!悲観しないでほしい!店に用具を買いに来る人に死んでほしくない!という思いから、謀をめぐらしては行動を起こし、その度に両親から怒られ、兄と姉から白い目で見られる。

 

でもとびきり明るいアランは決してめげない。どんなに怒られてもすぐにニコニコして行動をとり続ける。

 

爆音で音楽をかけて、道も、道にいる人々も、スーサイド・ショップも、スーサイド・ショップの中にいるお客さんたちも、みんなデュクシ!デュクシ!デュクシ!デュクシ!って縦揺れしてるシーンがすっごく好き飛び出すハート

 

クライマックスでアランがお父さんを笑わせるところは、可愛さと愛おしさを感じつつ、同時にホロリときた。

 

お父さんもお母さんも、お客さんに寄り添って色んな道具を勧めて買ってもらっていたけど、本心では心が痛んでいたし、道具を買っていったお客さんとはもう二度と会えないことに悲しみを抱いていた。

 

長女マリリンがアランの影響を受けて少しずつ変わっていったように、そんなアランとマリリンを見てお母さんも変わっていったように、そんなマリリンやお母さんを見て自分も変わりたいと思ったヴァンサンのように、お父さんだって変われたらどんなに良いか…って思い続けてたんだよね。

 

アランのその面白くて可愛らしい姿に、涙を流しながら大笑いするお父さん。そんな2人を温かく見守って微笑む家族たち。

 

すごく良いシーンだったなぁ。

 

そんなこんなでめでたしめでたしと見せかけて、お父さんがちゃっかりアレを渡していたのにはブラックユーモアが効いていて、いかにもフランスっぽいなぁとちょっと笑ったw

 

命は大切。笑顔って素敵。笑うことって幸せ。どれも当たり前のようで、全然当たり前じゃないよね。実はとってもかけがえのないこと。

 

最後の歌がとっても良い歌詞だった!

 

やつれた顔にはうんざりだ

問題ないよ!笑えばいい!

 

世界の色を塗り替えよう

悲しい色はもうたくさん

 

今思えばどうかしていた私たち

暴力に手を振りサヨナラを

 

苦しみにも別れを告げるのだ

楽しい人生が今始まる

 

顔をシワくちゃにして笑おう

暗黒の時代とはお別れだ

 

今こそ言葉にして

自分の心に誠実にね

愛こそ万有引力だ

 

どんな夢もかなうもの

あなたが強く望めば

 

たとえ辛いと感じても

生きてこその この人生!

 

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「生きてこその この人生!」に、じーんとした。

 

胸が痛いシーンもあったし、ストーリーは単純なものだったけど、共感出来るところもあり、心が温かくなる素敵な映画だった。

 

R12作品ということもあって、確かに子供にはちょっと見せられないけれど、

 

①今深刻に死にたいとは思っていない

②生きる辛さを考えたことがある・考えている

③フラットな気持ちで観ることが出来る

④理屈より感覚で受け取ることが出来る

⑤アニメ映画・ミュージカル映画が苦手でない

⑥フランス映画が苦手でない

 

人には、たまにはこんな作品もどう?って言えるかも。

 

でも、上記が当てはまっていてさえも、確実に人を選ぶ作品であることには違いないだろうな~。

 

パトリス・ルコント監督、やっぱり好き!