2/22読了。

 

詳細:

ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃事件が発生した。死傷者40名に迫る大惨事を生き延びた高校生のいずみは、同じ事件の被害者で同級生の小梢から、保身のために人質を見捨てたことを暴露される。被害者から一転して非難の的になったいずみのもとに、ある日一通の招待状が届いた。5人の事件関係者が集められた「お茶会」の目的は、残された謎の解明だというが……。文学賞2冠を果たした、慟哭必至のミステリ。

 

感想:

理不尽につぐ理不尽で、かなりのモヤモヤが残る終わり方だった。

 

確かに世間は残酷で理不尽な側面はある。人間は弱い。でも、それだけでは絶対にないはず。著者は、そこまでいずみを苦しめる必要があったのだろうか…?

 

いずみが前に進むための選択がそれであったということは、世間や大人たちから大きな傷を受けて失望し、信頼が回復出来るまでには至らなかったんだなぁと感じ、いたたまれなくなった。

 

・弁護士さんは、そのような気持ちからの行動だったのであれば、なぜそんなに回りくどい方法をとったのか?なぜまず第一に心に寄り添ってあげなかったのか?

 

・お茶会の参加者はいずみと同じような後悔や苦しみを抱えているはずなのに、いずみに矛先を向けることで少しでも楽になろうとしてるのか、はたまた自分に言っているのか?

 

・教師たちの保身が全面に出ている対応。そして鮎川のあるまじき対応。鮎川は本当に許せない。

 

・波多野も鮎川と同じ。なぜいずみに背負わせる?

 

・小梢も相当に重たいものを背負ってしまい本当につらいけど、だからと言っていじめた罪はなくならないし、なぜ嘘を言っていずみを更に追い詰めた?

 

この人達は、全員が理不尽な目にあっている。それぞれ苦しんでいる。だけど、皆が皆、声をあげないいずみをスケープゴートにしている。

 

読者はいずみがどんな体験をしてどんな思いでいるのかを知っている。本当のことを言えば言うほど悪い方向になっていったり誤解されていくことも分かる。

 

でも、このままじゃあまりにやりきれない。

 

いずみはカウンセラーに1回だけ本音を漏らしたけど、とは言えカウンセラーはあくまでもそれが仕事なのであって…。

 

それ以外の誰がいずみの気持ちを聞いてあげた?苦しみを吐き出させてあげた?寄り添ってあげた?

 

でも、弱さを見せないいずみだからこそ、もがき苦しんだ先になにか強い光があるのだと信じたい。高く飛ぶのだと信じたい。

 

某主人公は「真実はいつもひとつ」と言うけど、何かの本で読んだ「真実は人の数だけある」という言葉もあって、どちらも本当だと思う。

 

「何を選択したのか」「どんな真実があったのか」ということも重要だけど、その真実に対してどのように向き合っていくのか、ということを考えた一作だった。

 

そして「白鳥の湖」の美しさを再認識した。黒鳥のパドドゥやグランフェッテの美しいこと!!

 

その昔バレエ団の舞台を観に行ったことがあったけど、機会を見つけてまた観たいなぁ。