【あくび指南】

若い衆が                
(ご)ご指南受けて       
(ひ)必死にあくび   
    (や)やるのを見てると
   (く)くだらねぇ

横丁にあくびの指南所ができた。
一人じゃ行きにくいので、「あくびなんて月謝を払って習うもんじゃねえ」といやがる友達を引っ張って教わりに行く。
早速、あくびの稽古が始まる。
師匠は春夏秋冬のあくびがあり、秋は月、冬はこたつの中でのあくびだが、セリフが長過ぎて初心者には難しいので夏のあくびを教えるという。

隅田川の首尾の松あたりに舟が舫ってある心持で、一日舟に乗っていて退屈して出るあくびの指南が始まる。
キセルをこう持って、体を揺れ加減にして、「おい船頭さん船を少し上手へやってください。これから堀へ上って一杯飲んで、晩にゃ、仲(吉原)へでも繰り込んで新造でも買って遊ぼうか。舟もいいが長く乗っていると退屈で退屈で、あ~ぁ(あくび) ならねえ」、こんな調子だ。
男は何度も練習するが、ぎこちなくて上手くできない。

待っていた友達はこれを見て、「教せえてる奴も、覚えてる奴もあきれた野郎だねえ。てめえたちはそんなことを言っていりゃあいいけれど、こうやって待っているもんの身になってみろ。退屈で退屈で、あ~ぁ ならねえ」

「ああ、お連れさんはご器用でいらっしゃる」

あらすじを書けば、この程度のストーリーですが、実際に演じようとすると、実に奥の深い噺だと思います。