大学受験を考える<第2章 進路をどう選ぶのか> (4/8)~研究内容も視野に入れる~
高校の先生によっては(特に理系で)「今は入れる大学に入り、大学院で行きたい大学に行きなさい」と言われる方がいらっしゃるかもしれません。これはどういう意味でしょうか?
【研究内容で大学を選ぶ」】
研究を行うにあたっては、大学全体としてではなく、その研究室でどんな研究が行われているのか、研究室単位で見る必要がありますので、これは尤もなことです。少し補足をするならば、特に理系分野に関しえ言えば、「どの大学に行くか」よりも、「どの研究室に入って、どの先生について、何の研究をするのか」の方がはるかに大事です。とりわけ理系分野や経済学・心理学などの一部の人文・社会科学分野などにおいては、インパクトファクターの高い(論文が引用される回数が多い、すなわち、レベルが高いと見られている)専門誌に、いかに多く、かつ質の高い論文を投稿し、掲載されたかが、評価の中心的基準になります。世界の中で競争するにあたって大学名自体は何の意味も持たず、極めてシビアな実力主義の世界です(もちろん、いわゆる「有名大学」、即ち研究予算が多く配分されている大学は確かに研究設備は充実しています。その結果、研究業績が上がり、更に予算配分が増えるという好循環が生ずる、ということは確かにあります)。単に大学名しか見ず、その他の様々な要素を考慮に入れずに選ぶと失敗します。
参考
インパクトファクター
http://ip-science.thomsonreuters.jp/ssr/impact_factor/
【「研究」に深く触れることができるのは大学院に入ってから】
学部4年生になると、ほとんどの大学の理系学部では、研究室に配属され、卒業研究を行うことになります。文系の場合は、「ゼミ」と呼ばれる研究グループに属して、卒業論文を書く場合が多いです。しかし、学部4年時の研究というのは、その分野のほんの最初に触れたにすぎず、研究の内容に深く触れ出すのは大学院に入ってからです。ですから、高校生・大学受験生の皆さんにはまだピンとこないかもしれませんが、学部の選択以上に大学院の選択は重要なのです。
同じ大学の大学院に上がるパターンが多いのですが、もちろん、大学と大学院は別なので、他大学の大学院に進学することも可能です。しかしながら、自分が行きたい大学院の入試科目が、自分が通っている大学で勉強できない場合、独学でカバーしなければなりません(仮に大学院の入試科目に無くても勉強が必用な場合があります。私の場合、所属していた学部では量子化学や有機化学の体系立った講義がありませんでしたから、大学院に入ってから独学でカバーしなければなりませんでした)。事前によく注意して検討すべきでしょう。大学院の募集要項も、学部の募集要項と同様にインターネットで公開している大学が多く、調べようと思えば可能です。
「同じ大学の大学院に進学する方が、他大学から進学するよりも有利になる」という噂がありますが、大学院入試自体は内部進学者であれ、他大学からの受験生であれ、平等に課され、公平に採点されます。ただ、大学院の入試問題もその大学の先生が作成するため、もともとその大学にいた学生のほうが、その先生の講義や定期試験のパターンを知っているため、情報収集という意味において有利になることはあるかもしれません。ただし、大学院入試の過去問は有料で販売されていたり、公開されていたり、あるいは、希望の研究室の先生に挨拶に行けばもらえることもありますので、事前によく調べておくとよいでしょう。
また、各研究室の情報を得るには、その研究室のホームページが情報量としては最も充実しています。とは言うものの、まだどんな研究をするのかすら知らない高校生の皆さんにそこまで調べろというのは酷かもしれません。だからこそ、高校の先生方には「大学入試まで」の指導ではなく、「大学入試以降」のこともよく調べて進路指導をお願いしたいと思います。いずれにせよ、高校生の皆さんには、大学を知名度や偏差値だけではなく、どんな勉強・研究ができるのかをよく調べて進路を選択してほしいと思います。
【大学の研究内容を知る】
『大学ランキング2017年版 (AERAムック) 』(朝日新聞出版)
『大学の実力 2016』(中央公論新社)
また、少し古い本ですが(インターネット検索では、こういう内容の、より新しい本を見つけることができませんでした。現在では状況が変わっている可能性があることにご留意下さい。)
『学問の鉄人 大学教授ランキング 文科系編』(宝島社)(1997年)
『わかる!学問 理科系の最先端―大学ランキング』(角川書店)(2003年)
『わかる!学問 環境・バイオの最前線―大学・研究者ランキング』(角川書店)(2003年)
などは偏差値ではなく、研究内容や設備の充実度などで大学を評価しているので参考になるかもしれません(ただ、学問・研究のランキングというのはそもそも比較自体が非常に難しく、これらの本は必ずしも専門家が編集しているわけではなく、専門家の方から見れば異論もあるようで、あくまでも「参考程度」に見るべきでしょう)。
これまでに、
21世紀COE(Center of Excellence)プログラム
https://www.jsps.go.jp/j-21coe/
グローバルCOEプログラム
https://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/
スーパーグローバル大学等事業
https://www.jsps.go.jp/j-sgu_ggj/index.html
科学研究費(科研費)助成事業
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/
といった国・日本学術振興会からの助成の対象になっている研究がどのくらい行われていた/いるのかという点も、その大学の研究の質を見る一つの指標になるかもしれません(このほかにも様々な研究費助成制度があります)。
【「学歴ロンダリング」という揶揄に惑わされるな】
一部の雑誌やインターネット上の議論などで「学歴ロンダリング」という言葉を見かける事があります。これは、受験偏差値が相対的に低い大学から、受験偏差値が相対的に高い大学の大学院に移る事を「マネーロンダリング」になぞらえて揶揄した表現です。この「受験偏差値」は大学学部の偏差値であり、それによって大学の「イメージ」がある程度決められていると考えられますが、大学院入試においてはこの学部の受験偏差値の概念自体をあてはめることができないため、楽をして最終学歴を塗り替えているように見えるのでしょう。確かに、大学院への入学時点でそのような動機の人もいることは否定しませんが、このような捉え方は、現実に大学院で何が行われているのかをよく知らない人が言っていることだと考えた方がよいでしょう。大学院入試に際しても、もちろんそのための「受験勉強」は必要ですし、また、入ってからは常に論文などで研究成果が求められます。欧米の大学院の教育方針を取り入れている大学院では、学部時代とは比べ物にならないくらいの大量の課題文献とレポートに追われる日々が続きます。決して「楽をして」最終学歴を塗り替えている人などいません。雑誌やインターネット上に溢れる情報に惑わされることなく、どんどん優れた大学院を目指して頂きたいと思います(日本では、いまだに高校卒業時点での学校選択が「学歴」と切り離しがたく結びついていますが(日本だけでなく韓国にも似たような現象はありますが、こうした大学受験制度を東アジアにおける「科挙」の歴史と関連付けて捉える人もいるようです)、欧米などでは、より研究・教育レベルの高い大学を目指して、編入学したり、大学院に進学したりすることは一般的であり、寧ろこうした選択は「努力の成果」として好意的に評価されるようです。
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