急変から2ヶ月が経った。

危ない山を越えて、HCUに転棟することができたことで気が抜けたのか、自分が37.3℃の熱を出してしまった。

次男の風邪が今更うつったのかもしれない。

 

咳の症状もあり、かかりつけ医に連絡すると午後に診てもらえた。

いつもしっかり検査をしてくれ、漢方薬も積極的に出してくれ、以前、人間ドックでも引っ掛からなかった病気の早期発見をしてくれたり、信頼できる医師だ。

この日も、新型コロナやインフルエンザ等の主な感染症の検査、レントゲンで肺炎検査もし、点滴を打ってくれ、帰宅後には熱も引き、回復した。

その後2日は面会を自重し、読書などして過ごした。

 

この頃に読んだ本で最も記憶に残っているのは、『長期脳死 娘、有里と生きた1年9ヶ月』という、長期脳死となった娘の母親(中村暁美さん)が書いた本だ。

同じ境遇になっていることもあり、共感するところが多く涙なしには読めなかった。

 

有里ちゃんは2歳8ヶ月の時に脳死となり、バイタルが安定して1年9ヶ月もの長期に生きたが、在宅介護に移行する1ヶ月前に急変して亡くなられている。

ご両親もだと思うが、なぜその時に急変してしまったのだろうと思ってやまない。

(本では、急変の前に1週間ほど下痢が続いていたがそれは治り、急変の日に特別のことは何もなく、面会に来ていたお母さんが帰る時にそれを止めるかのように心拍が急上昇して急低下したとのこと)

もうすぐ自宅に帰れるというときだったのに。

子ども自身が寿命を決めていたかのような、そんな気がしてしまうが、そうするとそうちゃんもどこかで決めた時間があるかもしれない、と思ってしまう。

 

中村さんは本の中の「看取りの時間」において、以下のように綴っている。

 

「(略)娘と家族の一年九か月は、とてもかけがえのない時間でした。とても貴重なお別れの時間でした。脳死と宣告された時に、このお別れが同時に来ていたら、きっとこのように受け入れることはできなかったでしょう。

 脳死と宣告されただけで、もうすでに冷静ではいられません。それは、ある種の極限状態なのです。そのことを受け入れたくないという拒絶反応が起こるのです。さらに、そこにはあたたかく、赤みのある、ただ眠っているだけにしか見えないわが子の体があります。自力で鼓動を打つ心臓があり、家族のそばから離れまいと、必死に生きようとしているわが子がいるのです。その現実を前にして、その子を死んでしまったものと考えることができるでしょうか。それを死と認めるためには、当然時間が必要になります。突然起きた現実を、しっかり見つめ、受け入れる時間が必要なのです。

 (中略)生きている。まだ生きている。毎日毎日、生きていることに感謝しました。

 命とは、なんと愛おしいものなのでしょう。私自身、元気でいることが当たり前になってしまい、生きていることに感謝など、なかなかできませんでした。でも、有里が教えてくれました。生きていることへの感謝と、生きることの大変さを。だからこそ、無駄のない生き方をしたいと思いました。

 (中略)この時間は、私にとって、看取りの時間だったのだと言えると思います。このかけがえのない家族の幸せな時間を、奪うようなことがあってはなりません。(以下略)」

 

私もこの時間を大切にし、毎日、生きていることに感謝をしている。

 

また、中村さんのご家族は4人兄弟で、3人の兄がいて、それぞれに妹の障害と死に向き合っている様子が書かれている。

うちの弟妹も、彼らなりに人生の学びにしてくれるだろうか。

 

次男は、最近は長女の遊び相手をしたり、お世話をしたり、掃除などもよく協力してくれるようになった。

学童保育では以前は兄と一緒に遊ぶことが多く、友人関係も兄の友人やその弟ということが多かったが、学年が上がった4月以降は、自分の友人ができたようで以前のように学校や学童保育に行きたくないと駄々をこねることが少なくなった。

長男とは違うタイプで、外で遊ぶことは好まず、家で本を読んだり(兄より読書好きで読むのも早い)、アニメを見たり(兄の急変後にアニメのドラゴンボールを見始め、今やGTや改まで視聴し終え、ワンピースを視聴中)、絵を描いたり(トレーサーを買い与えたらドラゴンボールの絵も描くように)、将棋ゲームをしたりして過ごしている。

就寝時に、長女相手に焼きもちをやいて母の取り合いをしたりして、寂しいと感じることもあるように思うが、彼なりに着実に成長していると思う。

 

長女は年が離れているので急変前のそうちゃんの記憶は残らないだろう。

長女にミルクをあげていた写真、長女が初めて歩いた頃に体を支えてあげ手伝っていた動画など、自宅等で一緒の時間を過ごした記録が僅かに残っているので、話ができる時になったら色々と教えてあげたい。

 

そうちゃんも、まだまだ長く生きてくれるといいな。

誰が可能性がないと思っていようが、奇跡的な回復まで諦める気はないし。

 

他にも、『奇跡の脳』(ジル・ボルトテイラー著)、『ゴーストボーイ』(マーティン・ピストリウス著)など、脳障害から回復した人の書いた本も読んだが、回復期に入ると興味がなくなってしまい、そういう本は完読できなかった。

そうちゃんの今を脱却できる参考になるものがないのか、探究の興味は様々な方向に向かった。