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9月に入り、多貫エステートでは新築物件購入セミナーの講師をカモネギ太郎さんに依頼することが決まりました。

 

広報担当の風炉敷広子さんは1週間前に太郎さんと打ち合わせをしました。

以前、広告の為のインタビューでは結局広子さんが全部作文をしたことがあるので、今回も何らかの対策が必要と思っていました。

 

そこで、広子さんは太郎さんの為に原稿を準備しました。

 

「太郎さん、今回はこちらの原稿に従ってお話をしてください。この原稿は暗記してくださいね」

「当日は、スライドを準備します。そのスライドに従ってこの原稿を読み上げれば良いのです」

「そうか、それは簡単で良いなあ。それなら大丈夫です」

「それでは、1週間後のセミナー宜しくお願いします」

 

太郎さんは嬉しくて、大家仲間に声をかけて沢山の人を動員しました。勿論妹の花子さんも一緒です。

 

そして当日がやってきました。

 社長の話が終わり、いよいよ太郎さんの出番です。

 

実は、太郎さんは強度のあがり症でした。

折角原稿を貰って事前に読んでおいたのに拘わらず、いざ演台に昇ると頭の中が真っ白になってしまいました。

 

「えー、本日はお天気も良く皆さんお越しくださいましてありがとうございます。

僕はカモネギ太郎と言います。まずはカモネギ家について説明します。江戸時代鴨川のほとりに。。。。。」

冒頭から台本にないことを話し始めました。この調子では先祖の話だけで1時間使ってしまいそうです。

 

風炉敷広子さんは社長からの目配せに呼応して、演台に上がりました。

そして、即席のインタビューに切り替えたのです。

 

「太郎さん先祖の話はそこまでにして、数ある中から多貫エステートに決めた理由を教えてください」

「それは加奈さんがいたからです」

全然答えになっていません。


 

 

何とか悪戦苦闘しながら60分の講演が終わった頃、広子さんは汗びっしょりでした。

肝心の太郎さんは、自分が何を話したのかぼーっとして覚えていません。

 

聴いていたお客さんは呆れた表情でした。

 

多貫社長は太郎さんの様子を見て広子さんにこっそり耳打ちしました。



「ちょっとワシの見込み違いだった。太郎君にはもう講演は頼まないことにしよう。そしてイメージキャラクターの話はなかったことにしよう」

「私もその方が良いかと思います」

 

その後、太郎さんに広告や講演の依頼が来ることはなくなったのでした。

太郎さんはセミナー講師をきっかけに出版のチャンスをうかがっていましたがこれでその夢は破れました。

 
9月末の預金通帳

今月は多貫エステートから講演料3万円が臨時収入として入りましたが、キャバクラ代に消えてしまいました。

 

    
  
 

 
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カモネギ太郎·花子の過去のエピソードは こちら1話

                   

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