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やがて年が明けました。

 

太郎さんはいつも正月はこたつに入ってテレビばかり見ているのですが、さすがにアパートの事が気になるんでしょう。珍しく花子さんと一緒に鴨葱大神宮まで初詣に行きました。

 



長い列に長時間並んで初詣を済ませた後、絵馬を奉納しました。

太郎さんは折角なので出来るだけ沢山お願い事が書けるようを細かい字で出来るだけ沢山書きました。

でも、字が下手な上にぎっしり書き込んだので読みづらいのです。神様はきっと読み飛ばしてしまいそうです。

花子さんは相変わらずの願い事です。神社に寄付すると書いてあるのは神様に通用するでしょうか?

 

 

「これで神様にお願いしたから満室経営間違いなしだ」

今年は普段は信心深い事を何もしないくせにこんな時だけ神様に祈ってもご利益があるとは思えません。

 

 

一方加奈さんは年末、休みになっても太郎さんの物件の事が気になって落ち着きかない休みを過ごしました。気晴らしに父親からアルファベンベを借りて高速を時速150キロで一気に走ったら覆面パトカーに捕まり高いお年玉を取られました。

「今年はついてないわ」

 

やがて正月休みが明けました。年明けからは繁忙期の始まりです。

これから3月までは不動産業界の一番忙しい時です。学校の入試、卒業、入学そして会社の人事異動がこの時期に集中します。それにつれ賃貸住宅の入退去が集中して発生するのです。

 

香森店長は多貫エステートの新築物件の募集活動を開始しました。

タヌキメイトは太郎さんの物件ばかり扱っている訳ではありません。他に販売した物件も併せて募集活動をしなければならないのです。

当然、香森店長だけでは手が足りません。そこで部下の蔵居洋子(くらいようこ)さんがチバラギ県の物件営業を担当することになりました。

 

 

 

蔵居さんは、昨年末に入社したばかりの新人です。

他の業界から転職したばかりなので不動産の知識は殆ど持っていません。タヌキメイトは少数精鋭をモットーにしていて常に人手不足状態なのでまともに新人を教育するゆとりがありません。今回も蔵居さんはチラシの束を渡されて手取市にある不動産屋を片っ端から回るようにと命令されたのです。

 

夕方になって蔵居さんはお店に戻ってきました。

「店長、戻りました」

「おおご苦労さん、で、様子はどうだった?」

「どこも忙しそうでなかなか話を聞いてくれないのです。シクシク」

「最初のお店ではこんな忙しい時に来るなと叱られました。それでその後のお店に怖くてなかなかいけませんでした。結局今日は3件回っただけで、チラシもこんなに余っちゃいました。シクシク」

「ダメじゃないか」

「でも、仕方ないんですシクシク」蔵居さんはすぐに泣きだします。

「まあ、皆さん忙しくて気が立っているんだろうね。だけど、この位の事で泣いちゃいけないよ」

「だって、シクシク」

 

この調子で入居者が決まるでしょうか?




 
     
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