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加奈さんは早速社長のところに行きました。

 「社長ちょっと相談があるんですが」

「おう、加奈さんじゃないか。何だね?」

「実はカモネギ太郎様から電話を頂きました。昨日現地に行ったら思いの外不便だし周りにはアパートが一杯建築中なので果たしてうまく行くか心配になっているとのことです」

「おう、そうか。加奈さんのことだからうまくやってくれ」

社長は一旦売ってしまえば後の事は気にしないタイプの様です。

 

加奈さんは引き下がりません。

「お言葉ですが社長、今回の物件は我が社で経験のないエリアに初の進出ですのでもう少し慎重にする必要があると思います」「今回のビバリーシリーズはデザイナーズ物件なので相場より高い家賃を設定していますが新築と言えども満室にするのは困難です」

それを聞いて社長は顔を真っ赤にして怒り出しました。

まるで瞬間湯沸かし機の様です。

 


「何だって!そんなことを言うのはやる気と根性がないからだ」

「わが社の社訓を知っているだろうな」

そういって社長は壁に掛けてある社訓を指さしました。

 


ここにはやる気と根性しかありません。今時大昔の体育会レベルの社訓なんて存在しているのが不思議です。

 

「はい、存じています。ですが、今回はやる気と根性だけでは難しいのです」

「そんなことはないだろう。もっとやる気を出してみろ!」

 

社長に困りごとを相談する時に陥るいつものパターンになりました。

社長のアドバイスはいつもやる気と根性だけです。

加奈さんはこれ以上言っても無駄だと感じました。

「はい、わかりました」と言って社長室から出ようとしました。

 

その時社長から「タヌキメイトの香森(こうもり)店長と相談したらどうだね。ワシからも話をしておくから」と言われました。

タヌキメイトは多貫エステートの建てた賃貸物件を管理する子会社で、多貫エステートの同じビルの一階に店舗があります。

 

「香森店長?」

加奈さんは初めて聞く名前です。確かタヌキメイトの店長は違う名前だった様な気がします。

 

「実は、先日ライバルのハト不動産から引き抜いたんだ。前の会社では辣腕だったという噂だからきっと良い結果になるだろう」「ただ、出社は1週間後になる」

「はい、ありがとうございました」

加奈さんはやる気と根性だけではこの難局を切り抜けるのは無理だと判断しています。

やはり募集のプロの協力が必要だと感じていました。

そうなると頼りになるのは新たに入社した香森店長だけしかいません。

 

そして1週間後、香森店長が赴任してきました。

 



 
     
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