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現地見学の後、心配になった太郎さんは翌日加奈さんに電話しました。

 「加奈さん、昨日工事の様子を見に現地に行きましたが、心配になってきました」

「太郎さん、いったいどんなところが心配だったのですか」

「うーん、何となく」

太郎さんはどうやら心配の訳を簡潔に説明する能力に欠けている様です。

 

「えーっとチバラギ電鉄の運転間隔は長いのと、駅前はお店がないし」

「あ、それといつのまにか周りにアパ―トが一杯建ってしまっていました」
「これじゃ高い家賃はムリじゃないかと言われました」

「誰かと一緒に行ったんですか」

「はい、最強大家の会の鉄道さんと妹の花子と行きました。鉄道さんからはちゃんと買う前に確認しなきゃダメだと注意されました」
「その上妹の花子までもが尻馬に乗って僕をいじめるんです。これではアニキの面目丸つぶれです」

 

「そうでしたか。その方たちは表面だけ見て判断されたんですね。太郎さんがちゃんと私の説明したことを伝えて頂けたらそんなことにならなかったと思います」

太郎さんは、そう言われれば加奈さんからの情報を伝えていなかった事に気が付きました。

 「それと帰り際に手取駅前のぼったくり不動産で募集チラシを見たら、新築でも6万円の相場でした。鉄道さんから加奈さんが言っていた7.3万円は高すぎるんじゃないかと言われたんです」


ここから加奈さんの反撃が始まりました。

 「まあ太郎さん、確かに未だ便利なところではありませんがニコポン光学の研究所が既にありますし、2年後には工場も稼働を始めます。また、チバラギ平成大学の新キャンパスも出来ますから心配要りませんよ。それにあの近辺は安アパートばかりなので、弊社の建物にかなう訳がありません」

 
「ご存知の通り、弊社のビバリーシリーズはスタジオ木恒デザインのおしゃれアパートです。このアパートは都内の人気エリアで大好評を博しています。都内の物件より家賃はかなり安めで設定していますので十分競争力はあります」

「手取市近辺にはこんなおしゃれなアパートはありませんので、流行に目ざといナウでヤングな手取ギャルなら憧れて入居する事間違いなしです」

と、加奈さんは一気にまくしたてました。

 


太郎さんは加奈さんが自信たっぷりに言うので自分の心配は杞憂だったかもと思い始めました。

「そうかあ、加奈さんがそう言うのだから大丈夫ですね。安心しました」

「はい、御安心下さい。社長からも太郎様は大切なお客様だからと言われていますので」

太郎さんは加奈さんが自信たっぷりに言ったのですっかり安心して電話を切りました。

 


加奈さんは電話を切るとため息をつきました。

困ったわね。実際あの家賃では苦しいわねえ。一旦売ってしまえば後は買主の自己責任と言って逃げるつもりだったのに、社長の命令で状況が変わってしまったのだから苦労するわ。

 

とりあえず社長と相談しましょう。

 

加奈さんは重い足取りで社長室に向かったのでした。

 

つづく




 
     
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