加奈さんは多貫エステートの性能が良い理由を説明しました。
「実は、シマシマハウスは部屋の壁が薄いんです。ピンポンすると全部の部屋の入居者が顔を出すのです」
「それに比べれば弊社のアパートは両隣2軒だけ顔を出すので遮音はしっかりしています」
「なるほど、それはすごいなあ」
カモネギ太郎さんはそう言ってから、ちょっと思い直したように質問しました。
「でも、それって本当は誰も顔を出さないのがいいんじゃないですか?」
カモネギ太郎さんらしからぬ鋭い質問が出ました。
槍手加奈さんはちょっとびっくりした顔をしました。
「太郎さん確かにその通りです。でも、収益物件なので建築コストを下げる為にはある程度妥協を見出すことが必要です」
「弊社の場合は、クレームが出てもシマシマハウスの例を引き合いに出して納得して頂いています」
遮音性能が良くないのに更に悪い他社の例を出して説得するなんてひどい会社です。
更に、加奈さんはもっとひどいことを言いました。
「それに、自分で住む訳じゃないのでそんな些細な事どうでも良いじゃありませんか」
「あはは、確かにその通りだ」
本当は音の問題は一番クレームが多いのです。ですから設計段階からきちんと対策しなければいけないのですが、儲けしか頭にない業者は気にしません。
「自分が住む訳じゃないから」というのは全くひどい話です。
それに同調する太郎さんのモラルのなさにはあきれます。
「それと、周りにお店とかないんだけど不便じゃない?」
「いえ、この裏手にはスーパーがあります。またニコポン光学の研究所構内には売店があるので従業員はそこで買い物を済ますことが出来ます」
「そうか、スーパーがあればそんなに不便じゃないなあ」
一通り説明が終わり、加奈さんは太郎さんに言いました。
「太郎さん、これで現地案内は終わりにさせて頂きます」
「この物件は未公開物件ですので、来週の金曜日までに購入申込されない場合は一般公開となります」
「一般公開すれば即日に売れる事が予想されますので早目に申込みをお願いします」
「来週の金曜日ですか。わかりました」
「それでは宜しくお願い致します」
車に戻る途中、加奈さんは聞きました。
「太郎さん、お住まいはどちらですか?」
「彩玉県の大舟市(おおふね)です」
「私は渋谷に住んでいますので帰り道ですね。それじゃ、宜しければ車で送りましょうか」
「えっ、いいんですか」
「はい、一人で帰るより一緒の方が楽しいですから」
太郎さんは嬉しくて舞い上がりました。
そして加奈さんの車に乗り込ました。
でも、その後大変な事が待っている事を太郎さんは知る由もありませんでした。
つづく
カモネギ脱出ゲーム開催予定





