南手取駅は太郎さんが想像していたよりずっと立派でした。
でも、これには訳があったのです。
実はチバラギ電鉄は単線なのです。ですから電車は30分に一本しかありません。
この地域は車社会なので利用客も少なく、駅の構内は閑散としています。
待ち合わせをJR手取駅で待ち合わせしたのはこのことを伏せたかったのでした。
この地域は現在、町村合併前は土井中町でした。そしてこの町は大手企業の工場誘致を積極的に行っていたのでした。かなりの優遇処置を出して努力した結果、ニコポン光学の工場誘致に成功したのでした。
もっとも、土井中町はその後手取市に併合されてしまい、その結果手取市の議会で誘致の見直しがなされ、その後の工場誘致はなくなりました。
この駅はニコポン光学の工場誘致が決まった時に土井中町が補助金を出し、将来の利用増に備えて予め複線用の予備ホームと連結車両8両編成まで対応できる様に建て替えられたのでした。
ところがその後ニコポン光学が業績不振の為、工場移転が延期となってしまいました。工場誘致に伴う優遇処置が廃止されたのもその一因でした。
工場の建屋は既に出来上がっていたので当面は研究所だけが移転することに計画が縮小されてしまったのです。
その結果、需要が増える見込みのないまま立派な駅舎だけが残ったのでした。
現在の南手取駅の一日当たりの乗降客数は1000人未満で、チバラギ電鉄の駅の中では一番少ないのです。
8両編成の電車が停車出来る長いホームですが、実際に走っているのは2両編成。複線化の為の軌道は未だレールが敷かれておらず、現在は工事用車両の通路と化しています。
工場誘致が実質中止になった今、今後の発展は望めません。
恐らく、このまま複線化されずにいることでしょう。
でも、そんな事情について加奈さんは一言も説明しませんでした。もしかして加奈さんも知らなかったかも知れません。
「さて、今度はそのニコポン光学研究所に移動します」
加奈さんは再び車に乗り込み、移動を始めました。
つづく
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