本当にあった怖い話 -15ページ目

本当にあった怖い話

本当にあった怖い話と意味がわかると怖い話を解説付きで書いています

500 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:00:19 ID:1TVHnl7i0
甕 1/8

空気の冴え渡る極寒の頃、兄貴が教授を連れて家に来ることになった。
久しぶりの訪問に、父と母は目を輝かせる。
…この人たちは、教授の本性を知らないから(汗)。

玄関先まで迎えに出たのは、母と私。
振る舞いの上品な教授は、最初の訪問から、母を虜にしていたようだ。
「お父さんより魅力的」と、はるかに老いた教授と較べられる父…立場なし…。
母の誘導で土間から家に上がりこんだ教授は、狭い廊下の脇によけていた私に、「今度は少し遠出をしよう」と告げて、先に進んだ。

「蕎麦はもういいですよ」

教授の後ろから、軽口を叩きながらついていこうとした私。
でも、そこで足が固まった。


501 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:01:13 ID:1TVHnl7i0
甕 2/8

教授の背中に、長い髪の【何か】が張りついてる。のが見える。
裸の女性の後姿にも見えるけど、体型が異様…。細い。とにかく痩せている。骨格標本に皮が張りついているみたい。
肌の色は、死人のように土気色だった。
教授の動きに合わせて、操り人形のごとく、くらくらと揺れる。

「何してんだ?」

最後に入ってきた兄貴が、立ち止まった私の後ろから、能天気な声をかけてくる。
私は兄貴を玄関に押し戻し、母と教授に聞こえない小声で聞いた。

「見えた?兄貴、見えた?」
「は?」

見かけは織田○道みたいなくせに、兄貴は全然気づいてなかったらしい。
でも、「教授の後ろに、餓鬼みたいな人が…」と私が教えると、心当たりがあったようで、「ああ。ついてきたのか」と、あっさり認めて、さっさと居間に行ってしまった。
厄介なモノを連れてくるのは、教授だけにしてよ~。


502 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:02:00 ID:1TVHnl7i0
甕 3/8

居間の座卓に全員が座ったときには、教授の後ろのアレは見えなくなっていた。
それでも、ビクビクしながら酒を注いだりしてたけど、父と兄貴が、例によって羽目を外し始めた頃には気にならなくなった。

「最近はどの辺りを勉強してみえるんですか?」

父が鼻の頭を赤くして、はしゃぐ。
田舎の農家の次男坊だった父には、こういう学問的な話に触れることが、自分のステータスを高めることにもなっているらしい。

「興味があるのは東北ですが、まだお話できるような成果にはなっていませんね」

教授も、この環境の中では、穏やかな笑顔ができるみたい。

「今度は東北行き?」

私が尋ねると、「広島だよなあ、教授?」と、すっかり出来上がってる兄貴が口を挟んだ。

「そうだね。そちらが先だ」

教授も相槌を打つ。
母が兄貴に、「教授に向かってなんですか、その口のききかたは」と叱った(笑)。


503 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:03:04 ID:1TVHnl7i0
甕 4/8

「広島というと、まさか原爆ですか?」

父の言葉に、私は内心で(郷土史と戦争は関係ないでしょ)と突っ込んだけど、教授は、「ええ。それがらみです」と肯定した。

「原爆で被災した【ある道具】の出所を調べたいと思いまして」
「それが、回りまわって、いま、うちの寺にあるわけ」

兄貴が付け加える。
兄貴の話に因ると、それは小さな甕(かめ)らしい。
水入れとして使ったもののようだけど、いまではひび割れて、保水力を失っている。
兄貴のお義父さん、つまり先代の住職、が存命のときに、教授が寺に持ち込んだものだ。
教授はそれを【呪具】だと紹介した。

「呪いがかかってる…って、ことですか?」

私が確認すると、教授と兄貴が同時に、「そうだよ」と、返事をした。

「あの甕は、水を欲しながら得られず、飢えて死んでいった人間の魂がこもってるんだ」

教授は、たぶんサービス精神なんだろうけど、わざと陰にこもった声で続ける。
父も母も、兄貴さえ、その暗い雰囲気を楽しんでいるようだった。
でも、私は笑えない。だって。
…さっきのアレは、じゃあ、その呪具からとり憑いてきたモノなの?

504 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:04:22 ID:1TVHnl7i0
甕 5/8

その甕は陶器質のものであるらしい。
【質】というのは、陶器としては完成されていない、土器と陶器のあいのこみたいな質感だから、なのだそう。
そうすると、かなり古い年代の物ではないかと勘ぐるけど、教授は、「古墳時代までは行っていないでしょう。せいぜい遡って、奈良時代」と答えた。
それでも、学術的には価値が高いんじゃないの?

「僕の実家の蔵にあったものでね」

酒に強い教授は、それでも少し酔ったのか、身の上話を始めた。

「由来も何もわからないんですが、代々、こんな呪いの話が語り継がれているわけです」
「我が家には一代に1人は狂人が生まれるのだとか。そして、こっそりと隠される…つまり、家族の手で葬られるわけですな」
「僕の世代には僕と妹がいるのですが、どう見ても、狂人資質なのは僕だ。だから、僕自身、粛清される自覚があったんです。でも」

そんな話をしている間も笑みを絶やさない教授だったけど、次の言葉は、少し、表情を翳らせてた。

「残念ながら、選ばれたのは僕ではなく、僕の妹でした」


505 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:05:00 ID:1TVHnl7i0
甕 6/8

話の途中だったけど、私は席を離れた。
見える…。
教授の後ろの【餓鬼】が、教授の肩口にのしかかりながら、顔を上げようとしているのが。
…見たくない。

台所で塞ぎこんでいると、兄貴が顔を覗かせた。

「酒の追加を持ちに来た…って、何やってんの、お前?」

坊さんのくせに何も気づかない兄貴に八つ当たりした。

「教授の後ろにくっついてるあれは何なの?!兄貴、本当に見えてないの?!!」

兄貴は…困ったように首をかしげる。

「うん。まったく見えてない」
「もーっ!!!」

怒りを通り越して、呆れた。


506 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:06:48 ID:1TVHnl7i0
甕 7/8

「それ、たぶん、教授の妹さん」

兄貴は、私の正面のテーブル席を確保し、ほお杖をついて、話し始めた。

「教授の妹さんは、10代の頃に家を出て独り暮らしを始めたんだ。理由はよくわからないけど」
「家を出てからはほとんど音信不通。教授も、自分の性格に負い目があったもんだから、会いに行ったことはなかったらしい。…つまり、妹さんが家を出た原因が自分にあると思ったんだな」
「ところが、元気にやっていると思った妹さんは、アパートで餓死した。就職先を解雇されて、収入がなかったんだ」

にわかには信じられない話だった。
でも、兄貴の補足で、なんとなく納得はした。

「いまも生活苦は他人事じゃない時代だけど、教授の若い頃は高度経済成長の真っ只中だ。世の中が豊かになっていく一方で、切り捨てらた人たちは、少数ながら、いたんだよ」

まるで贄だな、と思った。
多くの人間が裕福に満たされるための、犠牲…。


507 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:07:56 ID:1TVHnl7i0
甕 8/8

兄貴に促されて席に戻った。
教授の背中には、まだアレがいたけど、誰も気づいていないようだ。
兄貴が、教授に追加の酒を注ぎながら、言う。

「あの甕さあ、ときどき喋るんですよ。中身は聞き取れないんだけど、もんのすごくやかましい」

教授が興味深そうに聞く。

「それは1人の声かね?」

兄貴は笑いながら答える。

「いえいえ。代々の呪いの継承者が集まってるから賑やかですよ」

そして、自信ありげに付け加える。

「そのうち、みんなまとめて成仏させますから、まあ、安心しててください」

その瞬間、教授の妹さんの姿は、淡くなって、消えた。
家族には、「大口を叩くな」と馬鹿にされた兄貴だけど、案外頼りになるのかもしれない。
なんて思った。

454 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:53:44 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 1/9

長い話ばかりで恐縮しているのと、兄貴編を書いてみたくなったので、サイドストーリーを投下します。
教授は出ません。郷土史もありません(汗)。

運動系は得意なほうだったけど、特に頭が良かったわけでも、経歴のスペックがあったわけでもない。
なのに、中学、高校と、つけられたあだ名は【アニキ】だった。同級生からも、なぜか上級生からも。
当時、まだ小学生だった妹は、最初は可愛く、「お兄ちゃん」と呼んでくれていたんだけど、俺の悪友たちに感化されて、すぐに、「ダメ兄貴」が代名詞の定番になった(泣)。

そんな時代の話。


455 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:54:32 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 2/9

俺の一学年上に、名高、という先輩がいた。
高校時、俺は陸上部と心理学研究会という眉唾なクラブに所属してた。名高先輩は、その陸上部のほうで世話になった人だ。
おとなしくて気弱な性格だったけど、考えなしに行動する俺を絶妙にサポートしてくれたりして、意外と頼りになる先輩だった。
そして、足は抜群に速かった。

名高さんが3年に進み、クラブにも出てこなくなって疎遠になった頃、妙な噂を聞いた。

「受験ノイローゼらしいよ」

彼は、見るからに厳しい家で育てられてるといった内向的な雰囲気を持っていたから、プレッシャーがきついことは、簡単に想像ができた。
気になって、話を聞きにクラスまで行ったこともあったけど、要らん世話を焼く周囲に、「あんまり関わらないほうがいいんじゃない?」と押しとどめられて、結局、声をかけることもなく放置してしまった。


456 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:55:05 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 3/9

もう肌寒かった10月の半ば。
深夜まで漫画読んで遊びほうけていた俺は、なんとなく視線を感じて、2階の部屋の窓から眼下を覗いた。
名高先輩が立ってた。影が異様に薄かった。
俺はすぐに玄関を飛び出して、先輩が立っていた位置に行った。
けど、もう痕跡はない。

先輩の存在が消滅するイメージが繰り返し浮かんだ。
焦ってあちこちを探すと、俺の家から一区画目にある信号の交差点を、左に折れる影が見えた。
家のほうから、お袋の呼び止める声が聞こえたので、「すぐ帰るからっ!」と返事をして、俺は先輩を追った。


457 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:55:56 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 4/9

尻尾を捕まえる、という言葉があるけれど、まさにそんな感じで、俺は、先輩の影という尻尾を追った。
もうちょっと真面目に走りこんどきゃ良かった。全然追いつけねえ。
汗だくになりながら着いた先は、学校だった。
寒気がするほどの不安が襲ってくる。
息は完全に上がっていたけど、頭は冷静になれた。冷静にならないと【間に合わない】と思ったから。
校門をよじ登って、校庭に忍び込む。

闇に包まれた校舎は不気味で、ガキだった俺は、足がすくんだ。
先輩の影はどこにもない。学校に入ったのかどうかも定かじゃない。
でもさあ。
真夜中に、音信の途絶えてる俺の家に来るぐらいなんだぜ?よっぽど思いつめてなきゃ、やらないよな。
ノイローゼの人間が、最期の場に選ぶのは、自宅か学校ぐらいじゃないのかよ。

鍵がかかっているだろう昇降口を避けて、俺は、教室棟の脇にある、螺旋状の非常階段を上り始めた。

458 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:56:55 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 5/9

階段は、安全基準なんか気にも留めないという造りで、中央部は、最上階から地面まで吹き抜けている。
腰までの手すりはついているけど、そんなもんは簡単に越えられる。
先輩…、まさか、上から降ってこねえだろうなあ(汗)。
振り仰いでも、上部は、鉄階段の底に阻まれて見えなかった。

4階部分に到達して、いよいよ最上階の5階に着こうとしていた俺は、落ちてくる先輩を受け止めるイメージトレーニングに集中していた。
だってな、この先は屋上に到達するしか道がない。俺が無駄足を踏んでいるんじゃなかったら、先輩は屋上か、階段の上部にいるはず。
螺旋の上から、ひょいっと先輩の顔が覗きそうな気がした。

「…俺、来てますよ…」

思いとどまってほしくて、ビビリながらも声をかけた。


459 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:57:30 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 6/9

そしたらさ。おかしいんだよ。
螺旋階段の下のほうから、カンカンと金属を踏み鳴らすような足音が聞こえてきたんだ。
吹き抜け部分に顔を出して確かめると、3階辺りに足が見えた。
な…なんで先輩のほうが下にいるんだよ?!抜いてきたわけもないのに…。

足は下方に向かっている。
俺も方向転換をして、足を追った。
相変わらず早い。距離を離される。
焦る。なぜかわからないけど、思う。

【あの足が地面に下りる前に捕まえないと】


460 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:58:17 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 7/9

俺が2階あたりまで下りたとき、先輩は、すでに地上まで数段を残すのみだった。
俺は何も考えずに手すりを越え、吹き抜け部分から下に飛び降りた。
地面までは長かった…。
足裏と足首と膝に、思いがけない衝撃を感じて、悲鳴が出た。
でも、うずくまる前に、階段の出口を塞ぐことができた。
あと1段を残して地面に下りきらなかった先輩は、驚いた顔をして、足を止めた。

その瞬間、すぐ脇の植樹の並木から、盛大な音がして。
屋上から飛び降りたらしい先輩の体が、小枝まみれになりながら俺の目の前に落ちてきた。


461 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:59:05 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 8/9

携帯を常備する時代じゃなかったから、救急車を呼んでくれたのは、俺の叫び声を聞いて集まってくれた近所の人たちだった。
木がクッションになったのか、先輩は、俺の呼びかけに答えるぐらい元気で、隣りに座り込んでた。
「なんでお前がいるの?」と聞かれたけど、「バカヤロー」としか答えられなかった。
でも、後々まで一番の謎とされたのは、まったくの部外者だった俺が、自殺未遂をした先輩の横で、捻挫で動けなくなっていたことだったらしい。


462 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:59:45 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 9/9

後に住職になった俺は、妹にそのときのことを話し、「死に急ぐ人間の信号をキャッチしたいから、俺は坊さんになろうと思ったんだよ」と説明した。
でも、妹は、「兄貴、キモイ」と、冷めた対応をしただけだった…。
436 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:33:59 ID:ypIINElh0
[連鎖]
1/9

すっかりハマッテしまった。
いつでも考えてしまう。まるで乙女だな、と思う。
俺は読んでいたオカルト系雑誌を脇にどけ、携帯を取り出し、考える。
メールをするか、電話をするか・・・。ここは慎重に事を運びたい。
ハマッタのはオカルトの世界に、という訳ではない。
まぁそれにも大分のめり込んでいるのだが・・・。
すっかり惚れてしまったのだ。彼女に。
オカルト系雑誌なんかを読むようになったのも、彼女の趣味がそれだからだ。
相手の趣味に合わせて、その勉強?をするなんて、なんて健気なのだろう。
・・・とかなんとか自分に酔っていると、持っている携帯がいきなり鳴った。
慌てて確認し、驚く。・・・彼女からだ!
なんという奇跡。思いが通じたのか?
おぉ、神様、仏様、阿弥陀如来様。
えーっとあと、インドラ様に薬師如来様。刺抜き地蔵様も入れておこうか。


437 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:36:20 ID:ypIINElh0
2/9

とりあえず思いついた有難そうなものに感謝して、俺は電話に出た。

俺「はい、北上です」

携帯なのに思わず名乗ってしまった。

声「あー、北上。神尾だけど。今、ちょっといい?」

ちょっとじゃなくて、いくらでもいい。なんて軽口を言いそうになったが、止めておいた。
あぁ、俺、本気なんだな、と思う。
そしてなぜか正座していることに気付く。

俺「おう、平気平気。丁度暇してたとこだ」
神尾「ちょっと、お願いがあるんだけど・・・」

お願い・・・。お願いだって?
彼女が、俺にお願いしたいことがあるって?
これは夢なのか?俺は仁王様と恵比寿様に感謝した。

俺「な、何?」
神尾「あのさ、―――・・・」


438 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:40:16 ID:ypIINElh0
3/9

その日の夜。
俺は雨月と一緒に神尾さんの家に来ていた。
家には既に鮎川さんが来ており、以前行った肝試しメンバーが集まったことになる。
神尾さんの部屋は1Kのよくあるタイプ。
綺麗に片付いており、4人集まっても狭さを感じない。
そして物凄くいい香りがするのは、気のせいではないだろう。
さすが俺の天使の部屋だ。うん。俺、キモイな。
しかしこんな急展開があるなんて。さすが恵比寿様だ。
それと、俺は雨月にも感謝した。やはり持つべきものは友だ。
というのも、神尾さんのお願いはこうだった。

「古乃羽が雨月くんに興味があるみたいだから、連れてきて」

こんなやつでよかったら、どこにでも連れて行く。
しかし、鮎川さんが雨月を、ねぇ・・・。上手くいけばいいが、俺は一抹の不安を感じる。
なにしろ、雨月は・・・姉好きだ。
それに対して鮎川さんは、どちらかというと妹属性だろう。
これは中々難しそうにも思える。

439 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:45:26 ID:ypIINElh0
4/9

しかし、確か雨月の姉好きは、姉を守りたい一心から来ているようなことを、以前聞いた覚えがある。
詳しくは教えてくれなかったが、病気をしていたからだとかなんとか。
よって、鮎川さんのように見るからに守りたくなるような女の子なら、望みはあるだろう、なんてのが俺の考えだ。

集まった表向きの目的は、みんなで鍋でも囲んで・・・オカルト話でもしよう、というものだった。
9月終わりのこの季節、鍋はまだ早い気もしたが、人が集まって食べるものと言えば、鍋でしょう、と神尾さんが言っていた。無論、異議なし。
オカルト話ってのもどうなんだろう、と一瞬、ほんの一瞬だけ思ったが、鮎川さんの得意分野ってことで、これも異議なし。
間違いなく、俺は尻に敷かれるタイプだろうな。まぁ、それでもいいか。

4人が集まったところで、早速鍋を囲む。神尾さんと鮎川さんで作ったらしいが、鮎川さん曰く、「美加は食器並べていただけでしょ」と言う。
鮎川さんは他の3人に配膳をしてくれる。これは雨月にとってもポイントが高いだろう。
一方、神尾さんは男2人と同様、食べるだけの係り。いいのさ。俺はそんな神尾さんに惹かれるんだ。


440 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:53:07 ID:ypIINElh0
5/9

食事も終わり、だいぶ打ち解けてきたところで、神尾さんが、ちょっとオカルトな話があるという。

神尾「バイト先の先輩に聞いた話なんだけどね。ほら、先日××区で通り魔事件あったでしょ?」

確か、仕事帰りのサラリーマンがナイフで刺されて死亡した事件だ。
通り魔の犯行、ということで、犯人が捕まったという話はまだ聞いていない。

神尾「その事件の前から、同じ区とか、近辺の区で同様の事件が起きているのは知っているよね?どれも犯人は捕まっていないの。これらの事件には共通してることがあって、どの事件も、現場に犯行に使ったナイフが残されているの。で、そのナイフには犯人のものと思われる指紋がくっきり残っていて、どれも違う指紋だから、犯人はそれぞれ違う人物だ、って言われているわ」

そうなのだ。
そういった事件だと、犯人が同一の人物である、と報道されると、不謹慎だが少しホッとする。
全て犯人が異なっているとしたら、それだけ危険人物が多いからだ。
でも今回はまさにそれで、まったく物騒な話だ。

神尾「でもね、その指紋の話なんだけど、おかしなことがあったんだって」


441 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:58:43 ID:ypIINElh0
6/9

神尾「この前の事件と合わせて、あの地域だと4件も通り魔事件が起きていて、それぞれの被害者を、古いほうから順にA、B、C、Dさんとするね。で、この前のDさんの事件現場に残されていたナイフの指紋を照合したら、一致する人が見つかったらしいの」
俺「あ、じゃあ犯人は特定できたんだ」
神尾「うん、でもそれがね、Cさんの指紋だったらしいの」
俺「ん・・・?」

神尾「でね、それに気付いた人が、なんとなく他のナイフも調べてみたんだって。そうしたら、Cさんを刺したナイフにはBさんの、Bさんを刺したナイフにはAさんの指紋があったの」

オカルトだ。なるほど、これはオカルトな話だ。

鮎川「それ、逆じゃないの?逆なら話は分かるのだけど・・・」

確かに逆ならありえる。AさんをBさんが刺し、そのBさんをCさんが刺し・・・ならば。

神尾「私も確認したのだけど、違うんだって。指紋だけ見ると、DさんをCさんが刺し、CさんがBさんを、BさんをAさんが刺したことになるのよ」

442 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:03:35 ID:ypIINElh0
7/9

雨月「なんか、不気味な話だね・・・」
俺「本当なのかな・・・それ。ニュースでも言ってないし、そもそも指紋のことなんて、その先輩が何で知っているんだろ」
神尾「うーん、それは私も思ったのだけど、先輩の知り合いで警察の関係者がいて、その人から聞いた、って言っていたよ」

眉唾ものだが・・・まぁ、そこら辺を突っ込むのは無粋ってもんだ。

鮎川「それだとさ。じゃあ、Aさんを刺したナイフの指紋の主は誰なのかな?」

鮎川さんが疑問を投げかける。

雨月「なんか、話の感じだと・・・Dさん、とか?」
神尾「それも聞いてみた。Dさんなの?って。でも違うって。それは誰だか、まだ分からないみたい」
雨月「なんか、奇妙な連鎖が起きているとしたら、始まりはどこなのか、って大事だよね」
鮎川「そう、連鎖、よね。殺された人の怨みが、次の人を殺しているような感じ・・・」
俺「じゃあ、次はDさんの指紋がついたナイフが、誰かを・・・?」

Dさんの怨みが篭ったナイフが次の犠牲者を求めて彷徨う絵が頭に浮かび、ゾッとした。


443 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:09:23 ID:ypIINElh0
8/9

雨月「あのさ、ナイフって、全部同じ型だったりするのかな」

雨月が神尾さんに質問する。

神尾「違うみたい」
雨月「被害者の、刺された箇所とかは・・・知っている?」
神尾「えーっと・・・、Dさんはお腹に数ヶ所と、頸部だっけ。あとは知らないや。調べれば分かると思うけど」
俺「気になることでもあるのか?」
雨月「いや…ただ何となく。何か他の共通項はあるのかな、ってさ」
神尾「警察も調べているだろうけど、被害者同士の接点とか、ほとんど無いみたいね」
雨月「そっかぁ・・・」
俺「なんにせよ、物騒な事件だよな。神尾さんも鮎川さんも、気をつけてな」
神尾「親にも言われたわ。夜道の一人歩きはしばらくしないように、って」
鮎川「私も実家から電話掛かってきたな・・・」

その後は、それぞれの実家の話やらで時間が過ぎ、その会はお開きになった。
鮎川さんは神尾さんの家に泊まるらしく、俺たち男2人はそれぞれ家路についた。
もちろん、またどこか遊びに行こう、という約束を取り付けてからの帰宅だ。


444 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:13:14 ID:ypIINElh0
9/9

家に帰った俺は、先ほど話題になった事件のことを少し考えてみた。
指紋のことは確かに驚きだが、100%ありえないことではない。
何らかの形で、生前に触ったナイフが使われた、というだけのことだ。
まぁ、0.1%くらいはありえる・・・かな?

俺「ナイフか・・・」

Dの指紋が付いたナイフ。今はどこかに落ちているのか、それとも誰かの手の内にあるのか。
もしも・・・と思う。
霊感のまったく無い(と思う)俺と違って、雨月だったら、そんな怪しいナイフに遭遇した場合、何か助かる術があるのかもしれない。
鮎川さんもそうだ。彼女も廃校で何かを見た人だ。彼女も霊感持ちなのだろうか。
神尾さんは?違うだろうな。違っていて欲しい。俺と一緒であって欲しいと思う。
この4人の中で、俺と神尾さんは何も見れないし、感じることもできない。
そう思うと不安になる。ドラマや映画だと・・・真っ先に災難に遭うキャラだ。
主人公は雨月と鮎川さんの二人。

俺「ハァ・・・」

だったら、自分の身は自分で守らなければならない。
彼女・・・神尾さんも守ってやらなければ。
新たな決意に燃えた俺は、取り敢えず筋トレから始めたのだった。