392 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:46:32 ID:M8Ukg23i0
お久しぶりです。やっと退院できたっ。
主人公、変わります。
赤い枠 1/13
岡山の支部で成績1、2番を争っていたというエリート営業マンが、この小さな支店に転勤してくると聞いて、俺たちは戦々恐々となった。
のんびりした支店の空気が乱されるんじゃないか?ハードな営業方法に切り替わって、ついていけなくなった社員はリストラされるんじゃないか?
そんな噂の中、やってきた大月(おおつき)は、感じのいい、ごくごく普通の青年だった。
歳は俺より2歳下だという。
支店のやり方に慣れるまで、俺の下で活動することになった。
実はいま、俺には、頭の痛い問題が持ち上がっている。
白地世帯(営業活動をしたことのない土地)の開発目的で飛び込んだ田舎町で、1件の契約も取れていないんだ。
【飛び込み】の基本は情報収集から始まる。その世帯の構成、個人情報の取得。地域交流の有無。そういうものが受け取れて、初めてスムーズな販売交渉をすることができる。
それなのに、その田舎は態度が硬くて、特に近隣との交流関係がまったく聞き出せずにいる。
営業車に大月を乗せて向かう途中、その話をすると、大月は、「ああ、なるほど」と言った。
こいつには要因がわかるんだろうか。
393 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:47:01 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 2/13
2時間以上をかけて到着したI村は、センターラインのない市道脇の低い土地にへばりついているような限界集落だった。
年寄りが多いということは機動力がないということだ。
詳しくは書けないが、俺たちの販売する商品は、そういう家屋にこそ必要なサービスだった。
市道から車を下ろし、数反の田んぼが広がる農道に車を停める。
「村には車が入れないんですか?」と大月が聞いてくるので、「入れるよ。でも、目立ちすぎて警戒される」と俺は苦笑した。
初日、すべての家の玄関で応答を無視された俺の苦い経験談だ。
394 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:47:29 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 3/13
大月を伴って、農道の先に点在する家々を回った。
1軒めは門前払い。
2軒目は留守のようだった。
3軒め、やっと玄関が開いたので、家主の顔を見ることができた。70近いような婆さんだった。
俺が説明をしている間、婆さんは無遠慮な視線で俺たちを眺め回していた。
この雰囲気が苦手なんだよなあ…。あからさまに敵対視されてるのがわかるから。
世間話ふうに家族構成を聞きだそうとしたとき、横から大月が、「若い方が同居してるんですか?窓のサッシが赤いのってシャレてますよね」と口を挟んだ。
あ、馬鹿…。
婆さんは険しい顔になると、「気分悪くなったわ。帰れ」と、俺たちを追い出した。
「最初に言わなくて悪かったな」
俺は、交渉が破綻したきっかけを作った大月が落ち込んだだろうと思って、フォローしてやった。
だけど、大月は全然反省した様子もなく(!)、「あれに原因があるんだ」と、いまの家を振り返って観察しながら、考え込んでいる。
「他の家も見て回っていいですか?」と言うので、「…どうせ訪問するんだから、ついでに窓枠でも何でも覗けば?」と答えておいた。
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395 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:48:05 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 4/13
4軒めは留守…というより、人が住んでいないようだった。窓枠は普通の色の木枠だった。
5軒めは赤い木枠の家。その窓から爺さんの顔が覗いていたが、呼びかけても出てこなかった。
6軒めは比較的新しい総二階の家で、サッシの色はすべて赤だった。
インターホンを鳴らすと、50代ぐらいの痩せた主婦が出てきた。
俺が今回訪問したのは、いままで未訪だった家屋ばかりだ。だから、この年代の人間が村に住んでいることは初発見だった。
主婦は、「うちには必要ないけど」と、商品については笑いながら断ったが、世間話には応じてくれた。
「この村は源義経をかくまった歴史のあるところなんですって」
主婦の話に、歴史音痴の俺は、「はあ…」と答えるのが精一杯だったが、大月はこういう分野に明るいらしく、「平泉への逃避行の途中の話ですか?身近にそんな場所があるなんて、ちょっと感動ですね」と、上手く話を合わせていた。
「そうそう。実のお兄さんに追われて、最期は平泉の領主にも裏切られて死んじゃったんですってね。可哀相ねえ」
主婦は、こういう話を気軽にできる相手に飢えていたのか、楽しそうに応じる。
「義経は天才的な軍師だったので、兄の頼朝は自分を越えそうな弟を恐れたのかもしれませんね。才能は、本当は伸ばしてあげなければいけないものなんですが」と大月はまとめて、主婦に、「ところで、いまハマってる趣味なんかないですか?僕たちにはその時間を捻出するお手伝いができるんじゃないかなと思ってるんですが」と、いきなりクロージング(販売交渉で締めに入ること)をかけた。
結果。
俺はこの日、初めてI村で契約を取れた。
396 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:48:39 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 5/13
帰り道、改めて大月に、心から、「ありがとう」と言った。
営業マンならわかると思うが、契約が取れないことが自信喪失に繋がって、後々までいい影響を与えないことがある。俺はまさにそれだった。
やっとその状態が打破できたのだから、礼なんか、何べん言っても惜しくない。
「よかったですね」と、大月は驕った様子もなく、笑う。
俺もつられて笑った。なんか、こいつ、いいヤツだ。
「大月は、いつもあんなふうに知識を武器にして契約を取ってるの?」と聞くと、「んー…。契約を取ることは頭にあるけど、それ以上に雑談好きなのが、いい結果に結びついてるって感じですかねえ…」と、無欲な一面を覗かせる。
なるほど。トップにいるヤツは、案外こういう性格なのかもしれない。
「あの村、もう少し通えば、もっと顧客数取れると思うかい?」
1件の契約ですでに満足してしまった俺は、もうI村に足を運ぶモチベーションを失くしていたが、一応、大月に窺いを立ててみた。
大月は、少し考えたあと、言った。
「あの赤い窓枠…、もしかしたら、義経を保護した一族の証なんかじゃなくて、他所からI村に入り込んだ開拓民かもしれません」
「だから、窓枠の色が違う住人との交流がなくて、閉鎖的な暮らしをしていたんじゃないかな」
「開拓民の一人と契約ができたんですから、他の世帯も心を開いてくれる可能性は高いと思いますよ」
それって、つまり…。
「部落問題があったってこと?」と確認すると、大月は曖昧に笑って、「極端に閉鎖的な地域にはありがちなんですよ」と答えた。
397 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:49:05 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 6/13
会社に帰ってから、大月の話と主婦の話を合わせて考えてみた。
I村は源義経の隠れ里だったという主婦の話は、大月に言わせれば『ありえない』ことらしい。
義経は、ここからはるか北のG県を通って平泉に至った。この地方に足跡が残るわけがない、と。
余所者として冷遇されてきた赤い窓枠の住人たちが、プライドを保つために語り継いできた偽りの寓話だろう、とも。
なるほど。筋は通っている。
ただ、そうすると、主婦の話が成り立たない。
主婦は、窓枠の赤くない家屋の住人たちのことを、『隠れ住んでいた義経を、追っ手に告発しようとした一族』と呼んでいたんだ。
『あの人たちは、義経の祟りを受けて、次々と不幸に見舞われたの。いまでは村に残ってる人はいないわ』
大月の話によれば、I村での立場は、窓枠の赤い家のほうが弱いと思われる。
一方、主婦の話では、窓枠の赤くないほうが村から追い出されている。
…あの村…、本当に、窓枠の赤くない家には、人が住んでいなかったんだろうか…。
つまらない好奇心に駆られたと、我ながら苦笑する。
今夜、仕事が終わったら、もう1度I村に行ってみよう。
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398 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:49:31 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 7/13
昼間ののどかな田舎の情景と違い、闇に沈むI村は、妖怪が出てもおかしくない、おどろおどろしい雰囲気だった。
会社を出る前に、I村に行くことを大月に告げると、大月は笑いながら、「ご苦労さまです」とからかった。
だよなあ。やっぱり、俺、物好きだわ。
車は市道に路上駐車した。あまりに静かで、それ以上、エンジン音を近づかせるのは躊躇われたからだ。
昼間と同じように農道に下りて、集落の間の細い畝道を辿った。
明かりの漏れている家の窓枠は、赤。
人の気配のない家の窓は、アルミの銀や、昔ながらの木枠でできている。
本当に、赤い窓枠以外の家屋は、廃墟と化してしまったんだろうか。
初夏だというのに、空気がやたらと冷たかった。
沈丁花の重い香りが漂ってくる。
小路はますます奥深く、山に入り込んでいく。
闇の中に点々と灯る生活の証。
こんなところに住む人間に、申し訳ないけれど、恐怖を覚えた。
赤い窓枠の住人たちが、本当に他所から入り込んできたのだとしたら、なぜ好き好んで、この土地に住んだのだろう?
こんな、霊気漂う未開の地に。
399 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:49:56 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 8/13
いつのまにか、俺は山の裾野まで来ていた。
獣臭のする山道の先に、一軒、無灯火の家屋が見える。
その家の窓枠の色を確認したら、帰ろう。そう好奇心に区切りをつける。
厚い樹木の枝葉が頭上を覆う真の夜闇の中、足元に注意を集中して、目標物に近づいていった。
ときどき目を上げて確かめる家屋に、人の住んでいる気配はない。
どきん。
自分の心臓の音が、鼓膜の隣りで鳴り始めた。
掌に汗が滲んでいる。
怖い、んじゃない。やばい、んだ。
何かが住んでいる。あの家に。
引き返さないと。【見た】ら、取り返しがつかない気がする。
アルミ色の窓枠をしたその家に背を向けた瞬間、頭の中に強烈なイメージが刺し込んできた。
巨大な白羽が、家の屋根を貫く。
暖かな電灯の漏れ出た窓が、直後、大音響を立てて火を噴いた。
内部で爆発が起こったんだ。
400 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:50:19 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 9/13
俺は必死で走った。元の市道に戻るために。
後ろから、数人の悲鳴や呻き声が追いかけてくる。
『助けて!』
『置いていかないで』
『一緒に連れて行って』
思わず後ろを振り返った。
そこで、俺は、情けなくも腰を抜かした。
焼け爛れた人間の残骸が3つ、追いすがってきていた。
2つは大人、1つは子どもの大きさだ。親子だろう。
突然の爆発で焼け死んだ人たちだ、と、確信した。
その3人の後ろから。
トドメを刺すために、鬼が、巨大な鉈を振り上げながら追いかけてきた。
401 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:50:46 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 10/13
鬼は、3人の首を次々と刎ねた。
子どもの首は、俺の足元に転がってきた。
俺は膝を縮めて、白目を剥いているその首を避けた。
誰の物かわからない嗚咽が、たくさん、辺りに響く。
鬼…巨大な角の生えたマッチョなそいつは、鉈に滴る血液を舐めたあと、俺のほうに歩いてきた。
俺は逃げることもできず、笛のような呼吸音を鳴らしながら、鬼を凝視していた。
死にたくない。
心臓が痛いほど早鐘を打つ。
死にたくない!
無我夢中で、鬼に向かって胸ポケットの携帯を投げつけた。
鬼の硬い皮膚に当たって、携帯はあっさり地面に落ちる。
俺は死を覚悟して、目をつぶった。
そろそろ臨月に入る奥さんの顔が浮かんで、涙が滲んだ。
そのときだった。
鬼の足元に落ちた役立たずの携帯から、強烈な発光が起きた。
同時に着信音がけたたましく鳴る。
鬼は、光と音に責められたように、踵を返して山に帰っていった。
携帯は、鬼の姿が視界から消えるまで、その現象を持続した。
<a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/0d37346b.eda59320.0d37346c.31889af1/_RTaupb10001002" target="_blank"><img src="http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/0d37346b.eda59320.0d37346c.31889af1/709683?_RTaupb10001002" border="0" /></a>
402 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:51:18 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 11/13
俺は、腰が抜けたまま、這って携帯に辿りついた。
受話ボタンを押すと、大月の慌てた声が流れてくる。
「なかなか取らないからどうしたかと思いましたよ。大丈夫ですか?」
…なぜこいつは、このタイミングで、こんなことを言うんだ…?
「大丈夫」
短く答えて、俺は、昼間に続いて礼を言った。
「またお前に助けられた。ありがとう」
大月は、すべてを見透かしたように、「間に合ったんならよかった」と言った。
…不思議なヤツだ。
車までの行程をゆっくりと歩みながら、大月の話を電話越しに聞いた。
「オレ、今日、会社を上がったあとに、【彼女】の家に遊びに行ったんですよ」
始まりは、そんな内容だったと思う。
「オレの【彼女】、…なんていうか…、少し鋭い人で。オレを見るなり、『背中に鬼が見えるよ。人を殺すのが好きみたいだから、追い払っておくね』って言うんです」
ふだんなら信用しない話だけど、いまそれらしいモノを見たばかりの俺は冷汗をかいた。
大月は続ける。
「そんなこと言われたのは初めてだったんで、原因は昼間にI村に行ったことだろうなと思ったんです。だから、笹川さんのことが気になって」
真っ先に心配してくれたらしい。
「…お前の【彼女】に感謝するよ。今度紹介してくれ」と締めくくると、「拝観料高いですよ」と返された。
仏像かよ(笑)。
403 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:51:43 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 12/13
翌日、熱を出して欠勤した。一晩中、嫌な夢を見ていたからだ。
新築の家に越してきた親子3人が、地域の軋轢に悩んで、ガス自殺をする夢だった。
ガスの充満した家に、突然の雷が落ちた。3万ボルトの電圧が火災を誘発し、新居はあっけなく破裂した。
まだ生きていた母親と子どもは、玄関から出て助かる寸前に、爆発に巻き込まれた。
五体が吹き飛んだ遺体の様子が、目が覚めた今でも、生々しくて頭から離れない。
夜、大月に電話をした。
「サポートする立場でありながら休んで悪かったな」
謝ると、大月は、賑やかな宴席の雰囲気を背景に、「しんどかったですけど、6軒、契約を取ってきましたよ。熱が下がったら、快挙祝いしましょう」と笑った。
ろ…6軒?!ありえねえ…。
「どこで?」と聞くと、「I村です。赤枠の窓の家ばかりを訪問した成果ですよ」と言う。
「…あんな気味の悪いとこ、よく再訪したなあ」と、半ば呆れると。
大月は、いつも以上に穏やかな声で、「鬼が出る里だったにしても、あれほどの自然が残っている場所を好きにならない人はいないでしょう?」と返して来た。
404 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/11/09(日) 23:52:55 ID:M8Ukg23i0
赤い枠 13/13
………たしかにそうだ。
昨日の夜、車を停めて里に入ったとき、山の稜線が重なり合う間から、遅い三日月が顔を出した。
水を張った田んぼが月光色に染まり、野生の菜の花が淡く色を添えていた。
…しばらく…見惚れたんだ…。
こんなところを見つけて住みついた人間に、嫉妬さえ感じた。
「どんなにすばらしい環境に住んでも、人間のやることなんてドロドロしているのかもしれないが…」
開拓民と先住民との確執を【鬼と犠牲者】というイメージで具現化した俺にとって、大月の言葉は、皮肉なしには賛同できなかった。
でも。
「…でも、俺、そういう側面を持つ人間だからこそ、関わることを楽しいと思ってるなあ」
厄介だが、それが本音だ。
大月は、「オレも人間が好きですよ。だから、笹川さんも早く顔見せてください」と労ってくれた。
うん。
なんだか、大月って本当にいいヤツだ。
<a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/0d37341e.0febd75b.0d37341f.8d2dc76d/_RTaupb10001003" target="_blank"><img src="http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/0d37341e.0febd75b.0d37341f.8d2dc76d/709684?_RTaupb10001003" border="0" /></a>
374 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:48:18 ID:zm+GHQD1O
養護施設での生活も一年近くたち、夏休みまでもう少しという時期。
一年の時に忍と同じクラスで二年でクラスが変わってしまったのに積極的に忍に好意を示す女子が居た。
その女子、Uは週に何度か手作りのお菓子を昼休みに忍に差し入れに僕と忍のクラスに来ていた。
中学生という年頃なら冷やかされて当然の行動も、お菓子を学校に持って来るという行為も相手が施設の子供だからと公認されている状況だった。
特に忍は僕という問題児を見張らせされている、可哀相な奴と周囲から認識されていたせいもあるだろうけど。
昼休み、Uがいつものように忍に差し入れを持って来たが、いつもなら渡した後はすぐに自分のクラスに戻るUが何かいいたげに立ったまま戻ろうとしない。
「Uさん、どうしたの?」
優しげに声をかける忍にUは「ここじゃちょっと…」と、教室内と廊下を見回した。
「じゃあ、弁当食い終わったら体育館の裏に来て。正門側の方」
忍の言葉に頷くとUは走って自分のクラスに戻って行った。
「何、考えてんだよ?」
「別に。毎回、美味しい差し入れ貰ってるからね。そのお礼だよ、悩み事くらい聞いてやるよ」
およそ、忍に似つかわしくない言葉だったが急いで弁当を食べて、体育館裏まで行った。
375 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:49:29 ID:zm+GHQD1O
僕はシャブ中団地を見ないように壁にもたれて忍を見た。
忍はUが現れるであろう、体育館の端を見ている。
しばらくしてUが来たが、僕の存在にあからさまに残念そうな表情をした。
告白でもするつもりなら、確かに僕は邪魔だろうと立ち去ろうとしたが、忍に腕を掴まれた。
「悪いけど、俺はこいつを見張らなきゃならないから話は二人で聞くよ。それが条件」
忍の言葉にUは何かを決心したように片手に持っていたノートの間から一枚の写真を取り出し、忍に手渡した。
「この前の週末に家族で出掛けた時に撮った写真なんだけど…この私だけ写ってる写真に…」
「あー、心霊写真だね。しかも、かなり質の悪い。U、この写真撮ってから周囲に変化とかない?例えば…」
Uの言葉を遮って忍が話し出して質問の答を待たずにベタな心霊現象を羅列していき、Uがそれを一々肯定するように頷く。
「俺がお払いするよ。とりあえず、Uは今晩は眠らずに徹夜してくれる?」
頷くUを見ながら忍は無造作に写真を二つ折りにしてポケットに入れた。
「可哀相に。怖かったよな?でも、今日一晩で終わるから、絶対に眠ったら駄目だよ」
念をおす忍に頷いてUは体育館裏から離れた。
何度もこちらを振り返りながら。
376 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:51:28 ID:zm+GHQD1O
Uが去った後、忍は薄く笑ってポケットと入れていた写真を取り出した。
赤い車の横に立って笑うUの後ろにぼんやりとした人影。性別も年齢すら分からない、曖昧な人の姿。
「忍、お払いするなんて言ってたけど出来るのか?安請け合いしてどうすんだよ?」
「夏休み前の暇潰しだよ」
笑いながら忍は写真を指で弾いて再びポケットにしまい込んだ。
その日の下校途中。
通学路の途中に地蔵を奉った祠があり、時折お年寄りが熱心に掃除したり、お供えをしているのを見かける、そこで忍は写真を取り出して置いてあったマッチと蝋燭を使い燃やした。
淡々とした行動で燃えかすを線香の灰に掻き交ぜ、目を閉じて何かを祈る様子。
少しして、ぱっと目を開けると「帰ろう」と促された。ひどく楽しそうな口調で。
帰り道、どんなに聞いてもお払いについての返事は返って来なかった。
そして、その日の夕食から忍はまた食事を取る事をぎりぎりまで減らしだした。
以前も、忍が食事をしなくなった時があるが、今回はUを助けるつもりなんだろう、忍にも他人を思いやる気持ちがあるんだと安心していた。
Uは二年の中でも可愛い部類に入る女の子だし、もしかして忍もUが好きなのかと考えていた。
<a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/0d37331c.68d1540a.0d37331d.57ae475f/_RTaupb10000001" target="_blank"><img src="http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/0d37331c.68d1540a.0d37331d.57ae475f/709676?_RTaupb10000001" border="0" /></a>
377 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:52:31 ID:zm+GHQD1O
次の日の朝、登校するやいなや忍はUのクラスに僕をともなって行った。
手招きしてUを呼び出す。徹夜のせいか疲れた顔のU。
「大事な話があるから、昼休みにあの場所に」
それだけ言って忍は僕達のクラスに戻った。
昼休み、僕を急かして弁当を食わせると忍は自分の弁当の中身をそのまま、ごみ箱にひっくり返す。
その勢いのまま、体育館裏まで行った。昼食を抜いたのか、Uの方が先に来ていた。
「昨日、お払いをしたけど失敗したかも知れない」
神妙な面持ちで忍はUに告げた。複雑な表情のU。忍は続ける。
「お払いが完璧に終わるまでは夜、眠らないでいて欲しい。日が昇ったら寝ても構わないから」
夏日だから太陽が昇るのは早い。仮眠程度なら取れるだろうが、はっきりした期限のない忍の指示に明らかにUは困惑していた。
「昨夜は身の回りに異常は無かった?例えば…」
忍の言う例えにUが答える。深夜に物音が聞こえて怖かったと。
「お払いが済むまではこれからもこういう事が続くよ。俺にも跳ね返って来た。ほら」
忍は左手の内側をUに見せた。半円状に膨らんだ皮膚を見て、初めてUは怯えた表情を見せた。
「大丈夫。悪い事は全て俺が引き受けるようにする。Uは毎日、昼休みになったらここに来てくれたらいい」
Uは忍の腕から目を離さないまま、頷いた。
378 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:53:58 ID:zm+GHQD1O
Uが去った後、僕は忍に詰め寄った。忍のお払いとやらの跳ね返りは自演だからだ。
「面白くなるよ、これから。お前は先に戻ってて。俺はこれ戻してから」
僕の質問には何一つ答えずに笑いながら忍はトイレに行ってしまった。
それから、食事を抜いて目に見えて痩せていく忍と極端に睡眠を減らされて疲れていくUと過ごす昼休みが続いた。
綺麗な黒髪だったUは髪の艶も失い、ただ忍の言う事に従っていた。
可愛いらしさも消え、昼の光の下でさえ、Uは些細な音や自分の影に怯えと緊張をあらわにしていた。
「夜、誰もいないはずなのに窓の向こうから声が聞こえるの…。カーテンを開けて確認したいけど、怖くて出来ない…」
力のないUの言葉。
「あれは悪いモノだから見ちゃいけない。Uは夜、起きている間に布団の中に何かが居ても気付かないフリをしていたらいい」
安心させるような口調で忍が答える。
僕は忍がUに暗示をかけて悪い方に誘導しているようにしか見えなかった。
「U、怖い事なんて何も無い。忍の言う事はでたらめだから…」
思わず、口をついて出た言葉はUのか細い声が遮った。
「違う、違うよ…本当になったの…」
そのまま夏休みに入り、僕達はUに会う機会を無くした。
379 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:55:06 ID:zm+GHQD1O
夏休みに入った途端、忍は普段とかわりなく食事を取るようになった。
「お払いするために、食わないんじゃなかったのか?」
「もう、Uと会う事もないだろうからいいんだよ」
笑いを含んだ忍の返事。
「Uの持って来た写真。あれ、合成したインチキだよ。やった本人が一番よく分かってるはずだけどな」
「Uが忍をからかうために?でも、あんなに怖がってたじゃないか?」
Uが自分で作った心霊写真なら、怖がる必要も無いし、むしろ忍に構って貰えて喜ぶはずだろう。
「だから、俺が本物にした。地蔵に捧げられた他人の悪意をUに向けるように願って」
忍は心底、楽しそうだった。
「最初は俺の暗示だったけどな。俺は睡眠を減らして思考を止めさせてやっただけ。後はUが自分の想像に怯えて、その恐怖心に付け込む奴らがあらわれる。それにまたUが怯えて…Uは俺が質問した以外の経験を話してただろ?あれからは本物だよ」
長い夏休みが終わって二学期が始まってもUが登校して来る事は無く、そのまま転校という形で二度と会う事は無かった。
忍の言う通りに。
<a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/0d3733bb.0ebabe76.0d3733bc.c1986775/_RTaupb10000002" target="_blank"><img src="http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/0d3733bb.0ebabe76.0d3733bc.c1986775/709677?_RTaupb10000002" border="0" /></a>
養護施設での生活も一年近くたち、夏休みまでもう少しという時期。
一年の時に忍と同じクラスで二年でクラスが変わってしまったのに積極的に忍に好意を示す女子が居た。
その女子、Uは週に何度か手作りのお菓子を昼休みに忍に差し入れに僕と忍のクラスに来ていた。
中学生という年頃なら冷やかされて当然の行動も、お菓子を学校に持って来るという行為も相手が施設の子供だからと公認されている状況だった。
特に忍は僕という問題児を見張らせされている、可哀相な奴と周囲から認識されていたせいもあるだろうけど。
昼休み、Uがいつものように忍に差し入れを持って来たが、いつもなら渡した後はすぐに自分のクラスに戻るUが何かいいたげに立ったまま戻ろうとしない。
「Uさん、どうしたの?」
優しげに声をかける忍にUは「ここじゃちょっと…」と、教室内と廊下を見回した。
「じゃあ、弁当食い終わったら体育館の裏に来て。正門側の方」
忍の言葉に頷くとUは走って自分のクラスに戻って行った。
「何、考えてんだよ?」
「別に。毎回、美味しい差し入れ貰ってるからね。そのお礼だよ、悩み事くらい聞いてやるよ」
およそ、忍に似つかわしくない言葉だったが急いで弁当を食べて、体育館裏まで行った。
375 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:49:29 ID:zm+GHQD1O
僕はシャブ中団地を見ないように壁にもたれて忍を見た。
忍はUが現れるであろう、体育館の端を見ている。
しばらくしてUが来たが、僕の存在にあからさまに残念そうな表情をした。
告白でもするつもりなら、確かに僕は邪魔だろうと立ち去ろうとしたが、忍に腕を掴まれた。
「悪いけど、俺はこいつを見張らなきゃならないから話は二人で聞くよ。それが条件」
忍の言葉にUは何かを決心したように片手に持っていたノートの間から一枚の写真を取り出し、忍に手渡した。
「この前の週末に家族で出掛けた時に撮った写真なんだけど…この私だけ写ってる写真に…」
「あー、心霊写真だね。しかも、かなり質の悪い。U、この写真撮ってから周囲に変化とかない?例えば…」
Uの言葉を遮って忍が話し出して質問の答を待たずにベタな心霊現象を羅列していき、Uがそれを一々肯定するように頷く。
「俺がお払いするよ。とりあえず、Uは今晩は眠らずに徹夜してくれる?」
頷くUを見ながら忍は無造作に写真を二つ折りにしてポケットに入れた。
「可哀相に。怖かったよな?でも、今日一晩で終わるから、絶対に眠ったら駄目だよ」
念をおす忍に頷いてUは体育館裏から離れた。
何度もこちらを振り返りながら。
376 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:51:28 ID:zm+GHQD1O
Uが去った後、忍は薄く笑ってポケットと入れていた写真を取り出した。
赤い車の横に立って笑うUの後ろにぼんやりとした人影。性別も年齢すら分からない、曖昧な人の姿。
「忍、お払いするなんて言ってたけど出来るのか?安請け合いしてどうすんだよ?」
「夏休み前の暇潰しだよ」
笑いながら忍は写真を指で弾いて再びポケットにしまい込んだ。
その日の下校途中。
通学路の途中に地蔵を奉った祠があり、時折お年寄りが熱心に掃除したり、お供えをしているのを見かける、そこで忍は写真を取り出して置いてあったマッチと蝋燭を使い燃やした。
淡々とした行動で燃えかすを線香の灰に掻き交ぜ、目を閉じて何かを祈る様子。
少しして、ぱっと目を開けると「帰ろう」と促された。ひどく楽しそうな口調で。
帰り道、どんなに聞いてもお払いについての返事は返って来なかった。
そして、その日の夕食から忍はまた食事を取る事をぎりぎりまで減らしだした。
以前も、忍が食事をしなくなった時があるが、今回はUを助けるつもりなんだろう、忍にも他人を思いやる気持ちがあるんだと安心していた。
Uは二年の中でも可愛い部類に入る女の子だし、もしかして忍もUが好きなのかと考えていた。
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377 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:52:31 ID:zm+GHQD1O
次の日の朝、登校するやいなや忍はUのクラスに僕をともなって行った。
手招きしてUを呼び出す。徹夜のせいか疲れた顔のU。
「大事な話があるから、昼休みにあの場所に」
それだけ言って忍は僕達のクラスに戻った。
昼休み、僕を急かして弁当を食わせると忍は自分の弁当の中身をそのまま、ごみ箱にひっくり返す。
その勢いのまま、体育館裏まで行った。昼食を抜いたのか、Uの方が先に来ていた。
「昨日、お払いをしたけど失敗したかも知れない」
神妙な面持ちで忍はUに告げた。複雑な表情のU。忍は続ける。
「お払いが完璧に終わるまでは夜、眠らないでいて欲しい。日が昇ったら寝ても構わないから」
夏日だから太陽が昇るのは早い。仮眠程度なら取れるだろうが、はっきりした期限のない忍の指示に明らかにUは困惑していた。
「昨夜は身の回りに異常は無かった?例えば…」
忍の言う例えにUが答える。深夜に物音が聞こえて怖かったと。
「お払いが済むまではこれからもこういう事が続くよ。俺にも跳ね返って来た。ほら」
忍は左手の内側をUに見せた。半円状に膨らんだ皮膚を見て、初めてUは怯えた表情を見せた。
「大丈夫。悪い事は全て俺が引き受けるようにする。Uは毎日、昼休みになったらここに来てくれたらいい」
Uは忍の腕から目を離さないまま、頷いた。
378 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:53:58 ID:zm+GHQD1O
Uが去った後、僕は忍に詰め寄った。忍のお払いとやらの跳ね返りは自演だからだ。
「面白くなるよ、これから。お前は先に戻ってて。俺はこれ戻してから」
僕の質問には何一つ答えずに笑いながら忍はトイレに行ってしまった。
それから、食事を抜いて目に見えて痩せていく忍と極端に睡眠を減らされて疲れていくUと過ごす昼休みが続いた。
綺麗な黒髪だったUは髪の艶も失い、ただ忍の言う事に従っていた。
可愛いらしさも消え、昼の光の下でさえ、Uは些細な音や自分の影に怯えと緊張をあらわにしていた。
「夜、誰もいないはずなのに窓の向こうから声が聞こえるの…。カーテンを開けて確認したいけど、怖くて出来ない…」
力のないUの言葉。
「あれは悪いモノだから見ちゃいけない。Uは夜、起きている間に布団の中に何かが居ても気付かないフリをしていたらいい」
安心させるような口調で忍が答える。
僕は忍がUに暗示をかけて悪い方に誘導しているようにしか見えなかった。
「U、怖い事なんて何も無い。忍の言う事はでたらめだから…」
思わず、口をついて出た言葉はUのか細い声が遮った。
「違う、違うよ…本当になったの…」
そのまま夏休みに入り、僕達はUに会う機会を無くした。
379 : ◆DJINKbmZw2 :2008/11/09(日) 11:55:06 ID:zm+GHQD1O
夏休みに入った途端、忍は普段とかわりなく食事を取るようになった。
「お払いするために、食わないんじゃなかったのか?」
「もう、Uと会う事もないだろうからいいんだよ」
笑いを含んだ忍の返事。
「Uの持って来た写真。あれ、合成したインチキだよ。やった本人が一番よく分かってるはずだけどな」
「Uが忍をからかうために?でも、あんなに怖がってたじゃないか?」
Uが自分で作った心霊写真なら、怖がる必要も無いし、むしろ忍に構って貰えて喜ぶはずだろう。
「だから、俺が本物にした。地蔵に捧げられた他人の悪意をUに向けるように願って」
忍は心底、楽しそうだった。
「最初は俺の暗示だったけどな。俺は睡眠を減らして思考を止めさせてやっただけ。後はUが自分の想像に怯えて、その恐怖心に付け込む奴らがあらわれる。それにまたUが怯えて…Uは俺が質問した以外の経験を話してただろ?あれからは本物だよ」
長い夏休みが終わって二学期が始まってもUが登校して来る事は無く、そのまま転校という形で二度と会う事は無かった。
忍の言う通りに。
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899 長いです、つまらないです。1/7 sage 2008/10/24(金) 01:12:44 ID:pBYxjNQU0
業者に頼むと高いから。
友人の引越しを手伝う為、俺は親父にトラックを借りた。
でもね、運ぶ荷物がやけに少ないのよ。
服と布団、歯ブラシやら簡単な雑貨とテレビだけ。ちょっと不思議に思ってたら、「初めての一人暮らしだから、他はまとめて買いに行くんだ」との事。
ああ、なるほど。で、買いに行くのは当然・・・?
「うん、付き合ってね」
やっぱりね。ただ、その日はもう夕方だったし、なにより引越しで疲れてたから明日、買い物に行くって約束をして別れた。
次の日、一緒に買い物に行ったんだけど、またちょっと不思議に思う事があった。
そいつさ、何て言うか、悪い意味じゃなく「こだわりがない奴」でさ、デザインとかどうでもいいから一番安いのってタイプ。
なのにその日はやたら色とか気にするの、しかも一色「スカイブルー」
結局、冷蔵庫から洗濯機、箪笥からテーブルまで、もう何から何までスカイブルー。唯一、カーペットだけ赤。
アパートに戻って、買った物を部屋に運んでる時に聞いてみた。
「お前さ、この色好きなん?」
「え? いや、そう言う訳じゃないけど・・・、変かな?」
「そんなことないけどさ、なんとなく聞いただけ」
まあ、そこまで不思議に思う事はないかと思い、少し話して俺は帰った。
900 長いです、つまらないです。2/7 sage 2008/10/24(金) 01:13:27 ID:pBYxjNQU0
ある日、その友人から電話が来た。
「空き巣にやられた!!」
「マジでか!? で、何とられたんだ?」
「それがさ、テレビ」
「・・・、それだけ?」
「うん、それだけ」
おかしいと思った、だってそいつの言うテレビは14型のブラウン管。どう考えても値打ちがない。
「で、警察には電話した?」
「いやー、どうしようか迷ってた。テレビだけだし、何か大事にしたくないし・・・」
「でも一応した方がいいんじゃない?」
「うーん、いや、いいや」
「・・・そう、まあテレビなら使ってないのあるから持ってってやるよ」
「マジで!? やった! サンキュー!」
テレビを届けた帰り、アパートのゴミ捨て場で俺は見た。
盗まれたテレビを。
901 長いです、つまらないです。3/7 sage 2008/10/24(金) 01:14:15 ID:pBYxjNQU0
ある日、その友人から電話が来た。
「また空き巣にやられた!!」
「・・・まさか、またテレビだけとか?」
「お、よく分かったね。そう、テレビだけなんだ」
なにか、嫌な感じがした。
「警察には?」
「警察なんか何の役にも立たないよ!!!!!!!!!」
「!? と、とりあえず落ち着けよ」
「ご、ごめん。でもなんか怖いよ、二度も、しかもテレビだけなんて・・・」
「俺、今から行くわ」
「え、うん。分かった」
なにか、すごく嫌な感じがした。
向かう途中、アパートのゴミ捨て場で俺は見た。
俺があげたテレビを。
902 長いです、つまらないです。4/7 sage 2008/10/24(金) 01:15:05 ID:pBYxjNQU0
部屋に入り詳しく話を聞く。
「戸締りは?」
「絶対した、忘れるはずがない!!!」
「そ、そう・・、じゃあ、どうやって入ったんだろうな」
「だよねぇ・・・」
窓は割れていない。帰宅した時、鍵は掛かっていたと言う。荒らされた様子もない。ただ、テレビだけがない。
実際、テレビがどこにいったのかを俺は知っている。
思えば、最初にゴミ捨て場で見た時点でこいつに言うのが普通だ。でも、何故か、言えなかった。
「なぁ、もしかしてさ、前の住人かもよ?」
「ん? どうして?」
「前の住人がスペアキーを持ってたとして、もし、大家さんが鍵を付け替えてなかったら・・・」
「・・・、なるほど」
「まずさ、大家さんに聞きに行かない?」
このアパートの大家は一階に住んでいる。しかもこの部屋のちょうど真下。
呼び鈴を鳴らし、出てきた大家に事情を話した。
「・・・と、こういう訳なんですが」
「うーん、困ったねぇ」
「で、ですね、鍵のほうは交換しましたか?」
「あ、当たり前じゃないですか!!!!! 変えないはずがないでしょう!!」
大家とのやりとりで、俺は何かに近づいた気がした。
<a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/0d37372e.9d8573f4.0d37372f.0fdfdf0c/_RTaupb10007001" target="_blank"><img src="http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/0d37372e.9d8573f4.0d37372f.0fdfdf0c/709718?_RTaupb10007001" border="0" /></a>
903 長いです、つまらないです。5/7 sage 2008/10/24(金) 01:15:39 ID:pBYxjNQU0
「一応、部屋の方を見に来てくれませんか?」
提案した。
全てが分かる、そんな気がした。
友人の部屋の前、ドアを開けた瞬間、大家の顔。やっぱり。
「あの・・・、私、知り合いの物件があるんですよ。いいですよ、そこ。で、どうですか? そこに部屋変えすると言うのは・・・?あああ、もちろん敷金とか要らないです。引越しの費用とか、そういうの全部私が持ちます」
大家の言葉、この部屋には何かある。
「こう言ってる事だし、引越した方がよくない?」
「だね、そうするよ」
これで全て解決だ。
恐らく、きっと、絶対に、この部屋には良くない「もの」がいる。
だからこそ大丈夫。
引越せば大丈夫。
904 長いです、つまらないです。6/7 sage 2008/10/24(金) 01:16:13 ID:pBYxjNQU0
引越し当日。
荷物を積み終わり、大家に挨拶を済ませ、後はアクセルを踏むだけ。
友達を助手席に残し俺は戻った、大家の部屋に。
何かがひっかかっていた、やはり事実を確認したい。そんな思いで呼び鈴を鳴らす。
「あの、すみません」
「ああ、どうも」
「言いにくいんですが、その、前の住人は、亡くなった・・・んですよね?」
「・・・・・・・ああ」
終わろう。もう大丈夫。友人はもう、大丈夫。引越すから。
「本当にビックリしたよ・・・」
続く大家の言葉に愕然とした。
「もう、同じなんだよ。全部、何もかも。家具の配置、一面に広がる水色、血に染まった絨毯。警察の方に言われて鍵を開けたその後、その光景そのものだった」
まて、ちょっとまって。
一面に? 血に染まった?
「あの娘、言ってたんだよ。最近、変な男に付きまとわれてるって。警察は何もしてくれないって」
頭の中で、友人の行動、言動が駆け巡った。
905 長いです、つまらないです。終わりです。 sage 2008/10/24(金) 01:17:09 ID:pBYxjNQU0
訳が分からない。いや、分かりたくない。
ストーカー殺人? そんな事件があったのなら普通より大きなニュースになってるはず。近所なら、なおさら知らないはずがない。
「警察の方がね、『これは強盗の仕業です。間違いありません』って言ってたけど、やっぱりあれかねぇ・・・」
・・・・・・・・・・・・。
トラックに乗り、助手席の友人に言った。
「そういやテレビ、余ってるのもう一台あったよ。色は、スカイブルー」
友人は言った。
「・・・あり、が、とう」
これから、ゆっくり、解決していこうね。
大丈夫、なんとかなるよ。なんとかするよ。友達だろ?
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業者に頼むと高いから。
友人の引越しを手伝う為、俺は親父にトラックを借りた。
でもね、運ぶ荷物がやけに少ないのよ。
服と布団、歯ブラシやら簡単な雑貨とテレビだけ。ちょっと不思議に思ってたら、「初めての一人暮らしだから、他はまとめて買いに行くんだ」との事。
ああ、なるほど。で、買いに行くのは当然・・・?
「うん、付き合ってね」
やっぱりね。ただ、その日はもう夕方だったし、なにより引越しで疲れてたから明日、買い物に行くって約束をして別れた。
次の日、一緒に買い物に行ったんだけど、またちょっと不思議に思う事があった。
そいつさ、何て言うか、悪い意味じゃなく「こだわりがない奴」でさ、デザインとかどうでもいいから一番安いのってタイプ。
なのにその日はやたら色とか気にするの、しかも一色「スカイブルー」
結局、冷蔵庫から洗濯機、箪笥からテーブルまで、もう何から何までスカイブルー。唯一、カーペットだけ赤。
アパートに戻って、買った物を部屋に運んでる時に聞いてみた。
「お前さ、この色好きなん?」
「え? いや、そう言う訳じゃないけど・・・、変かな?」
「そんなことないけどさ、なんとなく聞いただけ」
まあ、そこまで不思議に思う事はないかと思い、少し話して俺は帰った。
900 長いです、つまらないです。2/7 sage 2008/10/24(金) 01:13:27 ID:pBYxjNQU0
ある日、その友人から電話が来た。
「空き巣にやられた!!」
「マジでか!? で、何とられたんだ?」
「それがさ、テレビ」
「・・・、それだけ?」
「うん、それだけ」
おかしいと思った、だってそいつの言うテレビは14型のブラウン管。どう考えても値打ちがない。
「で、警察には電話した?」
「いやー、どうしようか迷ってた。テレビだけだし、何か大事にしたくないし・・・」
「でも一応した方がいいんじゃない?」
「うーん、いや、いいや」
「・・・そう、まあテレビなら使ってないのあるから持ってってやるよ」
「マジで!? やった! サンキュー!」
テレビを届けた帰り、アパートのゴミ捨て場で俺は見た。
盗まれたテレビを。
901 長いです、つまらないです。3/7 sage 2008/10/24(金) 01:14:15 ID:pBYxjNQU0
ある日、その友人から電話が来た。
「また空き巣にやられた!!」
「・・・まさか、またテレビだけとか?」
「お、よく分かったね。そう、テレビだけなんだ」
なにか、嫌な感じがした。
「警察には?」
「警察なんか何の役にも立たないよ!!!!!!!!!」
「!? と、とりあえず落ち着けよ」
「ご、ごめん。でもなんか怖いよ、二度も、しかもテレビだけなんて・・・」
「俺、今から行くわ」
「え、うん。分かった」
なにか、すごく嫌な感じがした。
向かう途中、アパートのゴミ捨て場で俺は見た。
俺があげたテレビを。
902 長いです、つまらないです。4/7 sage 2008/10/24(金) 01:15:05 ID:pBYxjNQU0
部屋に入り詳しく話を聞く。
「戸締りは?」
「絶対した、忘れるはずがない!!!」
「そ、そう・・、じゃあ、どうやって入ったんだろうな」
「だよねぇ・・・」
窓は割れていない。帰宅した時、鍵は掛かっていたと言う。荒らされた様子もない。ただ、テレビだけがない。
実際、テレビがどこにいったのかを俺は知っている。
思えば、最初にゴミ捨て場で見た時点でこいつに言うのが普通だ。でも、何故か、言えなかった。
「なぁ、もしかしてさ、前の住人かもよ?」
「ん? どうして?」
「前の住人がスペアキーを持ってたとして、もし、大家さんが鍵を付け替えてなかったら・・・」
「・・・、なるほど」
「まずさ、大家さんに聞きに行かない?」
このアパートの大家は一階に住んでいる。しかもこの部屋のちょうど真下。
呼び鈴を鳴らし、出てきた大家に事情を話した。
「・・・と、こういう訳なんですが」
「うーん、困ったねぇ」
「で、ですね、鍵のほうは交換しましたか?」
「あ、当たり前じゃないですか!!!!! 変えないはずがないでしょう!!」
大家とのやりとりで、俺は何かに近づいた気がした。
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903 長いです、つまらないです。5/7 sage 2008/10/24(金) 01:15:39 ID:pBYxjNQU0
「一応、部屋の方を見に来てくれませんか?」
提案した。
全てが分かる、そんな気がした。
友人の部屋の前、ドアを開けた瞬間、大家の顔。やっぱり。
「あの・・・、私、知り合いの物件があるんですよ。いいですよ、そこ。で、どうですか? そこに部屋変えすると言うのは・・・?あああ、もちろん敷金とか要らないです。引越しの費用とか、そういうの全部私が持ちます」
大家の言葉、この部屋には何かある。
「こう言ってる事だし、引越した方がよくない?」
「だね、そうするよ」
これで全て解決だ。
恐らく、きっと、絶対に、この部屋には良くない「もの」がいる。
だからこそ大丈夫。
引越せば大丈夫。
904 長いです、つまらないです。6/7 sage 2008/10/24(金) 01:16:13 ID:pBYxjNQU0
引越し当日。
荷物を積み終わり、大家に挨拶を済ませ、後はアクセルを踏むだけ。
友達を助手席に残し俺は戻った、大家の部屋に。
何かがひっかかっていた、やはり事実を確認したい。そんな思いで呼び鈴を鳴らす。
「あの、すみません」
「ああ、どうも」
「言いにくいんですが、その、前の住人は、亡くなった・・・んですよね?」
「・・・・・・・ああ」
終わろう。もう大丈夫。友人はもう、大丈夫。引越すから。
「本当にビックリしたよ・・・」
続く大家の言葉に愕然とした。
「もう、同じなんだよ。全部、何もかも。家具の配置、一面に広がる水色、血に染まった絨毯。警察の方に言われて鍵を開けたその後、その光景そのものだった」
まて、ちょっとまって。
一面に? 血に染まった?
「あの娘、言ってたんだよ。最近、変な男に付きまとわれてるって。警察は何もしてくれないって」
頭の中で、友人の行動、言動が駆け巡った。
905 長いです、つまらないです。終わりです。 sage 2008/10/24(金) 01:17:09 ID:pBYxjNQU0
訳が分からない。いや、分かりたくない。
ストーカー殺人? そんな事件があったのなら普通より大きなニュースになってるはず。近所なら、なおさら知らないはずがない。
「警察の方がね、『これは強盗の仕業です。間違いありません』って言ってたけど、やっぱりあれかねぇ・・・」
・・・・・・・・・・・・。
トラックに乗り、助手席の友人に言った。
「そういやテレビ、余ってるのもう一台あったよ。色は、スカイブルー」
友人は言った。
「・・・あり、が、とう」
これから、ゆっくり、解決していこうね。
大丈夫、なんとかなるよ。なんとかするよ。友達だろ?
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