繁岡シゲヲの『非常時にすいません、非常口はどちらですか?』 -18ページ目
仕事中、数年前に出会った女を思い出したので忘れないようにツイッターに「500円女の話をブログに書く」と下書きを残した話です。


何年前だったでしょうか。夏と冬の間の少し暖かい日だったと記憶しています。

仕事でお客さんの家に向かう途中の事でした。

「す、すいません!」

初めは自分に投げ掛けられた言葉とは気付きませんでした。
声のした方を見るとうつ向き加減で恥ずかしそうに女性が立っていました。

黒髪に眼鏡。地味な服。
お世辞にも美人とは言えない女性。

「え?はい。え?」

突然の事にやっと出た言葉がこれでした。


二人のはじめての会話は掴みどころのない空を切るようなあっけらかんとしたものでした。



そして沈黙を破ったのは彼女の方でした。

「あの…。今日、友達と遊びに来てて…」


「…。はぁ…」


「プリクラを撮ったんです!」


「…。はい」


「で、そのあと友達に電車賃取られて…。帰れないんです」


「…。」


「250円なんですけど、貸していただけませんか!?」



あいにく僕は小銭が500円玉しかありませんでした。千円札を見ず知らずの女に渡すのはさすがに気が引けます。

気持ち悪い女だな。
なんなんだよ。
なんで俺に声かけたんだよ。



都会で長く生活されている方ならこの話を読んで「無視すればいいのに」と思うかも知れません。

しかしこの現場は地方都市岡山なのです。
イオンから少し路地を入った生活道路での出来事なのです。
無視など誰ができましょうか。


仕方なく500円玉を渡しました。


「ありがとうございます!あの!じゅ、住所を教えてください!必ずお返しします!」

なんで住所教えないとダメなんだよ。


「や、いいです」


僕は足早にその場を離れました。
気持ち悪かったから。

背中にはその女の「本当に…、本当にありがとうございます…。」という視線を感じました。


そしてお客さんの家に行き商談を済ませ、近くのスーパーの前を通りかかったとき思いもよらぬ光景を目にしました。
ガラス張りのスーパーのフードコートでさっきの女が工場の作業服を着た男と弁当を食べていたのです。


思わず笑ってしまいました。


人の好意をなんだと思ってるんだ気持ち悪い女だな。


男も気持ち悪いな。
眼鏡かけてやがる。
ぼうし被ってるし。

気持ち悪いな。
ほんと気持ち悪い。

糞が。


こうして500円の重さと、やんわりとしたカツアゲにあった事実を受け止めた日の話を終わります。


女には気を付けて下さい。
おやすみなさい。