本『年上の女性』をはじめから読む → scene1

「雨、降るって言ってましたっけ?」

首を横に振る私。

「天気予報も、当たらないな」

俯いたままの私は、動かない。

「濡れてますよ。こっち、入ったらどうですか?」

それでも、俯いたままの私は動かない。

彼は、私の手を取り、屋根の下に、入れてくれる。


「もう、雨大丈夫ですよ」

傘を畳まない私。


手を離さない彼。

しばらく、黙った二人・・

彼が手を離そうとして、

今度は私が、彼の手を離さない。

私の手に力が入る。

ぎゅっと、ぎゅっと、力が入る。


彼は待っていてくれる。

いつも。いつも。



私の眼から堪らず、涙が溢れる。


「歩太くんがね・・

あの、おだんごの女の子と笑っているのを見て、

お似合いだと思ったの」


泣きながら、言う。


「紗耶香がね、歩太くんの気持ちがこれから、いつ変わるかわからないって言うの」


子どもみたい。


「お母さんがね、愛だの恋だのだけじゃダメって言うの」


みっともない。


「テレビでね、男は、若い子が好きだって言うの」


でも、止まらない。


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