本『年上の女性』をはじめから読む → scene1


それから、私たちは、以前のように、

メールをして、電話をして、食事に行って。

勿論、私は店にも行く。

けれど・・

このままの関係が、

いつまでも続くわけがない。

わかっている。

わかっている。

わかっているのに。

私は、彼に会い続ける。

好きじゃないよと、いい続ける。




最近の彼は落ち着かない。

ずっと、予感している。

この関係が動き出すことを。


そして、いつかそうなるんじゃないかと、

期待して

恐れている。




その日、

いつものように、マンションの前まで送ってくれる彼。

綺麗な瞳が、真っ直ぐ、私に向かっている。

「洋子さん、俺と付き合って下さい」



嬉しい。

でも、駄目だ。

下を向いた私は、目をつぶった。

何かを考えていただろうか。

よく覚えていない。

ただ、この告白を受けるまでに、

ずっと考えていた。



私は歩太くんより10歳も上。

言わなければ。



顔を上げて、歩太くんの顔を見る。

マンションの明かりが顔を薄暗く映す。

彼の頬が紅潮しているのがわかる。

斜め下に視線を落とし、私は言う。

「私、歩太くんよりだいぶ歳上だよ」

目線を上げ、薄く笑い私は続ける。「もう30歳なんだよ」

歩太くんは「嫌ですか?」とすぐに言った。

「え?」すぐの返事に理解出来ない。

「洋子さんは嫌ですか?」

私の名前をつけて、もう一度、彼は言う。

「いや・・私は・・」

ドキドキが高鳴る。





「年齢とか関係ない。

俺は今の・・そのままの、

洋子さんが好きで・・だから・・!!」



一気に言う。

そして、彼は続ける。

「頼りないと思うかもしれないけど・・

でも、俺!あなたが好きで。

だから、その、

あなたを守りたい。

もっと強くなります!!

だから・・」



どこかで、そう言ってくれるんじゃないかと思っていた。

期待というか願望というか。

でも、そんな自分が恥ずかしくて、

情けなくって、

そして、それを裏切られた時、

傷付くのが恐かった。

だから、そんな想い、

見ないようにしていた。



彼の誠実さが伝わってくる。

でも、もう決めていた。

変えられない。

変える勇気は・・

ない。

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