本『年上の女性』をはじめから読む → scene1

蓋が外れて、一気に飛び出す。

私は、子どものように泣いている。


「俺は、俺だから・・。

だから、俺を信じて下さい。」

顔を上げて、彼を見る。

あの、真っ直ぐな眼で、私を見返している。

「不安になれば、なんでも言って下さい」

彼はいつも、ストレートに気持ちをくれる。


「私・・私・・」

今度は、私の番。

勇気を出して。私。


歩太くんの手に、力が入る。

ぎゅっと、ぎゅっと、力が入る。

でも、優しく。



「歩太くんが好き」


言った瞬間、彼は、私を抱き寄せた。


その拍子に、傘が転がる。


「俺も好き」


私は、再び泣き出した。


「ごめんなさい。いつも、待たせて」

「うん」

「ありがとう。いつも、待っていてくれて」

「うん」


彼の腕に力が入る。



彼の腕の中で、もう一度、小さく「好き」と言った。

やっと言えた。

彼は私の顔を覗き込もうとしてきたので、

私は彼の胸に顔を隠す。



近くの自動販売機の明かりで私の顔が照らし出される。

すっぴんでしかも髪までぐちゃぐちゃ。

見せるのは恥ずかしい。

近くで見るとシミだらけだし。

「すっぴんだから」

「見たい。どんな洋子さんも好きだから」

今の私、ありのままの私を好きでいてくれる。

人を好きになるということは、

ありのままのその人を受け入れるということ。

彼に教えてもらった。

私の頬を彼は両手で包み込む。

こんなに大きな手をしてたんだ。

「かわいい」そう言ってくれる彼に照れ笑いをする私。

「それ、その顔。初めて会った時、その笑顔に惚れたんだ」

感じていた。最初から。

彼の視線に意味があったことを。

そして自分の心が動いたことを。

もう一度彼の胸に顔を埋める。

後悔はしない。歩太くんが好き。

「これから、ずっと、ずーと一緒にいようね」

今付き合ったばかりなのに、随分、未来の約束をする彼。

若いな・・そう思った自分に、やっぱり呆れた。




年上の女性・・END

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