あれは小学六年生ぐらいの頃だったと思います。
弟は3つ下。
2人でよく遊んでいて、その日は2人で町内をマラソンしようと走りに出かけました。
家まで後数百メートル。
見通しの悪いカーブを、向こう側へ渡ろうと、車が来ない事を確認する為に私は右を向きました。
右を確認し終え、左を向いたその時でした。
弟がいきなり道路を駆け足で走って行く姿が目に入りました。
間も無く…大きな音と共に弟がバイクと接触。そのままガードレールに突っ込む光景がスローモーションで広がっていったのです。
私は何が起きたのか分からないまま、血まみれの弟に駆け寄り頭から流れる血を手で押さえ、必死に救急車を呼んで下さいと叫んでいたのを今でも覚えています。
どれくらい時間が経ったのか。
そこに知らせを聞いた父が来ました。
私は怖くてたまらなかった感情を父に受け止めて貰おうと、「お父さん!」と泣きながら声をかけました。
すると、父はこう怒鳴りました。
「お前が悪いんだッ‼︎この馬鹿野郎ッ!」
え?どういう事?理解ができぬまま
「何で僕が悪いの?」と問いましたが話は聞いて貰えませんでした。
父とのやりとりの一部始終を見ていたおばさんが
「あなたは悪くないよ!大丈夫だよ!」と声を掛けてくれました。
血の繋がった父にではなく。
血の繋がらない他人の言葉にあの時救われました。
弟は一命を取り留め、入院する事になりました。
父に言われた言葉は…そう。今でもずっと胸に突き刺さったままです。
あの時私が見通しの良い場所まで行った後、右から確認をせず左から確認していれば、弟を事故に合わさずに済んだのでしょう。弟を死なせてしまう事になっていたかもしれません。
ただ、目の前で起きた衝撃を受け止める事があの頃の小さかった自分には出来なかったんです。
あの感情と衝撃を、きっと父に包んで欲しかったんだと思います。
過去にもし戻れるなら、あの時の自分に教えてあげたい。
その日から、罪悪感に取り憑かれる日々と
父の顔色を伺う日々が幕を開けるのでした。