日本の鉄道関係者の中で東南アジアでの鉄道網に関する出張に行かれた方、過去には沢山いらっしゃったと思います。

なんせ高速鉄道や地下鉄やジャンクション(乗換駅)に関する技術輸出をしたい国々が多い東南アジアです。鉄道敷設はまだまだこれから増えていきます。横長で町移動が不便で道路網は渋滞が日常課題の国ばかりです。

 

ちょっと非日常的な話題(?)として取り上げてみたいと思います。

きっと、日本とのかかわりが大きくなるのは間違いがないでしょうから。

ひとつは、マレーシアのクアラルンプール(首都)からシンガポール北部までの高速鉄道計画=A

もうひとつは、マレーシアのシンガポールに近い街、ジョホール・バルからシンガポール北部までの通勤鉄道計画=B

 

先ずは、A,マレーシアの政権交代で中止・凍結・延期・再開と目まぐるしく変化する高速鉄道計画は、一体どうなっているのでしょう。

マレーシアには2つの長距離鉄道計画があります。

 

2018/5、マハティール政権になってから、中国寄りのナジブ前政権が進めていた2つの長距離鉄道は突然に計画ストップ、その後再開と二転三転していました。東海岸線は2019/4、「マレーシア鉄道公社と中国交通建設(CCCC)の間で、東海岸鉄道(ECRL)について補足契約を締結し、ECRL計画を続行すると発表」された。これは、タイの国鉄と連携できるようになることで大きな経済効果が期待されるため、マハティール首相の公約の一部でもあった。日本は安全性で押していたが、価格で中国に持っていかれた案件だった。

中断の背景には、マレーシアの費用高負担問題があったようで、計画見直しで約3割削減にこぎつけた。

 

もうひとつ、マハティール首相が進行中だったマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画は、政権確保後、直ぐにストップがかけられ、19/4には計画凍結された。マハティール氏の後任ムヒディン首相は、これを再開させ、2031年開業目標で進めると発表した。

350kmを90分で結ぶ高速鉄道計画(HSR)だ。日本も再挑戦の機会を得られるかもしれない。

シンガポールの国土開発が踊り場に差し掛かっている。

面積が小さいこともあるのだが、鉄道網やエリア開発も計画立案に長けている政府首脳であるためほぼやりつくしてきた。シンガポールに近くてまだまだ未開拓なエリアが海を渡ったジョホール・バル。当然ながら、投資マネーは既に10年前から動いている。村上ファンドもよく噂されている。政権交代があったため、遅々として進んでいない開発計画ではある。重要なのは、鉄道網の開発だ。

 

ジョホール・バルの3倍といわれる賃金格差があるため、毎日、多くのマレーシア労働者がシンガポールまで通勤している。仕事も幅広い。3Kと呼ばれるきつい仕事はシンガポールの周辺国からの労働力に委ねられている。しかし、通勤には毎日3時間片道要する。大変だ。

 

そこで、B、JB-シンガポールRTSリンクが運営する4kmの単独鉄道が2026年開業で民営にて締結された。1日30万人の利用が可能とのこと。

 

↑2017/9記事:ここから二転三転して、再締結へと進んだ。

4kmの単独線ルート図。上の青がジョホール・バルのブキ・チャガー駅で右下がシンガポール北部のウッドランドノース駅。

グーグルアースで同じ場所をピックアップしてみました。

今あるシンガポールとマレーシアを結ぶ橋・鉄橋。

この民間事業化の前提となっているのは、2018/6の「マレーシアの土地公共交通委員会(SPAD)とシンガポールの陸上交通庁(LTA)は、ジョホールバル-シンガポール高速輸送システムリンク(RTS)に関するシンガポール共和国政府とマレーシア政府の間の二国間協定の署名」です。

2020/11/26にLTAは、民間業者を任命して、二国間高速輸送システム(RTS)を推進させることを発表しました。いわゆる、シャトル輸送事業になります。

出来上がれば、労働力確保と楽な通勤が約束されます。また、シンガポールからの生産物の買出しにも役立ちそうです。1時間で1万人の輸送力があるようです。

入管手続きが大変なのですが、乗車前に1度受ければOKとなります。

LTAのニュースリリース:

 

 

 

余談ですが、LTAの陸上輸送マスタープラン2040(LTMP2040)が発表されていますので、参考までにリンクしておきます。:

 

英語版・中国語版等のパンフレットがこのページにリンクされています。

シンガポールの公共鉄道部隊が何を考えているのかの参考になるかと思います。

日本の3セクの考えとは視点が違うなあと感じると思います。