手元にある本20190401~「手編メリヤスの終末」とか言われましても~
自分で予約したクセに、その場で返そうかと思う
近代庶民生活誌⑤~服飾・美容・儀礼~
近代庶民生活誌 第5巻 服飾・美容・儀礼
Amazon |
大田区図書館の検索システムに
「メリヤス」という言葉を放りこみ、
とりあえずヒットした本ということで、借りて来ました。
「田中メリヤス」という名前で活動しているので、時々こういうことも調べます
これは明治期~昭和前半くらいに発行された本や論文を
部分的に抜粋して(全部は載っていない)
まとめて
1980年代半ばに出された全集のうちの
5巻目です。
中でも、私が見たかった部分は
明治43年に出たという
「日本メリヤス史」/藤本昌義 著
そして、
明治21年
「毛糸編物独(ひとり)案内」/浜田兼次郎 著
あくまでも、興味本位です~
まず、「日本メリヤス史」の方には…
編み物は士族の内職だったとか、
明治以前は手袋をするのは武士とお医者さんくらいだったけど、維新以降、町人もするようになって、肘まであったのがショート丈になったとか、
近代的な軍隊をつくったら、靴下と手袋が大量に要るようになって、手編みじゃおっつかなくて、海外からメリヤス機械を導入したんだとか、
当初機械編みは粗悪品しかできなかったとか…
いろいろ興味深い話が載ってます。
手編みは士族の内職だったのかぁ…
「もう1段編むとキリが良くなる故、しばし待たれよ!」
「早々に目を落としていたとは、なんたる不覚!」
「武士なら姑息な手を選はず、いさぎ良く解かぬか!」
・・・とか言ってたのかなぁ
ああ、そういう編み物系あるある時代劇が見たい!!(←ごく一部にしか受けん気がするよ)
機械で編む側の人は手編みの精巧さに感服し、
手編みやってる人は、機械編みのスピードに感服し、
お互い「とてもかなわない」と思ったとか、「廃れるのはきっと自分の方だ」と思ったとか、いろいろ小噺も。
で、その論文(本)の引用の最初に
「手編メリヤスの終末」と書いてあるんですよ。
発行されたのは、明治43年(1910年)ですって。
明治維新(「革命」と書いてある)を機に
メリヤス機械が海外から入ってきて
大打撃を受けた「手編みメリヤス」…
「漸次廃滅に帰し僅かに手袋と又引のみ旧幕時代の遺物として、相応に長き命脈を保ちしが、後機械の発達に逢ひて、その影を失ひたるも、然かも手編は日本メリヤス業の前身として、尽くす可き任務を果たせしなり」 (p.12 下線は私が勝手に引いてます)
ううっ…
褒めてるのか、けなしてるのか、わからんが、この時点で既に過去形で書いてあるし。
私は・・・
旧幕時代の遺物 を
楽しんでるのかーっ?
これはますますオモシロクなってきたぞ
明治に入って150年
大正昭和平成と来て、次の元号になっても、きっと手編みは、生き延びる
当時と比べたら、
手編みに求められる役割はだいぶ変わってるけど。
さて、同じ本のもう1カ所
「毛糸編物独(ひとり)案内」
これもちょっと面白い。
「編み図」とかはまだなくて、
「あれしてこれして、こうしてからああして、あっちとこっちで1目ずつ増やして…」と文章で書き連ねる「英文パターン」のような方式です。
帽子とか手袋の編み方なんかも載っています。
「ホントは手とり足取り…横に付いて教えるべきものを、文章で教えるのはけっこう無理があるのは知ってるんだけど、それでも習いに行けない人もいるでしょうから…」的な位置づけの本。
最初の方に心得が書いてあります。
---以下、改行位置のみ変えて引用---
編み目はあまり堅く緊(し)むべからず又た緩るすぎるもよろしからす
能く編面に凹凸なき様注意すべし
すべて如何なる大なる編物も皆一つの目の一つの列或いは段よりなるものなれば
その細工の巧拙も又た此の編目の一つ一つにある也
針の太さは大抵糸の太さと同じものを択ぶべし
---近代庶民生活誌 南博責任編集 p.46 ~日本メリヤス史 藤本昌義著~)---
ごもっともー
さらって書いてあるけど、そこが平成が終わる頃になっても難しいところなのー
「だいたい糸の太さと同じくらいの太さの針を選べばいいよ」というおおらかな説明は、楽しいなぁ
当時、毛糸に「おすすめの針の号数」が書かれたラベルなんか、まだ付いてなかったのかもしれない。
ちょっと常用漢字外の文字や、
慣れない言い回しで意味がつかみ切れないところもありますが、
母国語だけに、私の場合、まだ英語よりはわかる。
何より、興味のある分野だから、難しいわという気持ちより中見を知りたい気持ちが勝る。
巻末に今の日本語で解説が載っているので、
(そこは、今回の本に掲載しなかった部分に関しても触れられている)
そこだけ読んでも楽しそうです。
いろんな論文や出版物をまとめた分厚い本なので、他にも面白いものがいろいろ載ってました。
例えば「蓑虫バッグの作り方」とか
材料となる蓑虫の捕獲は11月がおすすめだそうです
あ!まだちゃんとあるのね !!
大変失礼しました。
どなたかが、蓑虫は毎年どこでよく採れるかという知識と制作の技術を、今でも継承されてるってことかしら?
ヤフオクやメルカリでも、時々、中古品も売られているみたいです…
これは渋い!!・・・渋すぎる・・・
「山ぶどうのカゴバッグ」ブームのあとは、きっと蓑虫バッグブームが来ますよ(←今日はエイプリルフールなので断言してみる)
しかし、素直な女子は「虫」と聞くと反射的に「きゃぁー」と言う確率高いし。
そこまで素直でない女子も、「動物愛護の観点から蓑虫を巣から追い出して作るバッグはどうよ?いや、しかし蓑虫は動物だろうか」とか思いそうだし。
ハードル高そうですね
(男子でもうちの弟みたいに虫に近寄りたくない人も居るからきっと同じことだなわざわざ女子って書いてゴメンなさい。流してくださいね。)
世の中、「知らんでええけど、知ったらおもしろいこと」
まだまだいっぱいあるなと思いました
それでは、今日は見た目がびっくりする本と、編み物の昔話でした
さて、新元号は、どうなるかな?
穏やかで溌剌とした気持ちになれる、書きやすくて言いやすいのになりますように