こんな夢を見た。
我々は、古びた木造の喫茶店のような建物の前にいる。壁の木材はやや黒く変色しているが、はっきりと木目が見える。そして控えめな感じで蔦が壁を匍っている。建物の正面に回り、扉を開け、私と【相棒】は、中へと入って行った。
外見は喫茶店のようであったが、中は雑然とした書斎のようなところで、あまり広い空間ではない。壁には本棚や棚が並べてあり、棚にはレトロな小物が雑然と置かれていた。中は灯りが付いておらず、少々暗い感じもしたが、奥にある窓からは光が差し込んでいるため、その光があたっているところは暗さを感じない。その光のあたっているところに書斎机があり、その向こうに男性が座っている。男性は【依頼主】だ。年の頃は50歳ぐらい、眼鏡を掛け、少々白髪混じり。
私と【相棒】はその男性と会話を交わす、何か取引に関することで依頼を受けて、我々はここにいる。依頼内容は、ある人物とあって『商品』を貰って来て欲しいとの事だ。今回の依頼は危険を伴うという事で、『武器』を渡された。形状は拳銃とは明らかに違うが、引き金が付いており、それを引くと、弾丸ではなく針状のものが発射されるという。針といえど急所に当たれば命はない。構造はどうなっているか不明であるが、火薬を使わずに針を発射するために、発射音が全くしないという。
「最後に」と【依頼主】は言って、部屋の奥を指差した。奥は最初よく見えなかったが、覗き込むように体を向けると、奥のキッチンで男性がナイフを持ってサンドイッチを作っている。昼食を自分で作っているそうだ。【依頼主】曰く、その人物のことを【透明人間】と呼んでいるらしい。なぜそう呼んでいるかは聞くことはなかったが、諜報活動などで正体を知られずに上手く仕事をしているからであろう、と私は勝手に思った。何かあれば彼が協力すると。しかし、この依頼は『商品』を受け取るだけなので、私と【相棒】の二人で比較的に簡単に終わる仕事だと、私は思った。
我々は、早速依頼を遂行するため、その【古びた喫茶店】を後にした。目的の取引の場所に向かう、【相棒】が車を運転し移動を開始する。
どれ位移動しただろうか、あたりはすっかり夜だ。目的の場所はとある野外駐車場、そこで『商品』の引き渡をする相手側の人物が来ると聞いている。
我々は、目的の駐車場ではなく、別の近くのビルの地下の駐車場に車を止め、そこから徒歩で、目的の場所へと向かうことにした。
地下駐車場の階段を上がり、裏の非常扉のようなところから外へ出た。地下駐車場のあるビルの裏側は、さほど開発されていない土地のようで、雑木林があり、歩道は舗装されていない。
しばらく歩くと目的の駐車場の裏側に到着した。車が数台止められており、その前に男性が二人立っていた。二人共とも白っぽいスーツを着て帽子を被っているという出で立ちであった。
予め【依頼主】から『商品』引き渡しの相手の特徴を聞いていたが、その二人の特徴があまりに聞いたものと違うので、彼らとは違うのではないか?と思い私は声をかけるのを躊躇した。しかし【相棒】は、あろうことか声をかけて近づいた。私もしかたなく急いで彼の後を追い、横に並んで立った。結果的に相手方二人と対峙して立つ形となった。あまりに突然のことで相手方は驚いたようで、お互い顔を見合わせた後、再びこちらを向いた。なにやら尋常でない雰囲気となってきたので、流石に【相棒】も不味かったと思ったのか、我々は急いでその場を立ち去ることにした。早歩きで駐車場を出て、歩道が舗装されていない道を急いで雑木林の方へ向かったところで、後ろから駐車場に居た二人のうち一人が前かがみで駆け込んで来た。私は瞬間的に振り返った、駆け込んできた男の持っていた銃のようなものが【相棒】、私の順で向けられた。私も反射的に【依頼主】から貰った『武器』を取り出し、引き金を三度、四度引いた。すると相手は声もなくうつ伏せに倒れ込んで動かなくなった。発射音がしないため、手応えが全くわからなかったが、どうやら難を逃れたらしい。一瞬、相手の方が早かったと思えたが、かなりの至近距離であったにもかかわらず、私にも【相棒】にも怪我はなかった。倒れた相手の持っている武器を見ると何故か我々と同じ針を発射する『武器』を持っていた。この『武器』は特殊なもので他には出回っていないはずだ。そして、我々が無傷なのは、針が外れたのか、そもそも針が発射されなかったのか、理由はわからない。一方でこちらの発射した針は命中したようだ。
駐車場に居たもう一人の姿は無く、追ってくる気配はなかったが、早くその場を去ろうとして振り返ったその時、そこには予想外の人物が立っていた。【依頼主】のところに居た【透明人間】が驚いた表情で立っていた。なぜ彼がここにいるのか?しかし彼の動きが、私にそれを考える余裕を与えなかった。なんと【透明人間】が『武器』を取り出し、こちらに向けようとした。しかし今度はこちらが一瞬早かった。私は三度、四度引き金を引いた。彼は倒れこんだ。


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第一夜
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