「オフクロが殺される!」

母の面会を終え、2人きりになった途端
弟はそんなことを言い出しました。
意味がわからずポカンとしている私に向かい
弟はさらにワケのわからないことを続けます。

弟「4、5年前になるんだけど
オフクロ、風邪をひいてさ。
呼吸がヒュー、ヒューって
ダースベーダーみたいになったことがあるんだよ」

(なんの話だ?)と思いつつ
「うん?」とあいまいにうなずく私。

弟「たぶん、その時に気管が細くなったんだと思う」

私「えっと…、もう4、5年前のことなんだよね?」

弟「うん」

私「その後は特に問題なかったんだよね?」

弟「うん。でも、気管は細くなっていたんだと思う」

私「………」

弟「今は気管が細くなっているところに
チューブを入れて
なんとか呼吸している状態だと思うんだ。
だから、チューブを抜いたりしたら
キュッと気管が詰まって
オフクロ、死んじまうよ。

なのに、この病院の医者は
チューブを抜くって言っている!
オフクロを殺す気なんだ!」

弟の言葉に、比喩ではなく本当に頭が痛み出す私。
そして、理解しました。
会ったさいに、母の意識がもどったことを、弟が手放しで喜んでいない理由を。

先にアップしたブログでは
サラッと書いていますが
4日の面会時に弟は繰り返し
「人工呼吸器は抜けませんか?」
と医師に質問していました。

その度に医師は「今の状況では無理です」
「ツバやタンがノドに詰まり
ちっ息死する可能性が高いです」
と説明してくださいました。

たぶん、私が来なかった5日と6日にも
弟は「抜きたい」と繰り返し
医師から「死ぬ」と言われ続けたのでしょう。

その結果、〝人工呼吸器のチューブを抜いたら、母は死ぬ”とインプットされたのだと思います。
そして、母の容態が落ち着き
医師が人工呼吸器をはずそうとすると
「母を殺す気だ!」という妄想が湧き出したのでしょう。

私「じゃあ、人工呼吸器をはずすチャレンジはやめてもらい、切開手術をしてもらう?」

弟「手術をするかはTO先生に相談してから決めたい」

私「口からチューブを入れたままだと、よくないって何度も言われているよね?」

弟「そうだけど! チューブを抜いたらオフクロが死んじまうんだぞ!?」

狂った妄想を吐き出す弟。
でも、弟が決断しないかぎり、母の治療を進めることはできません。
私は精神疾患がある家族がいる恐怖を、改めて思い知りました。