長く苦しんできた慢性疼痛を克服していくために、これまでの「慢性疼痛体験記」に書いてきた通り、さまざまなことがありました。
内面的な部分では、時には人の力を借りながらもゆっくりと内観を重ね、自分を苦しめるような考え方をする私の「心のクセ」に気付き、なぜ自分を許してよいのか、自己受容とは何かを考え、本心では何を望んでいるのかを思い出し、恒常的な心の緊張状態を少しずつほぐしていきました。
身体面では、体験記⑧で書いた通りたまたま腹膜妊娠をきっかけとする腹腔鏡手術を受けたことで、過去に内蔵の広範囲で起きていた炎症に気付くことができました。(医師によれば、子宮以外の臓器にもかなり広範囲の炎症を経て自然治癒していた痕跡があるということでした。)
はたして私の場合の慢性疼痛の原因は何だったのか?
精神的な理由か、身体的な理由か、と問われたら、どちらか一方だけが理由だったとは言い切れないと感じています。
言うまでもなく、心と体は密接な関係があります。
これまでの内観の過程で、私はおそらく愛着障害の回避型に該当するという自覚があったので、自分を研究するためにさまざまな本を読みました。
その中の1冊、精神科医の岡田尊司先生の著書『死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威』(光文社新書)では、愛着障害がオキシトシンやオキシトシン受容体に影響(免疫系や成長ホルモンに影響)するメカニズムや、愛着障害の人は慢性疼痛に苦しみやすいことにも言及しています。
現在、私はかつてのような毎日のように苦しむ激痛は無くなり、痛みを感じる日もかなり減ってきたと言えるほど、だいぶ痛みから卒業できていますが、実際のところ全く痛みを感じずに1ヵ月を終えることはないのが現状です。
長年の心の友であった「ロキソニン」も、不妊治療中である現在は、排卵抑制の影響が懸念されるため飲んでいません。(体外受精の治療中にうっかりロキソニンを飲んでしまい、無排卵を経験したこともありました。)
その代わり、少しでも痛みを感じたら勇気を出して休むことにしています。とことん痛みに向き合っています。
「温めたら痛みが和らぐ気がする」と感じる日であれば、カイロやヨモギ蒸し、酵素風呂など、その時ピンとくるものを選んで自分に優しくします。体を温めると、リラックスして副交感神経が優位になり末梢への血流が増えるためか、私の腹痛も和らぐ傾向があることに気付きました。
一方で、「今日は温めても何をしても身動きが取れないほど痛い。動きたくない。」と感じれば、何もせずそのままじっとしています。観念して携帯も本も見ないようにして、ひたすら休むと、次第に体の緊張が解けて痛みが落ち着くこともあります。
痛みがある自分の体は「普通じゃない」とか「ダメ」とかジャッジすることもなくなりました。
身体には身体の都合があり、言いたいことがあるのだと思います。
私は「痛み」によって自分を深く知るきっかけをもらいました。かつて「痛み」は、その痛烈さゆえに自分の外側から攻めて来る敵にように感じていました。でも、紛れもなく「痛み」を生み出しているのも感じているのも私自身です。
私自身とも言える「痛み」を通じて、またこれからも自分を深く知ることになるのだと思います。
こんなマイペースで生活していたら、仕事も家事も友達付き合いにもさぞ悪影響があるだろうかと思いきや、案外全く問題がありません。むしろ以前よりも良好になった気がして、幸福度が上がっています。
考えてみてください。あなたの大切な人が、必死の形相で痛みを堪えながら働いていたら、どう思いますか?
「そんな無理しないで!どうか休んで!私がいるから」と言いたくなりませんか?
もし、それで相手があなたに「ありがとう!嬉しい、本当にありがたい、少し休ませてもらうね」と言われたら、あなたも嬉しくなりませんか?
人は他の人を助けて「ありがとう」と相手に喜ばれたり、感謝されたら嬉しくなるものではないでしょうか。
だから、あなたが苦しくて休んだとしても、他の人があなたを助けて嬉しくなる機会になったりするわけです。お互い様です。
「休んではいけない」
「ここで休むとデメリットが大きい、それでいいのか?」
と言っているのは誰ですが?
他の誰でもない、あなた自身ではありませんか?
【おまけ】
慢性疼痛と向き合う中で参考とした書籍リスト(順不同)
医学系
🔹『死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威』(岡田尊司、光文社新書)
🔹『愛着障害の克服「愛着アプローチ」で人は変われる』(岡田尊司、光文社新書)
🔹『慢性疼痛 「こじれた痛み」の不思議』(平木 英人、ちくま新書)
🔹“A Short Introduction to Attachment and Attachment Disorder” second edition (Colby Pearce, Jessica Kingsley Publishers)
🔹『からだのためのポリヴェーガル理論』スタンレー・ローゼンバーグ、S・W・ポージェンス/B・シールド、花丘ちぐさ訳、春秋社)
🔹『子宮内膜症は自分で治せる』(駒形依子、マキノ出版)
スピリチュアル系
🔹『改訂新訳ライフヒーリング』(ルイーズ・L・ヘイ、L・H・Tプロジェクト訳、たま出版)
🔹『こどもはママのちっちゃな神さま』(長南華香、ワニブックス)
🔹『ママ、パパ、生まれる前から大好きだよ』(池川明、学研プラス)
🔹『前世療法』(ブライアン・L・ワイス、山川紘矢・亜希子訳、PHP文庫)
🔹『宇宙さんと宇宙ちゃんが教えてくれる魂の面白いお話』(ChieArt、みーちゃん、KADOKAWA)
その他
🔹『ゆるめる・温める・巡らせる』(鈴木七重、エスクナレッジ)
🔹『喜びの泉 タ―シャ・テューダーと言葉の花束』(タ―シャ・テューダー、食野雅子訳、KADOKAWA)