おそらく、ほぼ全ての介護の事業所、施設で、一度は課題となったことがあるのではないか?と思われる、ご利用者の方への「タメ口」問題について考えてみたいと思います。

 

人の考え方は十人十色ですね。

タメ口はよくないと考えている人、

自分なりの理由があってのタメ口肯定派、

ごく自然にタメ口になってしまう人、

郷に入れば郷に従えの周りに合わせる派?

特に何も考えていない人…

 

さて、いわゆる「サービス業」と言われる仕事で、

お客さまへ、タメ口で話す仕事はどれくらいあるでしょうか?…

例えば飲み屋さんなどではそのような接客をしているところがあるのかもしれませんが、

「タメ口では接客しないことが当たり前」というところが大半ではないかと思います。

コンビニや(上場している企業の)居酒屋などの学生アルバイトさんも敬語で話していますね。

 

では、介護の現場では、なぜタメ口で話すスタッフが一定割合いるのでしょうか?

 

私自身は、「ご利用者の方を自分より弱い存在(歯向かってこない)とみていて、タメ口で話してもよい人たちと捉えているからだ」と思っていますが、

先日「ご利用者に対して差別意識を無意識かもしれないけれど持っていて、見下しているからだ」という意見を耳にしました。根本の考えは私と同じと思いました。

 

         

    (『レクリエ』2017.8より)

 

例えば認知症状が顕著で、ニックネームで呼びかける方が伝わる方などは、個別支援の一環としてそのようなコミュニケーションをとる必要があるかと思いますが、

そうした個別具体的な明確な理由がなければ、敬語を基本としたコミュニケーションをとるのがよいと思っています。

なぜなら…オトモダチや、すごく極端な言い方をすると自分の愛玩動物ではなく、お客さまであり、人生の先輩だからです。

自分の親がタメ口で介護されていたら…

 

タメ口問題は、私が管理者として携わった事業所でも課題となっていたことがありましたが、

私が退職したあと1年ほどでクローズとなってしまった(ご利用者が減り続けて潰れた)デイでは、どうもタメ口文化が蘇ってしまったようです。

 

変に仰々しい話し方では、固苦し過ぎる雰囲気となってしまうかと思いますが、

ごく自然に、年長者に対する言葉遣いを行っていけばよいのでは…と思っています。

 

介護の現場で虐待問題が表面化することがありますが、

接遇を意識した文化が根づいている事業所、施設では起こらないと思います。

私見ですが、起こるのは、

ご利用者の方への敬意のない感性のスタッフが中心となって運営されることになってしまう→敬意のなさが言葉使いに現れ、タメ口が日常的な組織風土となってしまう→全体的にケアが雑となってしまう→虐待するスタッフが現れる…といったループが起こってしまった組織と思います。

         

「猫の手採用」の悪循環に陥ってしまったところでは、対人援助職としての適正を確認せずにとにかくスタッフを採用してしまうので、ご利用者へ敬意を持つという感性のない人間を雇ってしまうこととなり、

そうした感性の人間は、ややもすれば声や態度の大きなことがままあり、よくない方向への影響力が大きく、しまいには虐待が起こってしまう組織風土を作っていってしまう…そのようなよくない循環が起きているのではと思っています。

 

ご自身の親御さんのために、「よい介護サービスを選びたい」と思われている方は、

判断基準の一つとして、見学の際に、スタッフの話し方、ご利用者への接し方を観察してみるとよいと思います。

多くの方が、適切な事業所、施設をしっかりと選んで下されば、よくないところは自然に淘汰されていくと思いますで、介護サービスを必要とする皆様のためになることでもあると思います。