子宮頸がんワクチン被害救済、定期接種前も 厚労省方針

行政・政治 2015年9月5日(土)配信朝日新聞


 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に健康被害を訴える女性が相次いでいる問題で、厚生労働省は、今秋にも救済策を拡大する方針を固めた。

法律に基づく定期接種になる前に接種を受けた人にも、定期接種と同じ水準の医療費の支給を検討している。

 ただ救済の対象になるには、接種との一定程度の因果関係が厚労省に認められる必要があり、どれだけ広がるかが課題となる。

 子宮頸がんワクチンは、患者団体や学会などからの要望を受け、国が特例的に2010年11月から接種費の公費助成を始めた。

13年4月に予防接種法に基づいて市町村が実施する定期接種となったが、体の痛みやけいれん、歩行障害などの健康被害の報告が続き、2カ月後に厚労省は積極的な推奨を中止した。


 厚労省によると、接種の対象は原則小学6年~高校1年の女子で、これまでに接種を受けたのは約340万人

このうち、定期接種前が9割以上を占める


健康被害は約2500人分が報告され、ほとんどが定期接種前という。報告のうち重症は4分の1。



 ワクチン接種によって健康被害に遭った場合、定期接種とそれ以外では救済制度が異なっている


定期接種では通院、入院を問わず、かかった医療費の自己負担分が支給される。


一方、定期接種ではない場合は、医療費は入院相当に限られ、通院治療でかかる費用は出ない。



 医療費とは別に、定額の医療手当が定期接種では通院でも月3万4千~3万6千円支給されるが、定期接種以外では入院相当しか出ない。このため、「不公平」との指摘もあった。


 厚労省は、定期接種になる前から公費助成で接種を進めてきた経緯をふまえ、医療費や医療手当については定期接種前後での差をなくすことを検討している。

障害年金なども">定期接種の方が手厚いfont>が、これを同水準にすることには否定的だ。

 医療費などの支給を受けるには、専門家の審査を経てワクチン接種との因果関係が「否定できない」と厚労省に判定される必要がある。

厚労省は、現在でも幅広く救済することを目的としており、判定の仕組みは変えないという。



定期接種前に接種を受けた人からの救済の申請は今年7月までに98件。

このうち結果が出たのは27件で、支給されたのは18件、残り9件が不支給だった。



 健康被害を訴えている人たちには、接種から長期間たってから症状が出たケースも少なくない。


ワクチンとの因果関係を巡って専門家の中で意見が分かれており、厚労省がどれだけ認定するかわからない。(田内康介)