子宮頸がんワクチン、「心因」表現用いず 接種後の症状、医師会が手引き
臨床 2015年8月20日(木)配信毎日新聞社


 子宮頸(けい)がんワクチン接種後に痛みなどを訴える10代の女性が相次いでいる問題で、日本医師会と日本医学会は19日、接種後に生じた症状に対する医師向けの診療手引きを公表した。

厚生労働省の専門家検討会は昨年、体の異常は接種時の痛みや不安による「心身の反応」との見解をまとめたが、


「心の問題」とされたことへの患者らの反発を考慮し、手引きでは「心因という表現は原則として用いない」と明記した。


 手引きでは、

体の持続的な痛み、倦怠(けんたい)感、運動障害、記憶など認知機能の異常といった多様な症状や経過、生活上の支障について、患者や家族から丁寧に聞き取り、長めの診療時間を確保することが望ましい、との基本姿勢を示した。


 痛みの診断の際には、患者の思い込みや気のせいという意味合いが含まれる可能性があるため、心因という言葉を使わないことで合意したという。


 治療にあたっては、痛みなどの症状は神経系の反応であり、原因の特定が困難であることを患者に繰り返し説明し、痛みを抑える治療のほか、筋力をつける運動を積極的に行うことを推奨した。




 厚労省がワクチンの接種勧奨の中止を決めてから約2年。


日本医師会の横倉義武会長は「全国の医療機関で活用し、適切な治療につなげてほしい」と話した。手引きは日本医師会のホームページで見られる。【下桐実雅子】

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 ■解説

 ◇患者に配慮「前進」

 子宮頸がんワクチン接種後の体調不良に苦しむ患者の中には、診察した医師から「気のせい」「ワクチンのせいだと思うから悪くなる」などと言われたケースが少なくない。


手引きには、そうした相互不信を和らげる役割が期待され、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の松藤美香代表は「患者の訴えに向き合う姿勢を示してくれた点では前進」と話す。

 ただ、日本医師会の小森貴常任理事が「病態を明らかにするのが狙いではない」と説明したように、手引きは接種で起こり得る健康被害を定義したものではない


因果関係に踏み込まないままでは、補償や安全性の議論は進まない。

「日本だけ(ワクチンを打たず)子宮頸がんが将来増えるのを憂う」
(高久史麿・日本医学会会長)のであれば、多様な症状が起きる原因の解明と治療法の研究が急がれる。【清水健二】