HPVワクチン推奨するか
シリーズ「技術のテーマ」◆Vol.2
2013年12月13日(金) 星良孝(m3.com編集部) カテゴリ:産婦人科疾患・感染症・癌

「技術のテーマ」は続いてHPVワクチン。
厚生労働省は副反応の発生で積極的推奨を一時中止。
海外では推進する見方は強い。推奨の賛否は。




テーマ HPVワクチン推奨するか


投票結果 HPV推奨反対は「少数派」

 ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンは子宮頸癌の予防目的で公費助成で実施できるが、2013年6月に厚生労働省が積極的な推奨を一時停止する通知を出した。慢性疼痛のような副反応の問題が生じたためだ。以来、推奨をめぐって議論が起きている。今、推奨に賛成するか反対するか。


賛成 「癌の道を閉ざす」
 HPVワクチンの接種によって、HPV感染を阻止できる点は重要。米国癌協会(ACS)は、HVPの接種後にHPV感染が急減していると報告している(『HPVワクチンで罹患率56%減』を参照)。CDC(米疾病対策センター)のデータに基づいて検証したところ、14歳から19歳の女性のHPV感染が56%も減少していた。HPV感染を阻止することは、結果として子宮頸癌を抑えることにつながる。

 WHO(世界保健機関)もHPVワクチンは安全であると宣言している(『HPV接種、WHOで安全声明』を参照)。HPVワクチンの接種には前向き。米国では、接種回数は1回でも十分という報告も出ており、より手間をかけずに接種効果を出す試みも出ている(『HPVワクチン「1回で十分」』を参照)。関連して、咽頭癌を抑制する効果についての関心もある(『HPVワクチン、咽頭癌も予防か』を参照)。欧米の見方も参考に、癌を予防する有効な手段として推奨すべきと考えることはできるだろう。



反対 副反応の懸念重い

 一方、副反応の可能性が拭えない限り、推奨には反対する立場も取り得るだろう。子宮頸癌は女性の罹患する癌としては重要である半面で、罹患率は10万人当たり100人未満人数としては多いとは言えない面があった。ワクチンによる癌抑制効果と副反応の可能性とを天秤にかけたときに副反応を重く見るのは不自然でない。検証を経た上で、改めて推奨を俎上に上げるべきと見る人はあるだろう。

 日本だけではなく、海外でもHPVワクチンの接種には懸念は伴っている。米国でもHPVワクチンの接種率は伸びないと報告がある(『HPVワクチン接種、米でも低迷』を参照)。HPVワクチンを接種することで、性行為の開始時期を早めてしまう懸念がある。HPV感染はむやみな性行為を避ければ回避も可能。ワクチンの無理に推奨しなくともリスクを抑制を可能と見ることはできる。

 従来のワクチンは、HPVの中でも6型、11型、16型、18型のウイルスの感染予防の効果がある。発癌性ウイルスは15種類ほどある。発癌性HPVのうち頻度の高いウイルスをカバーしているとはいえ、効果が限られると見る医師もあるだろう。