最近メキメキと露出を増やして、その才能を露呈している玉置玲央さんが、鴻上尚史さん作・演出の「朝日のような夕日をつれて」に出演する。


戯曲は、鴻上さんの作品の中でも名作の誉高い「朝日〜」で、1981年、早稲田大学大隈講堂裏特設テントでの公演が初演だったと記憶している。


その時の中心的な役者であった岩谷真哉さんがバイク事故で亡くなられたことは大きな損失だったことは容易に想像できる。大高さん、名越さんの現在の活躍を考えると残念で仕方ない。


ベケットの「ゴドーを待ちながら」とおもちゃ会社の社員の奮闘をコミカルに描いた作品なのだが、その演出と流行とこだわりの音楽の選曲で小劇場ブームの扉を開いたと言えるだろう。


僕は1997年の4月に福岡県の大野城まどかぴあでの公演を観た。初演から16年が経ちやや苦しい演技と演出だと思った。それは「朝日〜」がスタイルの新しさとマシンガンのように吐き出されるセリフのスピード感で斬新だったのだが、笑いが古く、セリフの中身がないことから、喋り終えた役者の作ってしまう「間」が不自然で「うっ」となってしまった。松重豊さんが出ておられて流石の動きと台詞回しだと驚いた。


それより少し前、福岡県の演劇評論家の方が「松重くんが東京で売れそうだ」と喜んでおられた時は、「マツシゲって誰?」と思っていたが、今や日本の演劇、映画界においてなくてはならない存在であることは間違いない。


鴻上さんは「スナフキンの手紙」がもはや限界だったと前にも書いたが、NHKで流れた「朝日〜」の練習風景でのセリフが厳しいと感じてしまった。


脚本が永遠の命を得るのは難しい。演出家と役者の手によって、生まれ変わってナンボなのだと思う。「朝日〜」は大好きな作品なので、観に行けたらと思っている。あの時代の熱狂ではなく、2024年に演じられる必然に出会いに行きたい。