実写化の成功例。The Beginning までを含めると5部作ということになる。


実は熊本県荒尾市で働いていた時に、世界文化遺産の三池炭鉱万田坑跡の近くに住んでいて、第2作目の「京都大火編」のオープニングの舞台となった場所だったことを知らされたのは、熊本から宮崎に引っ越す直前だった。


生徒の1人から「僕、佐藤健を生で見たんですよ。めっちゃカッコよかった」と言われ、「どこで?」と問い返した。

「大牟田の映画館です」

「佐藤健が何しに来たのかな?」

「え?何も知らないんすか」

「うん」

「るろうに剣心知ってます?」

「もちろんだよ。大ファンだ」

「もぐりだな」

「え?」

「先生のアパートの近くの万田坑、京都大火編の最初のシーンのロケ地です」

「はぁ!?」


行ってみたら、確かに「あの場面がこの細い通路で撮られたのか」と思う場所もあって「ファンにとっては聖地だろう」と思わせてくれた。


しかし、御多分に洩れず、地方の「世界文化遺産」は集客に困っている様子がうかがえた。よっぽどの投資をしてリピートしたくなる工夫をしないと、施設を維持して観覧料を取るだけでは、運営そのものも厳しいし、観光資源として育てることが求められる。


佐藤健演じる緋村剣心は、過去の人斬り時代に犯した殺人の罪悪感から、逆刃刀(さかばとう)を振るい殺さずの誓いを守り、人を救っていた。


幕末から明治にかけての混乱の時代。サムライが価値を失う中、過去の亡霊に囚われ、力づくで体制を変えようとする愚かな剣術使いたちを打ち砕いていく剣心の、非情になれない優しさにもどかしさを覚えながら、応援してしまう。


殺さないで「やっつける」ヒーロー像は、新鮮でヒットした理由にもなっているのだろう。


同時にそのもどかしさを跳ね返すほどのアクションの凄さには驚いた。そのスピードと連続性は、これまでの時代劇の殺陣の概念を覆した。特撮込みでだとは思うが、そのアクション演出の志は高い。剣心が斜めに傾いて低い姿勢で円を描いて、相当な速度で廻るシーンは圧巻である。


幕末から維新へ。それまで正しいとされていたことが間違いだと言われ、振り切れていた人たちは何を信じていいのかわからない絶望に襲われる。時代そのものが混沌とした転換期だった。


テレビでの再放送でもつい見入ってしまう作品である。主題歌を担当したONE OK ROCKの楽曲は最高で、この映画のエンディングに合っている。


ぜひご覧になって欲しい素晴らしい映像作品だ。