刑事ドラマの金字塔「踊る大捜査線」との出会いは残念なものだった。
へそ曲がりで頑固な僕は、職員室の同僚や生徒たちの「踊る、めっちゃ面白い」という言葉になかなか「踊り始め」なかった。みんなが騒がなくなってから、レンタルビデオ屋さんで借りて見始めて驚愕。
「熱血」は鳴りを顰め、むしろ会社の中のサラリーマンたちの縄張り意識や階級至上主義、学歴による固定化されたヒエラルキーによる阻害などが、皮肉めいた笑いの中に落とし込まれ、そうした価値観に対する造反こそが価値あるものとして浮かび上がり感動を想像する。
重要な役割を果たしてくれたスリーアミーゴスは、責任を押し付け合いながら、ヘラヘラした姿を署員に見せることに抵抗がない。視聴者はそれに反発を感じもするが、自分のいる会社で見かける風景が戯画化されていることに背筋が寒くなる笑いで応じるしかなかった。そこにあるのは中間管理職の悲哀だった。
それにしてもこの3人の個性と掛け合いは抜群で、アドリブではないかと思われる部分もあり、芸達者の安定した演技があったからこそ楽しめたし、一つのユニットとして高い水準で成立していた。
この装置は、本店がやってきて青島たちの責任を責め立てる時に大きな役割を果たす。3人が辞表を出して神田署長が「責任を取る!!と言い放つのだ。何とカッコいい。この時の神田署長の言葉遣いが一瞬荒くなるのも痺れる演技だった。
視聴者は拍手喝采を送り、こんな上司に恵まれたいと心から思う。その後のグダグダもアドリブかと思われるが、僕たちの熱を優しくおさめてくれる仕掛けなのだ。
このシリーズは、映画化・スピンオフなど史上最高のコンテンツになった。フジのドル箱だったことは間違いない。
福岡の演劇評論家の大学教授の方と食事した時に、「すごく面白い映画を見ましたよ!お勧めです。ぜひ見てください。」と言われたのが、「踊る大捜査線 THE MOVIE」だった。君塚さんの脚本も素晴らしく、何度映画館に足を運んでしまったことか…
スピンオフで映画化された「室井慎次」の続編?「室井慎次 敗れざる者」が10月11日に公開される。2部作だ。どんな映画になっているのか楽しみで仕方ない。