大学時代に、村上という破格の男がいた。高校までには出会えなかった超ポジティブで、悪く言うとテキトーな男でした。コツコツ真面目を信じてきた僕にとっては信じられないやつ。
「なぁ、明日空いてへんか?」
「どないしてん」
「お前大阪弁おかしないか?」
「そんなことあらへん」
「喋らん方がええんちゃうか?」
「そないだっか」
「…明日京都の磔磔でムーンライダーズのライブがあんねんけど、ツレが行けんようになってん」
「ムーンライダーズって?」
「お前、ライダーズ知らへんの?それはあかんで」
「あかんか…」
「…聴いたらわかるて」
村上は、チケット代を伝えて待ち合わせ場所を指定した。
僕と萬田くんは半信半疑でライブハウス磔磔(タクタク)へ。あまり期待していませんでしたが、演奏が始まるとすぐに心を掻っ攫われました。最高のライブの余韻に浸りながら、村上にしつこくお礼を言って寮に戻りました。
当時は自分で音楽を探し当てることなんてなかなかできなかったから、こうした友人の誘いかプガジャ(プレイガイド・ジャーナル)やエルマガ(Lマガジン)でしたが、雑誌では音や演奏は確認できないので、口コミというコミュニケーションはすごい力を持っています。
その後、レコードをカセットに落として聞きまくっていました。数年前にスカンピンに再会して、CDを買い、車の中で聴きながら当時の興奮の燃え殻をかき集めていました。
古いフランス映画を思い起こさせる曲やタイトル。
特にこの「スカンピン」という切ないバラードを聴いてみてほしいです。RCサクセションの「スローバラード」や「エンジェル」に匹敵すると僕は思うのです。
🎵
俺達 いつまでも 星屑拾うルンペン
夜霧の片隅に 今日も吹き溜まる ♬