久しぶりに「炎のランナー」を観た。初めて観たのは僕が21歳の時、大阪の梅田の映画館で、エンドロールが終わっても、感動のあまり動けなかった。


1919年、ケンブリッジ大学入学を果たしながらもユダヤの血を引いているために、周囲からの心理的な差別に悩みながらも、陸上競技を通じて差別を乗り越えようとしたハロルド・エイブラムス。


もう一人、スコットランドの牧師エリック・リデルは神に与えられた走る才能で、100メートルでハロルドに勝ち、パリ・オリンピックに出場する。しかし、100メートルの予選が行われるのは日曜日。敬虔なキリスト教徒であるエリックは、予選が日曜日(安息日)であることから出場を拒否する。オリンピック委員会や王太子に説得されるが、エリックは安息日は神のものだから、競技はできないと断る。400メートルの自分の枠をエリックに譲ってくれる仲間もいて、救われるエリック。


そしてついにオリンピック本番。有力なアメリカ代表選手たちとの決戦。2人のレースの結果は?


自信満々な発言や振る舞いをしている選手たちも、レース前の控室で孤独と恐怖と戦っていたり、勝利した選手が痛烈な虚しさに襲われる姿が丁寧に描かれていて、胸を打たれる。スローモーション、ズームを変えてのリピート、ヴァンゲリスの音楽などの効果によって感動がさらに高まる。


ユダヤ系のハロルドにコーチをかってでるアラブ系イタリア人のサム・ムサビーニは、100メートルの決勝を会場で見守ることを遠慮して、ホテルの窓から国旗の掲揚を待つ場面に胸が熱くなる。


アカデミー作品賞を獲得したことでもわかるように良作であることは確かだ。「よし、頑張るぞ」と思わせてくれるスポーツ映画である。


ヴァンゲリスの音楽は有名すぎるほどなので、ぜひ聞いて思い出してほしい。