ちょっとした用事で訪れた市の施設。狭い事務室のカウンターで順番待ちをしている時、壁の電光掲示板に「無頼の女房 18:00〜20:00」とだけ表示が。


久々腰を抜かすかと(すみません、嘘こきました。抜かしたことはありません、腰)。北村総一朗さんの本多劇場での観劇のブログを読んで興味を持って「東京はいいよなぁ〜芝居が観られて」と思っていました。下北沢にある本多劇場はキャパと言い、箱の雰囲気といい最高なんです。大人計画、NODA MAP、つかこうへい事務所の芝居を観に出かけていました。


「無頼」という言葉から思いつくのは「無頼派」です。織田作之助、太宰治、檀一雄、そして今回の「無頼の女房」のモデルになった坂口安吾(劇中では塚口圭吾)とその妻を取り巻く人間たちを描いた芝居だとのこと。観たかった!!2019年に58歳という若さで病に倒れた中島淳彦さんが戯曲を書かれています。北村総一朗さんが演出した「改訂版」を観ることなく亡くなられたと北村さんはその悔しさを刻まれています。中島さんが宮崎県日南市出身だと知り、私にとっては縁の深い地であり、驚きもしました。戯曲集があるのかどうか探ってみます。


そのホールでは次の日も「無頼」の上演予定だったようでした。劇団「ゴツプロ!」さんを明日香美容専門学校が創立80周年で招かれたそうです。この専門学校の持つ小劇場をお借りして、僕の脚本を後輩が上演してくれたのでご縁もあり、今回のホールは僕が生まれて初めて、つかこうへいさんの「熱海殺人事件」で大山金太郎を演じさせてもらった箱でもありました。花束で殴られて、ステージ下に蹴り落とされた時に嗅いだ鮮烈な花の香は、今も海馬に刻み込まれています。


中島淳彦さんの戯曲が残されていて、立ち上げられた形でできるだけ多くの人が楽しめることを心から祈っております。作者が亡くなられても、そのクリエイティビティを芝居で知ることができることが演劇の素晴らしさでもあると思います。ご冥福を心から心からお祈り申し上げます。