1970年代、僕たちの10代の繊細で無方向な心情にいわゆる「ぶっ刺さる」フォークデュオ、ふきのとう。細坪基佳さんと山本康世さんの素朴な語りと純粋な美しさを湛えたメロディと詩的な歌詞にやられたドンピシャな世代です。


これも友人に勧められなければ出会うこともなかったミュージシャンです。今考えると、僕に教えたがる友人がいて、彼が自分の情報を分け与えたいという想いがなければ情報が広がりにくかった時代だったということです。


テレビでは歌謡曲全盛で、フォークの方達は曲が売れても「テレビに出るとか恥だよね」の時代だったと思います。ではどうやって情報を得ていたのか?


もちろんラジオです。僕の友人は宿題を解きながらリクエスト葉書を書いて送っていたそうです。葉書を読んでもらえる奇跡を楽しみに、音楽を聞き続けていたのです。そんな「彼ら」は、オールナイトニッポンやセイヤングの大ファンで、都知事選に立候補した清水国明さんが原田さんと組んでいた「あのねのね」さんや「中島みゆき」さんがパーソナリティをしておられたと記憶しています。


いまだに、ラジオを大事にしている芸人さんや歌手の方は少なくありません。ラジオのスピーカーから流れる語りと音楽、葉書に刻んだ想いを拾ってもらう喜び。すごいコミュニケーションの場だったし、青春そのものだったのでしょう。人の声と語りの力はきっと再現不可能性の芸術に近いのではないかと思います。


ふきのとうの「白い冬」「初恋」「春雷」などは本当に耳に残る、脳に刻まれる音楽だと思います。僕は友人がカセットに落としてくれたライブを聞いていました。


春先に出てくる「蕗の薹の天ぷら」は、その苦味のせいで食べなかった僕が、母親がバイトしていたスナックでママさん(母のともだち)が作ってくれた蕗の薹の天ぷらを食べて衝撃を受けて、それ以来、メニューにあれば必ず注文しています。(何の話や?)


細坪基佳さんがソロになってから出したアルバムを、押し付けるように貸してくれる友人がいましたが

その圧の強さに宗教の勧誘が重なり、疎遠になったことも。細坪さんに罪はないのに…