「関心領域」はまだ観に行けてないのだが、映画評やネタバレしてますよ、のあらすじ紹介で観た気になっているのが怖い。


本物の戦争を体験することは何があっても避けなければならない。サバゲーを楽しむ人たちにとって、画像のリアルさが現実に近づいて来たゲームにおいても、体験できるのは「本物の痛みや死の恐怖」ではないし、それがお約束だと思う。


VRが進化していることを考えると、これから銃で撃たれる痛みや仮死(や臨死)体験含めて具体的に経験できるようになるのかもしれない。しかし、それは平和を希求し、戦争を忌避する想いや信念につながるのだろうか?スリルをギリギリまだ体感したい、次は本物を…となってしまわないだろうか?


また前置きが長くなりました。本当にごめんなさい、反省しています。


ロベルト・ベニーニが監督と主演を務めた映画。1939年の北イタリアを舞台に、恋をして結婚し、男の子に恵まれたユダヤ系イタリア人の夫婦の幸せな生活が、第二次世界大戦で一変し、収容所に連行され、子どもを庇いながら苦境の中で生き抜こうとする姿を描いている。


ありがちなストレートな展開なのだが、どんなに苦しい状況の中にあっても、息子を笑わせ、今、大掛かりなお芝居をしているんだと必死に思わせようとする父親の姿が滑稽でありながら、涙を誘う名作。


戦争がない世界は存在しない、と言い切れるほど、人間は戦争を繰り返している。今は平和ではない、停戦状態だ、と言い放つ人もいる。平和ボケした日本とか言うけど、戦争で傷つくのは何の罪もない市民なんだと強く感じさせられた。


この父親が心配しているのは息子の心が壊れないことだ。自分の命や生活のことを後回しにして子どもを勇気づける。壮大な嘘を信じ込ませて、最後にはその嘘を成立させるために自分の命まで差し出す。


ご推察の通り、涙でシャツの襟までビッショリ濡らしてしまった。このきな臭い時代だからこそ、観てほしい一本である。