1993年のイギリス映画「In the Name of The Father」(訳 : 父の名の下に)、邦題「父の祈りを」です。


1974年、イギリスのロンドンの近郊で2件のパブが爆破され、仕事にもつかず生きる目的もなく軽犯罪に手を染めて無為な日々を過ごすジェリー・コンロン(ダニエル・デイ・ルイス)と仲間たちは、そのパブの爆破犯として逮捕される。ジェリーの父親ジョゼッペ(ビート・ポスルウェイト)と叔母一家も逮捕された。


IRAの犯行と疑う警察は、拷問まがいの恫喝と暴力でジェリーと友人のポールに自白を強要する。白紙の供述書にサインさせられた2人は無期懲役に、父親のジョゼッペは懲役12年に処される。無罪を訴える父親と諦めて不貞腐れて獄中で過ごすジェリーはすれ違う。


やがて、父親ジョゼッペは病に倒れ、獄中で命を落とす。ジェリーは、自分の情けなさを悔い、父親の汚名を雪ぐために、再審請求運動に命をかける。果たしてジェリーの闘いは実を結ぶのか。


実話をベースにし、骨太な人間ドラマを撮ったのはジム・シェリダン監督。この4年前に撮影した処女作「マイ・レフト・フット」でダニエル・デイ・ルイスにアカデミー賞主演男優賞をもたらし、自身も監督賞にノミネートされた。


この映画は実在のクリスティ・ブラウンという左足以外全身を麻痺した青年を描いている。主演のダニエル・デイ・ルイスの演技は驚愕の一言で「父の祈りを」で観るまでは実際の脳性麻痺の方を映画に出演させたと思っていたほどだった。


魂の容れ物である肉体までもギリギリまで変形させてホンモノに近づけて演じる「憑依型」の芝居は、初期のロバート・デニーロ、クリスチャン・ベール「モンスター」のニコール・キッドマンなど数多いるが、「マイ・レフト・フット」のダニエルは別格にすごい。


「父の祈りを」におけるジョゼッペ役のビート・ポスルウェイトは、僕の大好きな俳優さんで、「ユージュアル・サスペクツ」の弁護士のコバヤシ、バズ・ラーマン版「ロミオ+ジュリエット」のロレンス神父を演じている。「父の祈りを」では、本当に子ども想いの、そして信念を持ち続け、決して希望を捨てない父親を見事に演じきっている。他の役者さんが演じたら、違う父親像を見せてくれるのだろうが、不思議と彼でないといけなかったのだと思わせてくれる演技を見せた。


ぜひご覧ください。家族のあり方を見直す機会になるだろうし、これが実話であるとしたら本当に警察権力はこのような冤罪を平気でうんできたのだと知ることができる。


頑張れ、明墨弁護士!!志水さんの無罪を証明してくれ!!明日の夜の裁判で伊達原を返り討ちにして僕らを解放してください。