コミックや小説を映画化、ドラマ化する場合、失敗の烙印を押されるケースは少なくない。キャラクターがイメージと違う、長いシリーズ(コミックに多い)のどこをどれだけ描くのかが難しくて中途半端になる、脚本がうまく作れていなくて2時間で描かれた部分が面白くない、などの理由が考えられる。基本的に原作に頼らずに、原作を知らない人が見てもドラマの10回なり、映画の一本の出来が良くないとダメだという当たり前の前提が崩れているものは話にならない。


そう考える時に、僕の中で原作ありきかどうかは問題ではない、素晴らしい作品に仕上がっていると思われる作品の最右翼は「るろうに剣心」のシリーズだと思う。これはストーリーもしっかりしているが何よりアクションの素晴らしさが実写だからこそ伝わってくる。佐藤健の当たり役だと思う。


「KINGDOM」「DEATH NOTE」「寄生獣」も僕は成功作だと思っている。「KINGDOM」は、読者たちにとっても納得のできるキャスティングとメイクアップによって最初のハードルを飛び越えた。続いて、大規模なロケーションを実現して、撮影方法を含めて素晴らしい「絵」を届けてくれた。


「DEATH NOTE」では、Lを演じた松山ケンイチに賞賛が集中したが、主人公の夜神月を演じた藤原竜也の安定した演技力と人を見下した雰囲気が物語を支えたのだと思う。脚本の出来も良く、原作を意識せずに楽しめた。


「寄生獣」は何より、古沢良太脚本、山崎貴監督で成功しないわけがない。1990年代にこの漫画を読んでいた自分にとっても少しも違和感なく、むしろその世界観に浸れて感動した。特に染谷将太と母親のシーンは切なく、深津絵里さんが自分の子どもを染谷君に託す場面で涙を流した。橋本愛さんとの恋愛物語も説得力があった。


原作のオリジナリティを軽視して、原作者の許諾なくやりたいように作り変える権利はない。そんな当たり前を、ドラマや映画の脚本家や監督が無視する傲慢は許されるべきではない。「こんなに変更されたらもう私の作品ではない。原作者から私の名前を消してください。」と言われたらその時点で身を引く必要がある。繰り返すが、原作者のオリジナリティはそれほど尊重されなければならない。


一本の映画として、10回のドラマとして、きっちり貫かれたストーリー展開とキャラクターの活かし方を持って、脚本に起こし、キャストを決めて、演出をしていく。原作のある無しは関係ない。その能力と原作愛がなければ実写化すべきではない。原作に頼りすぎない、軽視しない。良い作品を送り出す意識こそが原作ものの実写化の成功の鍵だと思う。