まったく思いがけずに出会う名作がある。キャストを見てワクワクしないわけがない。小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雄、香川照之の5人。監督は佐藤祐市(なんと、鈴木亮平さんのシティ・ハンターの監督)、脚本は古沢良太(言わずと知れたリーガル・ハイ、探偵はバーにいる、コンフィデンスマンJP、どうする家康)これだけ見てもどんな化学反応をもたらすか楽しみで仕方ない。


自殺したパッとしないアイドル如月ミキのファンを名乗る家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、いちご娘。彼らはファンサイトを通じて知り合い、ミキの一周忌に、ビルの一室に集まる。如月ミキは、マネージャーの留守番電話に遺言を残し、マンションの自室に油を撒いて焼身自殺を遂げた。しかし実際には彼女は自殺したのではなく、他殺ではないかと疑うものがいて、今回召集されたメンバーの中に真犯人がいればそいつを炙り出して、復讐しようとするものが現れる。


強めのキャラクターが集うだけでその絡み合いは、笑いを生み出しながら、推理劇の緊張感がいきなりその空気を支配し、誰もが怪しく思える。少しずつ剝き剥がれていく事実が重なり合って、ある結論に達する。そうとしか考えられない事実は真実めいて見え始め、真実の装いを纏い、感動的なラストに向かって疾走していく。観客はふっと解き放たれ、体に込められた無駄な力みから解き放たれる。


そうなんだ。この作品は名作の基準を十分に満たしている。そして、もう一度初めから見たくなる。弔いのために集まった黒スーツのみんなは、いつしか愛しくて仕方なくなる。


舞台劇、ナビゲートドラマ、小説、朗読劇など様々なジャンルでこのストーリーは装いを変えてみんなを楽しませてきた。それだけこのコンテンツは優れていた。2007年に「それでも僕はやってない」を抑えてブルーリボン賞作品賞を受賞した。


ぜひぜひ、このキャストの映画版を観てほしい。そして、日本映画は捨てたもんじゃない!!と実感して欲しい。