シェークスピアの有名な作品「ベニスの商人」の極悪な金貸しであるシャイロックの名前を冠した池井戸潤さんの小説を原作にした映画である。池井戸さん原作の映像化にハズレなしと言えるほどに、ヒット作を生み出している。


東京第一銀行の長原支店を舞台に、不正融資や現金紛失事件などの問題が起こりながら、阿部サダオ演じる西木が部下である愛里(上戸彩)と田端(玉森裕太)の協力を得て事件の謎を解く経済ミステリーである。ネタバレはしたくないので、ストーリーに関わる部分への言及は避けるのだが、銀行の仕組みや現金を扱うことの危険性、銀行の営業の中でも融資先を見つけて、正しく評価し、稟議を通すことの難しさを熟知している原作者だからこそ、重い内容を絶妙な軽さで描いてみせるところが凄い。銀行が舞台であったり、銀行が応援する企業でのサクセスストーリーだったりを本当に見事に起伏をつけて描いておられて、右に出るものはいない。


最近では「ハヤブサ消防団」という過疎に苦しむ市町村の消防団の中に謎を仕組んで、お茶の間を惹きつけた。「これも池井戸原作?」と驚いた。どの作品も、人の弱さ、組織の危うさ、ルーティン化している業務の穴、中小企業の苦しみや大企業との対決、中小の独自の製品の開発に傾ける情熱とチームワーク。そんな人間ドラマを本当に楽しく見せてくださっている。


「七つの会議」「花咲舞が黙っていない」などを視聴して、胸を熱くして「弱者」の活躍や組織との対決に胸を熱くしている。池井戸潤作品にハズレなしをこの目と心で実感していきたい。「シャイロックの子供たち」でも豪華な俳優陣の見事な演技を楽しめる。とにかく「胡散臭い(うさんくさい)」人を演じさせたら「やっぱりこの人じゃないと」という存在感をたっぷり味わえる作品である。