フランス語のデラシネは「根なし草」という意味で「放浪者」を指すに至ったらしい。昔はこうした言葉を必死で会話の中に紛れ込ませることに快感を覚えていた。一端のインテリゲンチャ(知識階級)を気取りたければ、こうしたボキャブラリィを意味や背景ごと獲得し、己のものにして、タイムリーな使い方をしないといけないという強迫観念を抱いていた。


やはりフランス語の「カイエ」は「手帳」「ノート」の意味だが、会話で使うことはない。1978年に冬樹社が創刊した月刊文芸誌の名前が「カイエ」で、創刊号は、80年代文学へ向けて」と題した特集を組んでいた。その中には2019年に亡くなられたラテンアメリカ文学を日本に紹介した巨人の一人である鼓直(ツツミタダシ)さんが「ラテン・アメリカ文学素描」という記事を寄せておられた。鼓直さんは、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩集の翻訳もこの号でされていた。おそらく(確信はないが)初出であろうと思われる。他に井上ひさしさん、三田誠広さん、大岡信さんと川村三郎さんの対談、中上健次さん、佐々木幹郎さんの「80年代文学は可能か」という対談など読んでみたいものだと思う。ラテン・アメリカ文学を大学の授業で読んでいた僕は背景や周辺知識を得たくて、カイエを何冊か古本屋に求めた。


「ユリイカ」はいギリシア語で「我、発見せり」だったと思う。数学者アルキメデスの言葉として知られている。「エウレカ」とも表記される。青土社発刊で1956年に発行されている。詩、批評、文学、思想を扱う雑誌である。バックナンバーを見ながらなかなか面白い特集や寄稿を見つけると思わず買ってしまう。古本屋巡りの目玉でもある。創刊号には立原道造の未発表遺稿が掲載されている。亡くなられた青山真治監督の代表作の一つに「EUREKA ユリイカ」がある。


サザンオールスターズが「エウレカ・セブン」という曲を…と思って調べたら「エロティカ・セブン」だった。「エウレカセブン」はメディアミックスプロジェクトの一つで、アニメ、ゲーム、漫画、小説などで展開しているらしいってWikipediaが言ってます。なんてこったい!!