こんなタイトルつけちまって大丈夫か、と叱られそうだけど、お好みで様々なのは承知の上で話を進めたい。


自分がトランペットを吹いていたからだと思うけどマイルス・デイビスのミュートプレイは悲哀に満ちていて最高である。デイジー・ガレスピーの「チュニジアの夜」、サッチモ(ルイ・アームストロング)の「what a wonderful world 」(「グッドモーニング・ベトナム」でこの曲が流れた瞬間に震えた。)若い頃、チェット・ベイカーのトランペットと歌を、バーボンを飲みながら聴き惚れていた。(生意気やん)


サックスは、コルトレーンだろう。アルバムでは、「マイ・フェイバリット・シングズ」「バラッズ」「ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン」。僕はソニー・ロリンズの「セント・トーマス」という曲を聴くと体が勝手にリズムを刻む。


ピアノは、前にも書いたけど、ビル・エヴァンスの一択。「オータム・リーブス」ステレオとモノラルの両方の演奏を収めたアルバムに興奮する。「ブルー・イン・グリーン」トゥーツ・シールマンズというジャズ・ハーモニカの名手と組んだ「アフィニティ」はテープが擦り切れるまで聞いた。もちろん「ワルツ・フォー・デビー」は最高です。一択と言いましたが(笑)キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」は必ず聴いて欲しい。体の中の毒が一気に流れ出る。あれは、ジャズ・ピアノとかではないんだ。僕らを少しだけ神の御座に近づかせてくれると言えば不遜だろうか。宗教ではなく、相対者である我々が絶対的な存在が確かにあることを思い出させてくれる。


小林秀雄の「無常ということ」を読んだ時に、頭の芯が少し痺れた感覚があって、あの体験に似ていると思った。これはあくまで私的感覚だが。それにしても小林秀雄のアルチュール・ランボーの「地獄の季節」が誤訳だと言ってのけたのが、クイズダービーの篠沢秀夫教授だと知って驚愕した。それにしても小林秀雄の訳は果てしなく魅力的な誤訳だと思う。


そう言えば、村上龍と中上健次の対談集のタイトル「俺達の船は、動かぬ霧の中を、纜を解いて」は、小林秀雄のランボー訳からだったと記憶している。面白い対談集で、中上健次は村上龍のことが大嫌いなんだと思い知らされて、愉快だ。


あれ?タイトルから逸れた…中上健次はジャズを愛した作家だった。「ジャズをきけ、ジャズを」とは中上の「路上のジャズ」という彼の著書の中の目次にある言葉…