(若干のネタバレを免れませんでした)


僕は、幼い頃からテレビっ子で、断片的な記憶の中に食い込んでいる作品がある。TBS系列の木下恵介アワーで様々な試みが行わられ、映画館に足を運べない人たちにエンターテイメントを届けたのは大きな功績だろう。中でもあおい輝彦さんが主題歌を歌う「二人の世界」は、僕が10歳くらいの放映だが印象に残っている。脚本は山田太一さんで、その後の「岸辺のアルバム」や「ふぞろいの林檎たち」につながる系譜の初期にあるのだろう。


ドラマ版「セカチュー」について書いたからには、「白夜行」に触れないわけにはいかない。主演の2人は山田、綾瀬。東野圭吾さんの傑作推理小説をドラマにする難しさは、小説のファンには容易に感じ取れたのではないか。


小説の構成は見事で、主人公の2人は闇に潜んでいて出てこない。事件は起こるのだが、2人に結びつきそうで結びつかない。そのもどかしさの中、幼い頃に2人がどんな目にあって、なぜ犯罪に手を染めているのかが、いくつかの事実と推測で暴かれていく。そして華やかなエンディングに切ない幕切れが用意されている。主人公の唐沢雪穂の空恐ろしさを思い知ることになる。


これを映像化するのに主人公の2人は不要なはず。どう見せていくのか…不安と疑念はセカチューチームの自信と心意気に打ち砕かれた。被害者の側から描いていた本の視点を、真逆にして加害者である2人の視点から描いていこうと決めたこの英断は、コアなファンには拍手喝采で迎えられ、小説ファンには悪手だと非難された。


第一話は完全オリジナルだと目されるが、日本のドラマ史上最高傑作だと思った。山田くんが演じることになる桐原亮司の子ども時代を演じた泉澤祐希と唐沢雪穂役の福田麻由子の演技は素晴らしく、腹を括った雪穂とまだこの先の闇の深さを測りかねている亮司との落差がこのドラマの今後の展開を説得力のあるものにしていく。廃屋のダクトの中に取り残されたままの雪穂を亮司は救いに行く〜それがこのドラマの根底にあるテーマだと思う。


泣いたなぁ!雪穂が2人の約束の場所である図書館の「風と共に去りぬ」の文庫本に挟んだ別れの手紙を読んだ亮司は駅まで必死に駆けていく。この絵にかぶさって手紙の朗読が福田さんの声で流れるのだが、途中で涙声になってしまい、そこで僕は自己崩壊を起こしかけた。「切なさ」とはこのことを言うのだ。決して、金太郎飴的な小室ミュージックに乗って篠原涼子さんが歌う曲のどこかに探せるものではない…タイトルは仕方ないけど…


僕はDVD BOXを買ったが、3話以降が辛すぎて、再生できない。ぜひこの1話と2話を観て、whyに辿り着いて欲しい。ただ3話以降は辛すぎることは言っておきます。僕の友人は「あれはないなぁ」と言うので、連絡を断ちました。