今日、ネット記事で「tokyo vice」の舞台挨拶に窪塚洋介さんが登場して、渡辺謙さんが「大人になったな」というコメントを述べられたとかでニュースになってて…(窪塚さんと渡辺謙さんは、後述する「I.W.G.P」で共演している。)


「I.W.G.P」というドラマを毎週欠かさず観ていた。宮藤官九郎さんの脚本にハマってしまい、長瀬智也さんも好きだったし、そのミステリー要素とおふざけの融合にやられちまったクチだった。ただ、キングを演じる窪塚さんの演技に関しては、台詞回し含めて、ある種の居心地悪さを覚えていた。なんだかピッチの狂ったサックスの音のようだった。


しかし「ピンポン」と「GO」という2本の映画で彼の演技と台詞が現代という時代を纏うことで、どれほど輝くのかを思い知ったのである。時代劇がどうかという話ではない。彼の言い回しが説得力を持ち、ドラマに真実味を与えるのかである。周囲に溶け込まない強烈な違和感でそこに立つ役者であるように僕は思った。


曽利文彦監督の「ピンポン」はスポ根ものでありながら、ペコとスマイルという2人の、互いの才能を認めているがためにすれ違う卓球部員の成長と友情のあり方を見事に描き切った名作である。迫力ある試合の場面はほぼCGだそうだが、恐竜のようなこの世にないものを作り出すのではなくて、卓球という現実にあるものを、どうやって迫力あるスペクタクルに見せていくのかにこの技術は使われた。スマイルを演じた井浦新さんの好演は忘れられないところだろう。


また、金城一紀原作の「GO」の映画化作品では、窪塚さんは主人公杉原を演じた。杉原は在日への差別や偏見に我関せずの姿勢で振る舞っていたのだが、友人を亡くし、恋人から国籍を理由に拒絶され、その怒りと悲しみを見事に体現した。ロミオとジュリエットの設定を自分たちの恋愛に重ねて、恋人である桜井(柴崎コウ)にぶつける場面は切なかった。


話は逸れるが、僕が今まで傾倒したドラマは全てと言っていいほど、この金城一紀さんの手によるものだった。「SP」「BORDER 」「CRISIS」「dele」など驚くばかりである。ややパターンというのは似通っているものの、通常の日本のドラマで描かれる紋切り型のカット割や画面のトーン、台詞ではないどこか異国のドラマのように感じられて、大変興奮した。窪塚さんの今後に期待である。齢を重ねてしか出せないニュアンスがある。いい具合にクタッて、力も抜けて、ふと楽になる。ニュートラルな自分の肉体と魂を出発点とする他ないところにたどり着いた人が成功した役者なのかもしれない。