今の母の記憶装置は、たぶん30秒もない。
30秒前の事を覚えていないのだ。
でも、私だって大分ポンコツになってきている。
1年前、まだ家で母を見守っていた時のこと・・・あまり思い出せない。
たぶん、その記憶に蓋を・鍵をかけてしまっているのかもしれないが。
確かにあの時は辛かったし、毎日絶望しかなかった。
自宅にいるのに荷物をまとめて「家に帰る」と言い、玄関でず~っと立ち続ける母。
いくら、ここがその家だといってきかせても駄目だった。
私が会社へ行っている時には、やはり家に帰ると言って玄関を出たところで兄が「どこへ行くんだよ!家はここだろ?!」と言って腕を掴むと「助けて~ぇ!」と大声で叫んだらしい・・・
今なら笑って話せる事も、あの時の私達家族にはとてもとても笑い話ではなかったのだ。
母だって辛かったのだと思うが、家族もそれ以上に辛かった・・・
昨日出来ていた事が、今日は出来なくなっている・・・今日出来なかった事が明日出来るようになる事は無いのだ・・・それが認知症。
毎日、出来ることが少しずつ減っていき、そして会話も噛み合わなくなる・・・
とても笑って毎日暮らすことなんて無かった。出来なかった。
夜、目を閉じると「明日はまたどうなっているんだろう・・・」希望が持てない絶望の日々・・・。2度と戻りたくはない。
普通夢って忘れるけれど、1ヶ月前に見た夢が忘れずに記憶にある。
ホームへ入っていた母が、帰宅願望が強すぎるせいでホームから「もうこちらでは無理です。お預かり出来ませんので、お引き取り下さい」と言われてしまう。
ちょうど車で兄と私がホームへ行っていた時で、その車に母を乗せて家へ帰る・・・「どうしよう・・・明日からどうしよう・・・またケアマネさんに相談して、会社にも当分行けなくなりそうだ・・・あとデイサービスにも連絡して・・・」など。
もう「どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・」とどうしようしか出てこなくて、うなされて目が覚めた・・・
本当にあの時は、「夢だったのか・・・」と分かった瞬間、どっと疲れた・・・
楽しい事だけ覚えていられたら・・・って思うけど、やっぱりそればかりじゃないのが人生・・・哀しいこと、辛いことも全部ひっくるめてやっぱり記憶は残るんだなと思うけど・・・引き出しにしまって鍵をかけている今日この頃。