第1話 ほっとけない | 葬儀社「シエル」の告白。

第1話 ほっとけない

出会い


今から2年前の寒い日の午後、お婆さんから一本の電話が


入った。


力ない声は、今でも胸を締めつける。


葬儀社に電話、力ない声、すぐに察しがついた。


わたしは、息をのみお婆さんの言葉を待った。


「お爺さんが」…やはり葬儀の依頼だ。


お婆さんの精神状態は動揺と悲しみが入りまじり、電話越しに


も、見てとれた。


わたしは、2・3話をし、すぐに病院に駆けつけ


初めてお婆さんとお会いした。


この出会いが、今後の私達の運命を変える事になるとは


この時はまだ、想像もしていなかった。


病院をあとにし、ご自宅へ向かおうとすると、お婆さんが私に


飴をくれた。


私は、仕事中なので後で頂こうとポケットへ入れると、どうしても


今、飴を口にしろと言う。


なぜ、そこまで口にしろと言ったのかは、その時は分からず


勧められるまま、私は飴を頬張る。


味の方は正直、美味しいとは思わなかった。


でも、お婆さんは美味しそうにしている。


そうこうしている内に、ご自宅に到着し、お爺さんを部屋の中にと


思い部屋を見てみると、愕然とした。


部屋だけではなく、家そのものがゴミかしていた。


お婆さんに、ココではと私が言い、ホールをご案内した。


その時、お婆さんは、私にお金がないと言い、どうしてもココで


葬儀がしたいと言う。


私は、出来る事は出来るだけ叶えてあげたいと伝え、でも


出来ない事は出来ないという事も分かってほしいと言った。


相談には出来るだけ乗りますからと、相談を受けた。


話を聞くと、葬儀規模は10名程との事。


私は、10名なら可能性が無い事も無いかと思い、部屋を見渡した。


可能性がゼロではない時は、まず行動をしてみるのが性分なので


片付けてみましょうと言い30分位片付けてみた。


すると、少し広がりが見えた。


行けると確信した私は、携帯を手に取り、応援の電話を掛け待った。


応援の相手は、シエル葬儀社の創業をともにする弟。


この時、私同様、お婆さんに運命を変えられる事は想像もしていな


かっただろう。


片付けを始めて3時間、ようやくお爺さんを寝かせられる所まで来た。


お婆さんは、私達に何度も何度も頭を下げ「ありがとう」と言った。


夜も9時を回り、打ち合わせを始め、日取りなどを決め、私達は


ご自宅をあとにした。


翌朝、細かい事を決める為お婆さん宅に伺うと、お婆さんの姿はなく


待つ事1時間、お婆さんは帰ってきた。


話に入ろうとすると、お婆さんは、今、銀行に行って来たと言い、顔が


どことなく曇っていた。


                                      つづく